23 / 48
第23話:学院生活もこれで最後です
“ユリア…ユリア、本当に君はよく頑張ったね。偉かったよ”
穏やかな声に大きくて温かい手。誰かが私の頭を撫でてくれている。その手の温もりが、とても気持ちいい。それになんだかとても心地いい空間にいる。
これは夢?
ゆっくり瞼を上げると、そこには金色の髪を腰まで伸ばした、美しい男性が私の頭を撫でていたのだ。この人は一体誰だろう?
“あなた様は一体?”
“私かい?それは内緒だ。ただ、もうすぐ君を迎えに来るから、待っていてくれ。私の可愛いユリア”
私のおでこに口づけをすると、そのまま姿が消えてしまったと思うと…
パチッと目を覚ますと、見慣れた天井が。
あれは夢だったのかしら?それにしても、とても綺麗な男性だったわ。もうすぐ迎えに来ると言っていたけれど…
おっといけない、そんな事を考えている場合ではなかった。そう、今日は私が学院に通える最後の日。後悔しないためにも、色々とやっておきたいのだ。
着替えを済ませると、私は厨房へと向かった。そして料理長に必死に頭を下げ、クッキーを焼いてもらったのだ。やはりお世話になった友人たちに何かしたい、そんな思いが伝わったのか、文句ひとつ言わずにクッキーを焼いてくれた料理長。綺麗にラッピングまでしてくれた。
本当は自分で作りたかったが、既に体が思う様に動かない私には、さすがにクッキー作りは無理だったのだ。
料理長に作ってもらったクッキーをバスケットに入れ、馬車へと乗り込む。こうやって学院に向かうのも、今日で最後なのね。そう考えると、なんだか涙が込みあげてきた。ダメよ、泣いたら。最後の最後まで、笑顔でいるって決めたのだから。スッと涙をぬぐい、笑顔を作る。
馬車から降りると、いつもの様にブラック様が待っていてくれた。ブラック様の姿を見た瞬間、再び涙が込みあげてくるのを必死に堪えた。
「おはようございます、ブラック様」
「おはよう、ユリア。今日はいつもより顔色が悪い気がするが、大丈夫かい?特製ジュースだよ。すぐに飲んでくれ」
もうすぐ私は死ぬ、でもそんな事を知らないブラック様がいつもの様に、ジュースを手渡してくれた。それがなんだか申し訳ない。それでもせっかくブラック様が準備してくださったのだ。しっかり味わいながら頂く。
「本当に美味しいジュースですわ。ブラック様、いつもありがとうございます」
笑顔でブラック様に挨拶をした。いつもの様に私を教室までブラック様が運んでくれた。教室に着くと、私の元に友人たちが集まってきてくれる。
「ユリア、おはよう。今日も一段と顔色が悪いわ。大丈夫?最近授業も辛そうだし…」
「皆、おはよう。私は大丈夫よ。それよりこれ、いつも皆にはお世話になっているから、料理長に頼んでクッキーを作ってもらって来たの。よかったら食べて」
「ありがとう、美味しそうなクッキーね。明日から1週間のお休みに入るのよね。ユリア、この1週間のお休みの間に、亡くなったりしないわよね…」
「ちょっと、縁起でもない事を言わないで。ユリア、授業が辛かったらいつでも言うのよ。無理して受けることないからね」
友人が言った通り、私はきっとこの1週間休みの間に命を落とすだろう。本来なら友人たちにその事を話して、しっかりお別れを言いたい。でも、私が治癒魔法を使っている事は、誰にも言ってはいけないと言われている。だから、そんな事は言えない。
「皆、いつもありがとう。私と友達になってくれてありがとう。私、皆と一緒に過ごして、とても幸せよ。私、みんなの事が大好き」
そう言ってほほ笑んだ。私にできる精一杯の思いを、友人たちに伝えた。
「もう、急に変な事を言わないでよ。まだまだこれからもずっと一緒よ。そうでしょう?ユリア」
「ええ、そうね…」
ごめんね、皆。私はもう生きられないの。心の中でそっと謝った。やはりきちんとお別れ出来ないのが辛い。
そしてお昼休み、ブラック様と一緒に朝食を頂く。
「ユリア、随分と食が細くなってしまったね。ゼリーなら食べられるかい?」
「はい、食べられそうですわ。ブラック様、いつもありがとうございます。私、ブラック様のお陰で本当に楽しい日々を送らせていただきましたわ。あの、これ。ほんの感謝の気持ちです」
昨日完成した刺繍入りのハンカチを手渡した。
「これを俺にかい?開けてもいいかな?」
「はい」
ブラック様の反応が気になる。そもそも彼は、公爵令息だ。こんな死にかけの女が入れた刺繍入りのハンカチなんて、貰っても迷惑なだけかもしれない。
穏やかな声に大きくて温かい手。誰かが私の頭を撫でてくれている。その手の温もりが、とても気持ちいい。それになんだかとても心地いい空間にいる。
これは夢?
ゆっくり瞼を上げると、そこには金色の髪を腰まで伸ばした、美しい男性が私の頭を撫でていたのだ。この人は一体誰だろう?
“あなた様は一体?”
“私かい?それは内緒だ。ただ、もうすぐ君を迎えに来るから、待っていてくれ。私の可愛いユリア”
私のおでこに口づけをすると、そのまま姿が消えてしまったと思うと…
パチッと目を覚ますと、見慣れた天井が。
あれは夢だったのかしら?それにしても、とても綺麗な男性だったわ。もうすぐ迎えに来ると言っていたけれど…
おっといけない、そんな事を考えている場合ではなかった。そう、今日は私が学院に通える最後の日。後悔しないためにも、色々とやっておきたいのだ。
着替えを済ませると、私は厨房へと向かった。そして料理長に必死に頭を下げ、クッキーを焼いてもらったのだ。やはりお世話になった友人たちに何かしたい、そんな思いが伝わったのか、文句ひとつ言わずにクッキーを焼いてくれた料理長。綺麗にラッピングまでしてくれた。
本当は自分で作りたかったが、既に体が思う様に動かない私には、さすがにクッキー作りは無理だったのだ。
料理長に作ってもらったクッキーをバスケットに入れ、馬車へと乗り込む。こうやって学院に向かうのも、今日で最後なのね。そう考えると、なんだか涙が込みあげてきた。ダメよ、泣いたら。最後の最後まで、笑顔でいるって決めたのだから。スッと涙をぬぐい、笑顔を作る。
馬車から降りると、いつもの様にブラック様が待っていてくれた。ブラック様の姿を見た瞬間、再び涙が込みあげてくるのを必死に堪えた。
「おはようございます、ブラック様」
「おはよう、ユリア。今日はいつもより顔色が悪い気がするが、大丈夫かい?特製ジュースだよ。すぐに飲んでくれ」
もうすぐ私は死ぬ、でもそんな事を知らないブラック様がいつもの様に、ジュースを手渡してくれた。それがなんだか申し訳ない。それでもせっかくブラック様が準備してくださったのだ。しっかり味わいながら頂く。
「本当に美味しいジュースですわ。ブラック様、いつもありがとうございます」
笑顔でブラック様に挨拶をした。いつもの様に私を教室までブラック様が運んでくれた。教室に着くと、私の元に友人たちが集まってきてくれる。
「ユリア、おはよう。今日も一段と顔色が悪いわ。大丈夫?最近授業も辛そうだし…」
「皆、おはよう。私は大丈夫よ。それよりこれ、いつも皆にはお世話になっているから、料理長に頼んでクッキーを作ってもらって来たの。よかったら食べて」
「ありがとう、美味しそうなクッキーね。明日から1週間のお休みに入るのよね。ユリア、この1週間のお休みの間に、亡くなったりしないわよね…」
「ちょっと、縁起でもない事を言わないで。ユリア、授業が辛かったらいつでも言うのよ。無理して受けることないからね」
友人が言った通り、私はきっとこの1週間休みの間に命を落とすだろう。本来なら友人たちにその事を話して、しっかりお別れを言いたい。でも、私が治癒魔法を使っている事は、誰にも言ってはいけないと言われている。だから、そんな事は言えない。
「皆、いつもありがとう。私と友達になってくれてありがとう。私、皆と一緒に過ごして、とても幸せよ。私、みんなの事が大好き」
そう言ってほほ笑んだ。私にできる精一杯の思いを、友人たちに伝えた。
「もう、急に変な事を言わないでよ。まだまだこれからもずっと一緒よ。そうでしょう?ユリア」
「ええ、そうね…」
ごめんね、皆。私はもう生きられないの。心の中でそっと謝った。やはりきちんとお別れ出来ないのが辛い。
そしてお昼休み、ブラック様と一緒に朝食を頂く。
「ユリア、随分と食が細くなってしまったね。ゼリーなら食べられるかい?」
「はい、食べられそうですわ。ブラック様、いつもありがとうございます。私、ブラック様のお陰で本当に楽しい日々を送らせていただきましたわ。あの、これ。ほんの感謝の気持ちです」
昨日完成した刺繍入りのハンカチを手渡した。
「これを俺にかい?開けてもいいかな?」
「はい」
ブラック様の反応が気になる。そもそも彼は、公爵令息だ。こんな死にかけの女が入れた刺繍入りのハンカチなんて、貰っても迷惑なだけかもしれない。
あなたにおすすめの小説
【完結】想い人がいるはずの王太子殿下に求婚されまして ~不憫な王子と勘違い令嬢が幸せになるまで~
Rohdea
恋愛
──私は、私ではない“想い人”がいるはずの王太子殿下に求婚されました。
昔からどうにもこうにも男運の悪い侯爵令嬢のアンジェリカ。
縁談が流れた事は一度や二度では無い。
そんなアンジェリカ、実はずっとこの国の王太子殿下に片想いをしていた。
しかし、殿下の婚約の噂が流れ始めた事であっけなく失恋し、他国への留学を決意する。
しかし、留学期間を終えて帰国してみれば、当の王子様は未だに婚約者がいないという。
帰国後の再会により再び溢れそうになる恋心。
けれど、殿下にはとても大事に思っている“天使”がいるらしい。
更に追い打ちをかけるように、殿下と他国の王女との政略結婚の噂まで世間に流れ始める。
今度こそ諦めよう……そう決めたのに……
「私の天使は君だったらしい」
想い人の“天使”がいるくせに。婚約予定の王女様がいるくせに。
王太子殿下は何故かアンジェリカに求婚して来て───
★★★
『美人な姉と間違って求婚されまして ~望まれない花嫁が愛されて幸せになるまで~』
に、出て来た不憫な王太子殿下の話になります!
(リクエストくれた方、ありがとうございました)
未読の方は一読された方が、殿下の不憫さがより伝わるような気がしています……
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。
里海慧
恋愛
わたくしが愛してやまない婚約者ライオネル様は、どうやらわたくしを嫌っているようだ。
でもそんなクールなライオネル様も素敵ですわ——!!
超前向きすぎる伯爵令嬢ハーミリアには、ハイスペイケメンの婚約者ライオネルがいる。
しかしライオネルはいつもハーミリアにはそっけなく冷たい態度だった。
ところがある日、突然ハーミリアの歯が強烈に痛み口も聞けなくなってしまった。
いつもなら一方的に話しかけるのに、無言のまま過ごしていると婚約者の様子がおかしくなり——?
明るく楽しいラブコメ風です!
頭を空っぽにして、ゆるい感じで読んでいただけると嬉しいです★
※激甘注意 お砂糖吐きたい人だけ呼んでください。
※2022.12.13 女性向けHOTランキング1位になりました!!
みなさまの応援のおかげです。本当にありがとうございます(*´꒳`*)
※タイトル変更しました。
旧タイトル『歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件』
麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.
呪いをかけられた王子を助けたら愛されました
Karamimi
恋愛
魔力が大好きな伯爵令嬢、ティアは毎日魔力の勉強に精を出していた。そんな中父親から、自国の第三王子が呪いをかけられ苦しんでいる事。さらに、魔力量が多く魔力大国キブリス王国の血を引くティアに、王子の呪いを解いて欲しいと、国王直々に依頼がったと聞かされた。
もし王子の呪いを解く事が出来れば、特例として憧れの王宮魔術師にしてくれるとも。
元々呪いに興味を持っていたところに、王宮魔術師という言葉も加わり、飛びつくティアは、早速王子の元に向かったのだが…
※5万5千文字程度のお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
私を溺愛している婚約者を聖女(妹)が奪おうとしてくるのですが、何をしても無駄だと思います
***あかしえ
恋愛
薄幸の美少年エルウィンに一目惚れした強気な伯爵令嬢ルイーゼは、性悪な婚約者(仮)に秒で正義の鉄槌を振り下ろし、見事、彼の婚約者に収まった。
しかし彼には運命の恋人――『番い』が存在した。しかも一年前にできたルイーゼの美しい義理の妹。
彼女は家族を世界を味方に付けて、純粋な恋心を盾にルイーゼから婚約者を奪おうとする。
※タイトル変更しました
小説家になろうでも掲載してます
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
替え玉の私に、その愛を注がないで…。~義姉の代わりに嫁いだ辺境伯へ、身を引くはずが……持ちかけられたのは溺愛契約。
翠月 瑠々奈
恋愛
ベルン皇国の辺境伯ソラティスが求めたのは、麗しき皇都の子爵令嬢レイアだった。
しかし、彼の元へ届けられたのは、身代わりに仕立て上げられた妹のラシーヌ。
容姿も性格も全く違う姉妹。
拒絶を覚悟したラシーヌだったが、ソラティスは緋色の瞳を向けて一つの「契約」を持ち掛けた。
その契約とは──?
ソラティスの結婚の理由、街を守る加護の力。そして、芽生える一つの恋。それに怯える拙い拒み。
※一部加筆修正済みです。