もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi

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第26話:時間がない~ブラック視点~

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今日のユリアは何かがおかしい!ユリアから貰った刺繍入りのハンカチを手に、ユリアが乗った馬車を見つめる。

ユリアの馬車が見えなくなると同時に、俺はすぐに執事の元へと向かった。

「至急伯爵家に送りこんでいるスパイに連絡を入れてくれ。今さっき、ユリアが早退したんだ。ユリアの口ぶりから考えて、既に死を覚悟している様だった。きっと今から治癒魔法を掛けさせられるに違いない!今のユリアが治癒魔法なんて使ったら、命がない!俺も今から伯爵家へと向かう。とにかく急げ!」

「坊ちゃま、落ち着いて下さい。ユリア様が治癒魔法を使わされると決まった訳ではありません。それにまだ、十分な証拠も手に入れていないのです。今坊ちゃまが伯爵家に行っても、何もできません。とにかく坊ちゃまは、午後の授業を…」

「ユリアの命がかかっている時に、呑気に勉強なんて出来ない。ユリアはきっと、今日が俺と会える最後の日だと覚悟していたに違いない。だからあんな風に、いつも言わない様なことを言ったりしたんだ。まさかこの刺繍入りのハンカチも…」

ユリアに貰った刺繍入りのハンカチを手に取った。きっと不自由な手を必死に使い、1針ずつ縫って行ったのだろう。俺の為に…

それにこのハンカチ、母親から貰ったものと言っていた。きっと母親の形見なのだろう。大切な形見に刺繍を入れて俺に送ってくれるだなんて。

とにかく、このままではユリアが死んでしまう!もしユリアが命を落としたら…考えただけで、胸が苦しくてたまらない。このまま学院に居られるほど、俺の心に余裕はない。

一刻も早く伯爵家からユリアを助け出さないと。その為にも、一度公爵家に戻ろう。急いで馬車に乗り込み、屋敷を目指す。今まさに、ユリアが酷い目に合っているかもしれない。そう思うと、気が気ではないのだ!

ユリアから貰ったハンカチを再び見つめる。ユリア、最後の最後まで笑顔を絶やさなかったな。きっと陰で沢山泣いたのだろう。

そう思ったら、俺も涙が込みあげてきた。俺は無力だ。今まさにユリアが苦しんでいるかもしれないのに、助けてあげられないだなんて!

て、泣いている場合ではない。屋敷に着くと、すぐに父上の元へと向かう。

「父上、大変です!伯爵がまた、ユリアに治癒魔法を掛けさせようとしているかもしれません。とにかく、伯爵家に付けているスパイ兼メイドと連絡を取ってください」

「何だって!次に治癒魔法を使ったら、ユリア嬢の命はもうない。ブラックのいう事が本当なら、えらい事だぞ!すぐに連絡を取らせよう。ただ…メイドもそんなに大々的には動けないから、連絡は夜になるかもしれないが…」

「何を悠長な事を言っているのですか?やっぱりこんなところでじっとなんてしていられない。俺は今から、伯爵家に向かいます」

「伯爵家に向かってどうするつもりだ?うまくかわされるだけだ。それにしても、伯爵め。これだけ裏から調べ上げているのに、未だに決定的な証拠が掴めないだなんて…」

そう言って父上が頭を抱えている。

「父上、もう時間がない。このままだとユリアが本当に死んでしまう。お願いです、伯爵家に行って、ユリアを助け出させてください。俺はもう捕まっても構わない。ユリアがいないこの世なんて、生きている意味はありませんから!」

「何をバカな事を言っているのだ。無理やり伯爵家に乗り込んだところで、護衛につまみ出されるだけだ。ユリア嬢を助け出せないどころか、捕まって終わりだ!」

「それじゃあ、このままユリアが殺されるのを、指をくわえて見ているというのですか?俺はそんな事は出来ません!」

「あなた達、一体何の話をしているの?ユリアという名前が聞こえたけれど、もしかして、パラスティ伯爵家のユリア嬢の事なの?」

俺たちの元にやって来たのは、母上だ。

「そうなのでしょう?ブラック、ごめんなさい。どうしても気になって、私なりに調べたの。あなた、ユリア嬢の事が好きなのでしょう?それから、ユリア嬢の置かれている状況も調べたわ。ねえ、あなた。もう一度王太子殿下に伯爵家の家宅捜索の許可をもらえないか、頼んでみてはどうかしら?」

「何度も頼んでいるが、今の状況だと許可できないの一点張りだ」

「そんな!1人の令嬢が、命を落とそうとしているのですよ。それになによりも、あの何事にも興味のないブラックが、こんなに彼女の為に必死に動いているのに」

「とにかく、まだユリア嬢が今日、治癒魔法を使うと決まった訳ではない。何か別の理由があるかもしれないし。メイドからの連絡を待とう」

確かに父上の言っている事は分かる。でもユリアの様子から考えて、絶対に今日、治癒魔法を使うに違いないんだ。今まさに、ユリアが命を落としているとかもしれない。そう考えると、怖くてたまらないのだ。
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