もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi

文字の大きさ
30 / 48

第30話:どうか生きてくれ~ブラック視点~

「うわぁぁぁ」

「「ブラック!!」」

あまりの痛さに、つい声を上げてしまった。こんな激痛に、ユリアは7年もの間耐えていたのか。そう思ったら、俺の痛みなんて大したことない。

「ブラック、私の魔力も使って」

「私の魔力も」

母上と姉上までも、ユリアに魔力を与えだしたのだ。

「キャァァァ」

母上も姉上も、かなりの激痛に悲鳴を上げているが、やめようとはしない。と、次の瞬間、急に体を引き裂かれる様な激痛がおさまったのだ。

ただ、まだ体中が痛い。これが命を削ると言われている治癒魔法なのだな。同じく治癒魔法を使った母上と姉上は、その場に倒れ込んでしまった。

「公爵夫人、王太子妃殿下、大丈夫ですか?すぐに治療を」

「私たちの事は…気にしないで。それよりも…ユリア嬢を…」

「それにしても…こんなに治癒魔法が辛いだなんて…ユリア嬢は命を落とすまで…ずっとこの魔法を…掛けさせられていたのね…」

母上も姉上も泣いていた。体が痛くて泣いているのではない、きっとユリアを思って泣いているのだろう。この人たちはそういう人たちだ。

「ユリア…」

フラフラする体を必死に動かし、ユリアを抱きしめる。胸元に耳を当てると…

「ユリアの心臓が…動いている…」

そう、ユリアの心臓がどくどくと音を立てていたのだ。

「何ですって?そんな事はあり得ない。通常亡くなった人間に、魔力をいくら提供しても、無意味なはずだ」

「そもそも亡くなった人間に魔力の提供自体、不可能なはずだ。でも、お3人は間違いなくユリア嬢に魔力の提供を行っていた。という事は!」

医者たちが不思議そうにユリアの診察を行っている。

「これは…奇跡でも起きたのか?ブラック殿の言う通り、心臓が動いています。ただ…今まで相当無理をしたのでしょう。心臓は動いているものの、このまま意識が戻るかは分かりません。それにいつ、息を引き取るか…それくらい危険な状況です」

「そんな…それじゃあ、もっと私たちが魔力を…」

フラフラの母上と姉上がこちらにやって来た。

「母上も姉上も、今の状況でユリアに魔力を与えるのは危険です。俺が」

「ブラックだって、さっきユリア嬢に魔力を提供したじゃない。それにクリーン、あなたは王太子妃なのよ。無理は良くないわ。ここは私が…」

「この中で一番の年寄りのお母様が魔力を与えるだなんて、ダメよ。体力なら自信があるのよ。やっぱり私が!」

言い争いをしている時だった。

「ブラック、ユリア嬢の容態は?」

「クリーン、どうしたんだい?顔色がとても悪いじゃないか。一体何があったんだい?この小屋は一体…」

父上と王太子殿下がやって来たのだ。

「公爵様、王太子殿下、既に息を引き取ったユリア嬢に、お3人が魔力を提供されたのです。そのお陰か、奇跡的にユリア嬢の心臓は動き出したのですが、かなり危険な状態でして」

「何だって!クリーン、君は命を削る魔法を言われている、治癒魔法を使ったのかい?それでこんなに顔色が悪いのか。本当に君って子は!とにかく、すぐに王宮に帰って治療を受けるよ。それにしてもこんな小屋に令嬢を閉じ込めていただなんて」

王太子殿下が姉上を抱きかかえようとしたのだが…

「嫌よ!見て、ユリア嬢の姿を。こんなボロボロになるまで、治癒魔法を掛けさせられていたのよ。もっと早く私たちが助けてあげていれば、こんな事にならなかった。彼女をこんな目に合わせてしまった責任は、私達にもあるのです。だから私が、彼女に治癒魔法を…」

「何を言っているのだ、クリーン!ただ、君は言い出したら聞かないからね。それなら僕が、ユリア嬢に治癒魔法を掛けるよ」

「それなら私も掛けよう」

「それでしたら私たちも」

「待って下さい、皆さん。気持ちは嬉しいのですが、ユリアへの治癒魔法は、俺が…」

「ブラック、顔色が悪い。お前は一度治癒魔法を使ったのだろう?お前が無理をして倒れたら、誰がユリア嬢の傍にいるのだい?とにかく、ここは私達に任せなさい」

確かに父上の言う通りだ。でも俺は、他の男どもの魔力を、ユリアに入れたくはないのだ。たとえ無理をしてでも、俺の魔力をユリアに与えたい。

そう思い、再びユリアに向かって魔力を集中させた。

「ブラック!お前!」

俺が治癒魔法を掛けている事に気が付いた父上が叫んでいるが、気にせずユリアに魔力を注ぎ込もうとしたのだが…

「どうして…さっきはうまく行ったのに。どうして魔力が吸収されないのだ?」

なぜか治癒魔法が掛けられないのだ。

「私がやってみよう」

父上がユリアに治癒魔法を掛けたが、やはりうまく行かない。

「もしかしたらユリア嬢は、魔力の受け入れを拒否しているのかもしれません」

「拒否とはどういう事ですか?」

医者の言っている意味が全く分からず、聞き返した。

「我々には、他人が与えてくれる魔力を拒否する事が出来るのです。ユリア嬢はもう、自分に治癒魔法を掛けないでくれと無言のアピールをしているのかもしれません」

「そんな…ユリア嬢は意識がないのでしょう?それなのにどうやって魔力の拒否が出来るの?」

「それは私共では分かりかねます。ただ、さっきは魔力の提供が出来た事を考えると、やはりユリア嬢自身が拒否しているのかと…」

なるほど…ユリアらしいな…

「ユリアは誰よりも心優しい子です。治癒魔法の苦しみを誰よりも知っているユリアは、これ以上自分の為に、誰かが苦しんで欲しくないと考えているのでしょう。ユリアはそう言う子なのです」

一度止まった涙が、再び溢れ出す。

「これ以上こんな小汚いところに、ユリアを置いておけない。とにかくユリアを公爵家に運びましょう。それから、この部屋にあるものは、一旦全て公爵家に運んでください」

ユリア、迎えに来るのが遅くなってごめんね。どうか…どうか生きてくれ!

あなたにおすすめの小説

【完結】想い人がいるはずの王太子殿下に求婚されまして ~不憫な王子と勘違い令嬢が幸せになるまで~

Rohdea
恋愛
──私は、私ではない“想い人”がいるはずの王太子殿下に求婚されました。 昔からどうにもこうにも男運の悪い侯爵令嬢のアンジェリカ。 縁談が流れた事は一度や二度では無い。 そんなアンジェリカ、実はずっとこの国の王太子殿下に片想いをしていた。 しかし、殿下の婚約の噂が流れ始めた事であっけなく失恋し、他国への留学を決意する。 しかし、留学期間を終えて帰国してみれば、当の王子様は未だに婚約者がいないという。 帰国後の再会により再び溢れそうになる恋心。 けれど、殿下にはとても大事に思っている“天使”がいるらしい。 更に追い打ちをかけるように、殿下と他国の王女との政略結婚の噂まで世間に流れ始める。 今度こそ諦めよう……そう決めたのに…… 「私の天使は君だったらしい」 想い人の“天使”がいるくせに。婚約予定の王女様がいるくせに。 王太子殿下は何故かアンジェリカに求婚して来て─── ★★★ 『美人な姉と間違って求婚されまして ~望まれない花嫁が愛されて幸せになるまで~』 に、出て来た不憫な王太子殿下の話になります! (リクエストくれた方、ありがとうございました) 未読の方は一読された方が、殿下の不憫さがより伝わるような気がしています……

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?

氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。 しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。 夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。 小説家なろうにも投稿中

【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。

里海慧
恋愛
わたくしが愛してやまない婚約者ライオネル様は、どうやらわたくしを嫌っているようだ。 でもそんなクールなライオネル様も素敵ですわ——!! 超前向きすぎる伯爵令嬢ハーミリアには、ハイスペイケメンの婚約者ライオネルがいる。 しかしライオネルはいつもハーミリアにはそっけなく冷たい態度だった。 ところがある日、突然ハーミリアの歯が強烈に痛み口も聞けなくなってしまった。 いつもなら一方的に話しかけるのに、無言のまま過ごしていると婚約者の様子がおかしくなり——? 明るく楽しいラブコメ風です! 頭を空っぽにして、ゆるい感じで読んでいただけると嬉しいです★ ※激甘注意 お砂糖吐きたい人だけ呼んでください。 ※2022.12.13 女性向けHOTランキング1位になりました!! みなさまの応援のおかげです。本当にありがとうございます(*´꒳`*) ※タイトル変更しました。 旧タイトル『歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件』

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

呪いをかけられた王子を助けたら愛されました

Karamimi
恋愛
魔力が大好きな伯爵令嬢、ティアは毎日魔力の勉強に精を出していた。そんな中父親から、自国の第三王子が呪いをかけられ苦しんでいる事。さらに、魔力量が多く魔力大国キブリス王国の血を引くティアに、王子の呪いを解いて欲しいと、国王直々に依頼がったと聞かされた。 もし王子の呪いを解く事が出来れば、特例として憧れの王宮魔術師にしてくれるとも。 元々呪いに興味を持っていたところに、王宮魔術師という言葉も加わり、飛びつくティアは、早速王子の元に向かったのだが… ※5万5千文字程度のお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

私を溺愛している婚約者を聖女(妹)が奪おうとしてくるのですが、何をしても無駄だと思います

***あかしえ
恋愛
薄幸の美少年エルウィンに一目惚れした強気な伯爵令嬢ルイーゼは、性悪な婚約者(仮)に秒で正義の鉄槌を振り下ろし、見事、彼の婚約者に収まった。 しかし彼には運命の恋人――『番い』が存在した。しかも一年前にできたルイーゼの美しい義理の妹。 彼女は家族を世界を味方に付けて、純粋な恋心を盾にルイーゼから婚約者を奪おうとする。 ※タイトル変更しました  小説家になろうでも掲載してます

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

替え玉の私に、その愛を注がないで…。~義姉の代わりに嫁いだ辺境伯へ、身を引くはずが……持ちかけられたのは溺愛契約。

翠月 瑠々奈
恋愛
ベルン皇国の辺境伯ソラティスが求めたのは、麗しき皇都の子爵令嬢レイアだった。 しかし、彼の元へ届けられたのは、身代わりに仕立て上げられた妹のラシーヌ。 容姿も性格も全く違う姉妹。 ​拒絶を覚悟したラシーヌだったが、ソラティスは緋色の瞳を向けて一つの「契約」を持ち掛けた。 その契約とは──? ソラティスの結婚の理由、街を守る加護の力。そして、芽生える一つの恋。それに怯える拙い拒み。 ※一部加筆修正済みです。