次こそあなたと幸せになると決めたのに…中々うまくいきません

Karamimi

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第71話:真実を話すときです

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「ダーウィン殿下、シャレル嬢、今日は疲れただろう。ゆっくり休んでくれ」

「はい、それでは私共は失礼いたします」

 陛下たちと話を終えた後、ダーウィン様と一緒に部屋に戻ってきた。

「ダーウィン様、今日は助けて下さり、ありがとうございました。ジョーン殿下、やはりダメだったみたいですね…」

 崖から落ちたジョーン殿下は、やはり助からなかった様だ。

「ジョーンの事を気にしているのかい?ごめんね、あの時僕が、ジョーンに情けをかけずに、法にのっとり厳罰に処していたら、今回の事件は起きなかったのに。僕はやはり、まだ詰めが甘い様だ。君を守るためなら、どんな事でもしようと誓ったのに。結局シャレルを、危険な目に遭わせてしまった」

「それは違いますわ。確かに今回の件は、私にとっても辛い出来事でした。もうだめかと思い、覚悟を決めたのも確かです。ですが、ダーウィン様が助けて下さったではありませんか。あなた様が私を命がけで守って下さったのです。ダーウィン様、改めてありがとうございます」

 2度目の生も、私はダーウィン様と幸せになれなかった。もし3度目の生があるのなら…そう考えていた時に、ダーウィン様が助けてくれたのだ。

「シャレルがジョーンと一緒に崖から落ちていくときは、本当に生きた心地がしなかったよ。あの時の事を思い出すと、今でも恐怖で体が震える。シャレル、知っているかい?人間、トラウマ級の恐怖を味わうとね、心や体が弱っている時に、悪夢となって襲い掛かって来るそうだよ」

「悪夢となって、襲い掛かって来るですか…」

 1度目の生で、ダーウィン様が殺されるシーン、何度も何度も夢で見た。私にとって、あの出来事はトラウマ以外何物でもない。

「シャレル、ジョーンがいなくなった今、君はあの悪夢から解放されるのかな?ずっと囚われていたものね。僕が殺されて、君が自ら命を絶つ悪夢に…」

「どうしてダーウィン様が、その事を知っているのですか?もしかしてダーウィン様も、1度目の生の時の記憶が?」

「やっぱり君は、2度目の生を送っていたのだね。最初は信じられなかったが、毎晩うなされるシャレルの姿と、マリア嬢との会話で、君が2度目の生を生きているのではないかと思っていたのだよ。残念ながら、僕は1度目の生の時の記憶を持っていない。ただ…僕は1度目の生の時にジョーンに殺され、君は自ら命を絶ったのだよね?」

 悲しそうに呟くダーウィン様。彼は1度目の生の時の、記憶はない様だ。

「マリア様との会話とは、一体どういうことですか?もしかして、あの時の会話を聞いていらしたのですか?」

「ああ、そうだよ。君は必ず、マリア嬢に接触するだろうと思っていたから、騎士団長に頼んで、シャレルとマリア嬢を2人きりにしてもらったのだよ」

 なんと!それじゃあ私の行動は、全てお見通しだったという事なの?私が考えている以上に、ダーウィン様は頭の切れる方だったのね。

「君が絶望の中、1度目の人生の幕を下ろしたのは分かったよ。君は1度目の生の時も最後まで、ジョーンではなく僕を選んでくれたのだね。シャレルがマーラル王国に行きたいと言ったのは、1度目の生と関係しているのかい?」

「それは…」

 どうしよう、ダーウィン様に全てを話そうかしら?でも、自分が母親からも愛されず、ずっと孤独だったこと。私達がお互いすれ違い、辛い思いをしていたこと。ダーウィン様にとっては、1度目の生はきっと辛い事の方が多かったはずだ。

 そんな生の時の事を、話してもいいのかしら?

「ごめんね、シャレル。話したくないなら、話さなくていいよ。君にとっては、辛い体験だったのだろう?悪夢でうなされるくらい。ジョーンもいなくなったのだ。今度こそ、2人で幸せになろう」

 ギュッと私の手を握るダーウィン様の温もりが、心地いい。

「この温もり…懐かしいですわ。1度目の生の時、初めて心が通じ合った時、こうやって手を繋いだのです。既に犯罪者として追われる身になっていた私ですが、あなた様とマーラル王国に向かう為に逃避行した1週間は、夢の様に幸せな時間でした」

 私は1度目の生の時のことを、全てダーウィン様に話した。ダーウィン様とうまく関係を築けなかった事。ダーウィン様と王妃様の確執、ジョーン殿下に陥れられ、無実の罪を着せられた事。

 そのせいで、お父様が殺され、愛人契約を拒んだことで、私も命はないだろうと覚悟を決めた事。そんな中、ダーウィン様が助けてくれ、2人でマーラル王国を目指した事。そこで初めて、2人がお互い思い合っていた事を知り、短い時間だったが幸せな時間を過ごした事。

 でも、結局ジョーン殿下に見つかり、私たちは命を落としたあの時の事を。

「2度目の生が始まった時、私はとても嬉しかったのです。今度こそ、ダーウィン様と幸せになれる、いいえ、私の手で、必ずダーウィン様を守ってみせると。でも、結局私は、ダーウィン様に守られてしまいましたわね」

 あれだけダーウィン様を守りたいと意気込んでいたのに、なんだかみっともないわね。

「シャレル、それは違うよ。君が僕を変えてくれたんだ。君がいなかったら、僕はきっと、1度目の生と同じ人生を歩んでいただろう。君がいたから、僕は強くなれた。君のお陰で、今の僕がある。シャレル、1度目の生の時、守ってあげられなくてごめんね。君はずっと、1度目の生の時の十字架を背負って生きてきたのだね。辛かったね。よく頑張ったね」

 ダーウィン様が、私の頭を撫でながら、そう言ってくれたのだ。
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