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雨…
しおりを挟む雨…。
6月上旬…鉄格子から観る雨はもう、観ることはできない。
鍵が開けられ僅かな荷物を持ち廊下へと出ると慣れ親しんだ看守たちが横目で見送ってくれている…。
雨…
二人の看守に挟まれ最後の二重構造のゲート内側までようやくたどり着いた。この場所は雨が降っていも変わらないが、この地に写る雨模様だけは変わっているようだ。
雨…。
看守「🌂持って行け。無いよりましだろうに」
この傘は一本骨が折れているようだが、何もない自分にとっては有難い餞別…。
囚人だった男「…」軽く頭を下げると二重構造のゲートの外にいた看守が雨…降りしきる外へと続く本当に最後のゲートを開けた。
雨…。
一本骨が折れた傘を開き外に出で左側に進もうとした時看守が話しかけてきた。
看守「右に行くいい」
囚人だった男「…っ?」
看守「お前がここにいて知らんだろうがな、左側を進んだ所にある路面電車は廃線になってな右側を進んだ所にな地下鉄ってのができたんだ」
囚人だった男「…ちか、てつ…」
看守「…電車だ。地下にトンネルを掘ってそこに線路を走らせたまぁ路面電車みたいなものだ。まぁ行ってみれば分かるさ」
囚人だった男「…。そう ですか…では此れで…」
看守「…あぁ…」
雨…
上を見上げ、ゲートが閉まるまで目を閉じ頭下げ続ける。
ーー此処には晴れた思い出なんて…無いけれど彼を無くした心の隙間を閉じ込めておくには都合が良かったのかもしれないーー
傘から滴る雨は一つ一つに落ちて弾けて流されて…ただ染まっていくのに…
まだ私はーーー
雨…。
降りしきる雨…の中
一本折れた傘をさして駅へと向かう。
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