7 / 32
7
「お嬢様、本日の髪型はどうなさいますか?」
「フルールに任せるわ。貴女は手先が器用だし、センスも良いから」
「あ、ありがとうございます!では、今日の入学式に相応しいよう整えさせていただきます」
真新しい制服に身を包み、大きなドレッサーの前に座るわたくしの髪を専属侍女のフルールが結ってくれる。
サイドを丁寧に編み込んだハーフアップに制服と同じ色合いの髪留めを付けた髪型は、新入生に相応しく上品且つフレッシュさも感じさせる素敵なものだった。
可愛い髪。
ええ、髪型はとても、とても可愛いですわ。
前世の女子高生みたいな制服(スカート丈はくるぶしまで隠れるほどに長いが)も可愛い。
可愛くないのはわたくしのカエルのようなこの顔と、体重計に乗るのが恐ろしい程の体型。
控えめに言って豚に真珠。
はっきり言うと馬糞にダイヤですわね。
しかしながらこの世界では、デズスのわたくしこそが薔薇の妖精と言われるほどの美人なのだから、もう乾いた笑いしか出てきませんわ。
さて、今日の入学式からゲームが開始する。
ゲームのシナリオなんてくそ食らえ!は思っているものの、ある程度の流れは思い出しておかなければならない。
攻略対象が何人いるのかは分からないが、わたくしが知っているのは一人だけ。
この国の王太子にしてわたくしの婚約者であるモラーハルト第二王子。
他の攻略対象は、名前はおろか顔すら知らない。
しかし、あのヒロインなら間違いなくモラーハルトを選ぶだろう。
何故わかるかって?
実はわたくし、5年前にドブール男爵家に引き取られる前のヒロインに会いに行ったのですわ。
ゲームでのミリヨンは元々孤児だったがドブール男爵の隠し子だったことが判明し、学園入学のしばらく前に引き取られた、という設定なのだ。
王都の外れにある小さな孤児院。
習得したばかりの認識阻害魔法を使ってこっそりと観察したの。
異世界小説あるあるで、ヒロインが転生者の可能性もあったし、
もしも話の分かる良い子ならモラーハルト殿下を譲る代わりに『首チョンパは勘弁して下さらない?』ってお願い出来るかなって。
しかし、そこで目にしたヒロイン、ミリヨンは最低最悪なクソ女子だったのですわ。
孤児院の院長を始め、男性職員やそこで生活している男の子達を自分の周りに侍らせていた。
院長の膝に座り、ボロボロとカスを落としながらクッキーを齧る。
そしてわざと食べかけのクッキーを床に落として、男の子たちが
『ミリヨンの食べかけのクッキー!!』
と目を血走らせて奪い合うのを楽しそうにニヤニヤと見ている。
その顔は深海魚のブロブフィッシュそっくり。
(その名を聞いてもピンとこない方は『深海魚おじさん』で検索して下さいな)
とにかくキモイ。
それはミリヨンの顔が、というのも勿論あるけれど、
たった10歳にして魅了の魔法を使い、男たちを手玉に取ってもてあそぶ。
その思考がキモイ。
そして彼女から発せられる腐ったドブのような臭い。
『ほら!そこも汚れてるじゃない!ちゃんと拭きなさいよ、このブスが!』
同じくらいの年頃の女の子に、男の膝の上から唾を飛ばして命令する10歳のミリヨン。
そして必死に床を拭く少女に男の子達をけしかけて、髪を引っ張らせたりして虐めている。
ああ、これは駄目ですわね。
仲良くなれるはずがねぇですわ。
こんなビッチの性悪に
『首チョンパしないで?』
なんてお願いするなら死んだ方がマシってなもんですわ!!
『あたしはねー、将来王妃様になるの!王子様のモラーハルトって、あたしと同じ10歳なんだって!これってきっと運命よ!ぜーったいモラーハルトと出会ってあたしに夢中にさせてみせるんだから』
『そうだね!ミリヨンなら絶対王妃様になれるよ!』
『やっぱりあんた達もそう思う?!あたしは王妃様になったらキラッキラのドレスを着て大きな宝石のついた首飾りを付けて、沢山の召使いに囲まれて毎日贅沢なご馳走を食べて暮らすのよ!そんで、あたしに逆らうヤツはみーんな処刑してやるの!』
床を拭いていた少女がふと顔を上げた。
その顔に、持っていたグラスの水を浴びせ高笑いするミリヨン。
もう、1秒たりとも見ていたくないほどに醜悪なミリヨン。
そう、『醜悪』という言葉は彼女のためにあるのだと思う。
わたくしは思わず虐められていたずぶ濡れの少女の手を取って我が家に連れ帰りましたの。
その少女こそが今のわたくしの専属侍女、フルールなのですわ。
フルールはこの世界基準で言えば、かなりの不細工だ。
つまり、わたくしの美醜感覚からすればとっても可愛らしい女の子!!
まさに欲しくて欲しくて堪らなかったわたくしの癒し!!!
番号で呼ばれていた彼女にフルールという名前を与え、更にはフルールの双子のお兄さん(後にファスグリーという名前を与えた)も引き取った。
ファスグリーとフルールは同じ顔。
つまり私基準イケメン。
ミリヨンという醜悪な存在を確認したその日、わたくしは心の癒やしを二人も手に入れたのですわ!!
‥‥と、少し話はそれてしまいましたが。
何故ミリヨンがモラーハルト殿下を選ぶと断言できるか、ご納得頂けたでしょうか?
「フルールに任せるわ。貴女は手先が器用だし、センスも良いから」
「あ、ありがとうございます!では、今日の入学式に相応しいよう整えさせていただきます」
真新しい制服に身を包み、大きなドレッサーの前に座るわたくしの髪を専属侍女のフルールが結ってくれる。
サイドを丁寧に編み込んだハーフアップに制服と同じ色合いの髪留めを付けた髪型は、新入生に相応しく上品且つフレッシュさも感じさせる素敵なものだった。
可愛い髪。
ええ、髪型はとても、とても可愛いですわ。
前世の女子高生みたいな制服(スカート丈はくるぶしまで隠れるほどに長いが)も可愛い。
可愛くないのはわたくしのカエルのようなこの顔と、体重計に乗るのが恐ろしい程の体型。
控えめに言って豚に真珠。
はっきり言うと馬糞にダイヤですわね。
しかしながらこの世界では、デズスのわたくしこそが薔薇の妖精と言われるほどの美人なのだから、もう乾いた笑いしか出てきませんわ。
さて、今日の入学式からゲームが開始する。
ゲームのシナリオなんてくそ食らえ!は思っているものの、ある程度の流れは思い出しておかなければならない。
攻略対象が何人いるのかは分からないが、わたくしが知っているのは一人だけ。
この国の王太子にしてわたくしの婚約者であるモラーハルト第二王子。
他の攻略対象は、名前はおろか顔すら知らない。
しかし、あのヒロインなら間違いなくモラーハルトを選ぶだろう。
何故わかるかって?
実はわたくし、5年前にドブール男爵家に引き取られる前のヒロインに会いに行ったのですわ。
ゲームでのミリヨンは元々孤児だったがドブール男爵の隠し子だったことが判明し、学園入学のしばらく前に引き取られた、という設定なのだ。
王都の外れにある小さな孤児院。
習得したばかりの認識阻害魔法を使ってこっそりと観察したの。
異世界小説あるあるで、ヒロインが転生者の可能性もあったし、
もしも話の分かる良い子ならモラーハルト殿下を譲る代わりに『首チョンパは勘弁して下さらない?』ってお願い出来るかなって。
しかし、そこで目にしたヒロイン、ミリヨンは最低最悪なクソ女子だったのですわ。
孤児院の院長を始め、男性職員やそこで生活している男の子達を自分の周りに侍らせていた。
院長の膝に座り、ボロボロとカスを落としながらクッキーを齧る。
そしてわざと食べかけのクッキーを床に落として、男の子たちが
『ミリヨンの食べかけのクッキー!!』
と目を血走らせて奪い合うのを楽しそうにニヤニヤと見ている。
その顔は深海魚のブロブフィッシュそっくり。
(その名を聞いてもピンとこない方は『深海魚おじさん』で検索して下さいな)
とにかくキモイ。
それはミリヨンの顔が、というのも勿論あるけれど、
たった10歳にして魅了の魔法を使い、男たちを手玉に取ってもてあそぶ。
その思考がキモイ。
そして彼女から発せられる腐ったドブのような臭い。
『ほら!そこも汚れてるじゃない!ちゃんと拭きなさいよ、このブスが!』
同じくらいの年頃の女の子に、男の膝の上から唾を飛ばして命令する10歳のミリヨン。
そして必死に床を拭く少女に男の子達をけしかけて、髪を引っ張らせたりして虐めている。
ああ、これは駄目ですわね。
仲良くなれるはずがねぇですわ。
こんなビッチの性悪に
『首チョンパしないで?』
なんてお願いするなら死んだ方がマシってなもんですわ!!
『あたしはねー、将来王妃様になるの!王子様のモラーハルトって、あたしと同じ10歳なんだって!これってきっと運命よ!ぜーったいモラーハルトと出会ってあたしに夢中にさせてみせるんだから』
『そうだね!ミリヨンなら絶対王妃様になれるよ!』
『やっぱりあんた達もそう思う?!あたしは王妃様になったらキラッキラのドレスを着て大きな宝石のついた首飾りを付けて、沢山の召使いに囲まれて毎日贅沢なご馳走を食べて暮らすのよ!そんで、あたしに逆らうヤツはみーんな処刑してやるの!』
床を拭いていた少女がふと顔を上げた。
その顔に、持っていたグラスの水を浴びせ高笑いするミリヨン。
もう、1秒たりとも見ていたくないほどに醜悪なミリヨン。
そう、『醜悪』という言葉は彼女のためにあるのだと思う。
わたくしは思わず虐められていたずぶ濡れの少女の手を取って我が家に連れ帰りましたの。
その少女こそが今のわたくしの専属侍女、フルールなのですわ。
フルールはこの世界基準で言えば、かなりの不細工だ。
つまり、わたくしの美醜感覚からすればとっても可愛らしい女の子!!
まさに欲しくて欲しくて堪らなかったわたくしの癒し!!!
番号で呼ばれていた彼女にフルールという名前を与え、更にはフルールの双子のお兄さん(後にファスグリーという名前を与えた)も引き取った。
ファスグリーとフルールは同じ顔。
つまり私基準イケメン。
ミリヨンという醜悪な存在を確認したその日、わたくしは心の癒やしを二人も手に入れたのですわ!!
‥‥と、少し話はそれてしまいましたが。
何故ミリヨンがモラーハルト殿下を選ぶと断言できるか、ご納得頂けたでしょうか?
あなたにおすすめの小説
美醜逆転の世界に間違って召喚されてしまいました!
エトカ
恋愛
続きを書くことを断念した供養ネタ作品です。
間違えて召喚されてしまった倉見舞は、美醜逆転の世界で最強の醜男(イケメン)を救うことができるのか……。よろしくお願いします。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい
ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26)
鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。
狭い個室にはメイド服がかかっている。
とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。
「この顔……どこか見覚えが……」
幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。
名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー)
没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。
原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。
「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」
幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。
病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。
エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18)
全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。
タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。
けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。
思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。
──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……?
※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。