クソゲーで美醜逆転の世界に転生ですか?!イケメン(化け物)はお断り!何としても醜男(超絶イケメン)と結ばれてみせます!

むぎてん

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わたくしの髪を撫でて下さったあの日から、デメルフリード様は時々わたくしに触れるようになった。

髪に、肩に、背中にそっと触れる見えない手。
その優しい触れ方は、いつもわたくしを安心させ、そして欲張りにさせる。

もっと触って欲しい。
手を繋いでみたい。
頬を撫でられてみたい。
抱きしめられてみたい。
唇を重ねてみたい。

更に美しく成長なさっているであろう貴方のお姿を早く見たい。






✳✳✳✳✳
そのイベントは、わたくしの16歳の誕生日に訪れた。
まるで神様からのプレゼントのように。


「ミリヨン、僕の話を聞いてくれないか。実は僕には『忌み王子』と呼ばれる、それはそれは醜悪な見目をした腹違いの兄がいるんだ」

キターーー!
モラーハルトとミリヨンを張っていた甲斐がありましたわ!

やっとあの『可哀想な僕ちゃんを慰めて』のくそイベントですわ!
わたくしはずーっと、このイベントを今か今かと待ちわびていましたのよ!


誰もいない学園の裏庭で、授業をサボったモラーハルトとミリヨンがコソコソと逢い引きをしている。
あ、わたくしはもう卒業資格を得ていますからね。授業を受ける必要は無いのですわ!

クソゲーでのモラーハルトは傷付いたような、恥を忍ぶような神妙な顔をして打ち明けていたと思うのだけど‥‥
コイツは鼻に汚い皺を寄せて吐き捨てるように喋ってる。

「えー!ってことはその人が第一王子?モル様は将来王様にはなれないってこと?やだやだー!」

ふっ、さすがミリヨン。
気になるのは自分が王妃になれるかどうか、そこなのですね。

「いや、アレは18歳の誕生日を迎えるその日に王宮から追放されることが決まっている。追放先はこの国の最北端にあるサムーイ地方だ。この王都から馬車で二ヶ月はかかる遠い遠い極寒の地だ」

「極寒の?」

「ああ、土も空気も空さえも、全てが凍り付き草一本も生えない不毛の地らしい」

「えー、そんなところで生きていけるのぉ?」

「父が言うには、成人してしまえば親子の縁は切れる。後はアレが餓死しようが凍死しようが関係ない、と笑ってらしたよ」

「そうなんだ、それなら安心だね!それにしても『忌み王子』って呼ばれるくらい醜悪な見た目ってどんだけなのぉ?」

「僕もその素顔を見たことはないんだ。アレはいつも仮面を付けているからね。でも聞いた話によるとアレの素顔を目にした者は腰を抜かし、泣き喚き、最後は気が触れて死んでしまう、と。実際にアレの母親も生まれたばかりのアレを見た瞬間、発狂して死んだらしい」

「うわぁ、やばーい!そんな恐ろしいお兄さんを持ったモル様、かわいそう!!あたしが慰めてあげる!」

ミリヨンがモラーハルトの頭をよしよしと撫でる。
上目遣いでお目々パチパチ!ってしながら。
ミリヨンから臭ってくるドブの匂いも
デレーーーっと鼻の下を伸ばしたモラーハルトもキモすぎて吐きそうですわ!
おえぇっ。

いやいや、えずいている場合ではないわ。
このタイミングを逃しては大変!


わたくしは偶然を装い、2人の前に姿を現した。

「あら、お仲がよろしくて結構な事ですわね」

「マ、マリアンヌ!なんだ貴様、僕たちを覗き見してたのか?!」

「まさか。そんな悪質な趣味は持ち合わせておりませんわ」

「何よ!すました顔しちゃって!本当はあたしとモル様に嫉妬して気分悪くしてんでしょ!!」

嫉妬?するわけありませんでしょう?
キモい二人にえずくほど気分は悪くなっておりますが。

「それよりもモラーハルト殿下、そのように軽々しく王家の極秘事項を学園内で口になさってはいけませんわ。しかも下位貴族の男爵令嬢に話すなどもっての他です」

「なっ何よ!あんたあたしのこと馬鹿にしてんのね?!」

「馬鹿になどしておりませんわ?わたくしはただ事実を申し上げただけ。貴女は口が軽いともっぱらの評判ですから。先ほどのことは絶対に誰にも口外なさらないでくださいませね」

「きいいいいーー!モル様ぁ!この女はいつもこんなふうにあたしを虐めるんですよぉ」

いつも?
貴女と直接言葉を交わすのは今が初めてですけれど?

「貴女を虐めた覚えはございませんが?」

「ふん!あんたなんかあたしが王妃様になったらすぐにギロチンにかけて処刑してやるんだから!」

はい、出た。
ドブ女の本性。

「は?貴女が王妃に?残念ながらそれは無理ですわ。モラーハルト殿下の婚約者は公爵令嬢であるこのわたくし。男爵家の庶子である貴女は公娼か、寵姫か。どんなに頑張っても側室止まりです」

「マリアンヌ!口を慎め!僕の妻になるのはこのミリヨンだ!未来の王妃に向かって不敬だぞ!!」

「あらまぁ、そうなのですか。では、殿下はわたくしとの婚約は破棄なさると?」

「当然だ!僕は僕より出来が良い女は嫌いだ!いつもいつもすました顔してエッチなこともさせてくれないではないか!」

本当に馬鹿な男ですわね。

これではミリヨンの魅了魔法も骨の髄まで染みこむというもの。

馬鹿で、単純で、劣等感の強い者ほど下等な悪霊に取り憑かれやすい、と申しますから。


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