クソゲーで美醜逆転の世界に転生ですか?!イケメン(化け物)はお断り!何としても醜男(超絶イケメン)と結ばれてみせます!

むぎてん

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「当然だ!僕は僕より出来が良い女は嫌いだ!いつもいつもすました顔してエッチなこともさせてくれないではないか!」

丸見えの鼻の穴からブフッと荒い鼻息を出すカエルの化け物。

「ほらね!王妃になるのはあたし!あんたなんか婚約破棄よ!きゃはは!ざまーみろ!」

ブヨブヨのキモい顔を更に醜く歪めて笑う深海魚の化け物。

吐き気を抑えるのが大変ですわ。

「あら、それならわたくし、早急に次の婚約者候補を探さなければなりませんわね」


わたくしは扇子を開き、口許に当てた。
今はチョコレートの香りを感じたくないから。


「はん!貴様のような女を欲しがる男などこの世界にいるものか!」

「そーよそーよ!あんたなんか一生独身よ!」


デメルフリード様、お願い。
今は来ないで下さいませ。


「まぁ、それもよいかも知れませんわね。見目の悪い殿方に嫁ぐくらいなら一生独身で構いませんわ。例えば今のお話にあった『第一王子殿下』ですか?そんな方に嫁ぐなんて死んでもお断りですもの」


こんな会話、嘘でも大好きな貴方に聞かせたくはない。


「貴様があの忌み王子に嫁ぐ、だと?」

わたくしは口許から扇子を下ろすとパチン!と音を鳴らして閉じた。


ああ、チョコレートの香り。
来てしまったのね。
お願い、お願い。
どうか耳を塞いでいてくださいませ。


「だからお断りと申しておりますでしょう!発狂して死んでしまう程に醜悪な第一王子殿下に嫁ぐくらいなら舌を噛みちぎって自害した方がマシですわ!!」


チョコレートの匂いがむせ返る程に強く香り、わたくしの周りの空気が震えた。
ああ、デメルフリード様、泣かないで下さいませ。


「そうか‥‥舌を噛みちぎって自害、か。ふふふ、なるほど‥‥ふはははは!!」

モラーハルトが良いことを思いついた、と言わんばかりに高笑いした。

ああ、本当に。
この化け物は心の芯まで化け物ですわね。
ミリヨンの魅了魔法など関係ありませんわ。

モラーハルトという人間は、わたくしの苦しむ姿を見ることが何よりも楽しいのだ。

ええ、知っておりましたわよ?
貴方は昔からそうでしたから。

あれはまだ12歳の頃。
わたくしが
『シナモンが苦手』と言えば、これでもかとシナモンの掛かった菓子を出してきた。
『コーヒーが苦手』と言えば、濃いーくて、苦ーいブラックコーヒーを出してきた。

わたくしが顔をしかめてそれらを口に運ぶのを、汚らしい笑みを浮かべて見ておられましたわよね?

そして、わたくしが好きだと言ったものは、とことんわたくしの周りから排除した。

あれは14歳になったばかりの頃。
『猫が好き』
と言った翌日に庭園の隅に猫の死骸が放置されていた。

驚き、泣き叫ぶわたくしの姿を嬉しそうに見る貴方の目は、爛々と汚い輝きを放っておりましたわ。

わたくしはあの日、この化け物には自分の好きなものを今後一切、絶対に言わないと心に決めた。


そんな人間と夫婦になれ?
それこそ、こんなおぞましい男に嫁ぐくらいなら舌を噛みちぎって死んだ方がマシというもの。
たとえモラーハルトがわたくしにとって絶世のイケメンだったとしても、デメルフリード様という存在がなくとも、この化け物だけは死んでもごめんですわ。
ええ、絶対に!!

「行くぞミリヨン!こんな性悪女と同じ空気を吸っていては可愛いミリヨンにまで性悪が感染ってしまう!」

「はーい!!モル様、行きましょ、行きましょ!!」

ニヤニヤとわたくしを横目で見ながらミリヨンの肩を抱いて去って行くモラーハルト。

さぁ、種蒔きは完了。
これで後は断罪の時を待つだけ。
あのクズのやる事なんてお見通し。




2人の姿が完全に見えなくなった瞬間、わたくしは膝から崩れ落ちるようにその場に蹲った。

「‥‥デメルフリード様」

初めて声に出して貴方に呼び掛けた。

なんの反応もない。
もうすでにチョコレートの香りは消えている。


デメルフリード様。
お願い、泣かないで。
あの空気の震えは貴方が泣いてしまったからでしょう?

ねぇ‥‥‥
デメルフリード様、貴方、もしかしてわたくしを愛してらっしゃるのではなくて?

姿を見せずにいつでもわたくしを見ている。

恐れるように、躊躇うように、それでも優しく触れる大きな手が震えていること、
その指先が緊張で冷たくなっていること、ちゃんと気付いてますのよ。


わたくしは己の手をギュッと握りしめて立ち上がり、顔を上げて校舎に向かって真っ直ぐに歩く。

わたくしは泣きませんわ。
悲しい涙も、悔しい涙も、怒りの涙も。
そんなものは馬にでも食わせてしまえ。

わたくしが流すのは幸せの涙だけ。
『この世界で幸せになる』と宣言したあの日にそう誓ったのです。

愛する貴方が、わたくしの分まで泣いてくださっているのでしょう?

貴方が悲しい涙を流すのを想像するのは辛いけれど、今は仕方の無いこと。

貴方が再びそのお姿を見せて下さったその時は、きっと2人で幸せの涙を流しましょう?

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