14 / 32
14
「当然だ!僕は僕より出来が良い女は嫌いだ!いつもいつもすました顔してエッチなこともさせてくれないではないか!」
丸見えの鼻の穴からブフッと荒い鼻息を出すカエルの化け物。
「ほらね!王妃になるのはあたし!あんたなんか婚約破棄よ!きゃはは!ざまーみろ!」
ブヨブヨのキモい顔を更に醜く歪めて笑う深海魚の化け物。
吐き気を抑えるのが大変ですわ。
「あら、それならわたくし、早急に次の婚約者候補を探さなければなりませんわね」
わたくしは扇子を開き、口許に当てた。
今はチョコレートの香りを感じたくないから。
「はん!貴様のような女を欲しがる男などこの世界にいるものか!」
「そーよそーよ!あんたなんか一生独身よ!」
デメルフリード様、お願い。
今は来ないで下さいませ。
「まぁ、それもよいかも知れませんわね。見目の悪い殿方に嫁ぐくらいなら一生独身で構いませんわ。例えば今のお話にあった『第一王子殿下』ですか?そんな方に嫁ぐなんて死んでもお断りですもの」
こんな会話、嘘でも大好きな貴方に聞かせたくはない。
「貴様があの忌み王子に嫁ぐ、だと?」
わたくしは口許から扇子を下ろすとパチン!と音を鳴らして閉じた。
ああ、チョコレートの香り。
来てしまったのね。
お願い、お願い。
どうか耳を塞いでいてくださいませ。
「だからお断りと申しておりますでしょう!発狂して死んでしまう程に醜悪な第一王子殿下に嫁ぐくらいなら舌を噛みちぎって自害した方がマシですわ!!」
チョコレートの匂いがむせ返る程に強く香り、わたくしの周りの空気が震えた。
ああ、デメルフリード様、泣かないで下さいませ。
「そうか‥‥舌を噛みちぎって自害、か。ふふふ、なるほど‥‥ふはははは!!」
モラーハルトが良いことを思いついた、と言わんばかりに高笑いした。
ああ、本当に。
この化け物は心の芯まで化け物ですわね。
ミリヨンの魅了魔法など関係ありませんわ。
モラーハルトという人間は、わたくしの苦しむ姿を見ることが何よりも楽しいのだ。
ええ、知っておりましたわよ?
貴方は昔からそうでしたから。
あれはまだ12歳の頃。
わたくしが
『シナモンが苦手』と言えば、これでもかとシナモンの掛かった菓子を出してきた。
『コーヒーが苦手』と言えば、濃いーくて、苦ーいブラックコーヒーを出してきた。
わたくしが顔をしかめてそれらを口に運ぶのを、汚らしい笑みを浮かべて見ておられましたわよね?
そして、わたくしが好きだと言ったものは、とことんわたくしの周りから排除した。
あれは14歳になったばかりの頃。
『猫が好き』
と言った翌日に庭園の隅に猫の死骸が放置されていた。
驚き、泣き叫ぶわたくしの姿を嬉しそうに見る貴方の目は、爛々と汚い輝きを放っておりましたわ。
わたくしはあの日、この化け物には自分の好きなものを今後一切、絶対に言わないと心に決めた。
そんな人間と夫婦になれ?
それこそ、こんなおぞましい男に嫁ぐくらいなら舌を噛みちぎって死んだ方がマシというもの。
たとえモラーハルトがわたくしにとって絶世のイケメンだったとしても、デメルフリード様という存在がなくとも、この化け物だけは死んでもごめんですわ。
ええ、絶対に!!
「行くぞミリヨン!こんな性悪女と同じ空気を吸っていては可愛いミリヨンにまで性悪が感染ってしまう!」
「はーい!!モル様、行きましょ、行きましょ!!」
ニヤニヤとわたくしを横目で見ながらミリヨンの肩を抱いて去って行くモラーハルト。
さぁ、種蒔きは完了。
これで後は断罪の時を待つだけ。
あのクズのやる事なんてお見通し。
2人の姿が完全に見えなくなった瞬間、わたくしは膝から崩れ落ちるようにその場に蹲った。
「‥‥デメルフリード様」
初めて声に出して貴方に呼び掛けた。
なんの反応もない。
もうすでにチョコレートの香りは消えている。
デメルフリード様。
お願い、泣かないで。
あの空気の震えは貴方が泣いてしまったからでしょう?
ねぇ‥‥‥
デメルフリード様、貴方、もしかしてわたくしを愛してらっしゃるのではなくて?
姿を見せずにいつでもわたくしを見ている。
恐れるように、躊躇うように、それでも優しく触れる大きな手が震えていること、
その指先が緊張で冷たくなっていること、ちゃんと気付いてますのよ。
わたくしは己の手をギュッと握りしめて立ち上がり、顔を上げて校舎に向かって真っ直ぐに歩く。
わたくしは泣きませんわ。
悲しい涙も、悔しい涙も、怒りの涙も。
そんなものは馬にでも食わせてしまえ。
わたくしが流すのは幸せの涙だけ。
『この世界で幸せになる』と宣言したあの日にそう誓ったのです。
愛する貴方が、わたくしの分まで泣いてくださっているのでしょう?
貴方が悲しい涙を流すのを想像するのは辛いけれど、今は仕方の無いこと。
貴方が再びそのお姿を見せて下さったその時は、きっと2人で幸せの涙を流しましょう?
丸見えの鼻の穴からブフッと荒い鼻息を出すカエルの化け物。
「ほらね!王妃になるのはあたし!あんたなんか婚約破棄よ!きゃはは!ざまーみろ!」
ブヨブヨのキモい顔を更に醜く歪めて笑う深海魚の化け物。
吐き気を抑えるのが大変ですわ。
「あら、それならわたくし、早急に次の婚約者候補を探さなければなりませんわね」
わたくしは扇子を開き、口許に当てた。
今はチョコレートの香りを感じたくないから。
「はん!貴様のような女を欲しがる男などこの世界にいるものか!」
「そーよそーよ!あんたなんか一生独身よ!」
デメルフリード様、お願い。
今は来ないで下さいませ。
「まぁ、それもよいかも知れませんわね。見目の悪い殿方に嫁ぐくらいなら一生独身で構いませんわ。例えば今のお話にあった『第一王子殿下』ですか?そんな方に嫁ぐなんて死んでもお断りですもの」
こんな会話、嘘でも大好きな貴方に聞かせたくはない。
「貴様があの忌み王子に嫁ぐ、だと?」
わたくしは口許から扇子を下ろすとパチン!と音を鳴らして閉じた。
ああ、チョコレートの香り。
来てしまったのね。
お願い、お願い。
どうか耳を塞いでいてくださいませ。
「だからお断りと申しておりますでしょう!発狂して死んでしまう程に醜悪な第一王子殿下に嫁ぐくらいなら舌を噛みちぎって自害した方がマシですわ!!」
チョコレートの匂いがむせ返る程に強く香り、わたくしの周りの空気が震えた。
ああ、デメルフリード様、泣かないで下さいませ。
「そうか‥‥舌を噛みちぎって自害、か。ふふふ、なるほど‥‥ふはははは!!」
モラーハルトが良いことを思いついた、と言わんばかりに高笑いした。
ああ、本当に。
この化け物は心の芯まで化け物ですわね。
ミリヨンの魅了魔法など関係ありませんわ。
モラーハルトという人間は、わたくしの苦しむ姿を見ることが何よりも楽しいのだ。
ええ、知っておりましたわよ?
貴方は昔からそうでしたから。
あれはまだ12歳の頃。
わたくしが
『シナモンが苦手』と言えば、これでもかとシナモンの掛かった菓子を出してきた。
『コーヒーが苦手』と言えば、濃いーくて、苦ーいブラックコーヒーを出してきた。
わたくしが顔をしかめてそれらを口に運ぶのを、汚らしい笑みを浮かべて見ておられましたわよね?
そして、わたくしが好きだと言ったものは、とことんわたくしの周りから排除した。
あれは14歳になったばかりの頃。
『猫が好き』
と言った翌日に庭園の隅に猫の死骸が放置されていた。
驚き、泣き叫ぶわたくしの姿を嬉しそうに見る貴方の目は、爛々と汚い輝きを放っておりましたわ。
わたくしはあの日、この化け物には自分の好きなものを今後一切、絶対に言わないと心に決めた。
そんな人間と夫婦になれ?
それこそ、こんなおぞましい男に嫁ぐくらいなら舌を噛みちぎって死んだ方がマシというもの。
たとえモラーハルトがわたくしにとって絶世のイケメンだったとしても、デメルフリード様という存在がなくとも、この化け物だけは死んでもごめんですわ。
ええ、絶対に!!
「行くぞミリヨン!こんな性悪女と同じ空気を吸っていては可愛いミリヨンにまで性悪が感染ってしまう!」
「はーい!!モル様、行きましょ、行きましょ!!」
ニヤニヤとわたくしを横目で見ながらミリヨンの肩を抱いて去って行くモラーハルト。
さぁ、種蒔きは完了。
これで後は断罪の時を待つだけ。
あのクズのやる事なんてお見通し。
2人の姿が完全に見えなくなった瞬間、わたくしは膝から崩れ落ちるようにその場に蹲った。
「‥‥デメルフリード様」
初めて声に出して貴方に呼び掛けた。
なんの反応もない。
もうすでにチョコレートの香りは消えている。
デメルフリード様。
お願い、泣かないで。
あの空気の震えは貴方が泣いてしまったからでしょう?
ねぇ‥‥‥
デメルフリード様、貴方、もしかしてわたくしを愛してらっしゃるのではなくて?
姿を見せずにいつでもわたくしを見ている。
恐れるように、躊躇うように、それでも優しく触れる大きな手が震えていること、
その指先が緊張で冷たくなっていること、ちゃんと気付いてますのよ。
わたくしは己の手をギュッと握りしめて立ち上がり、顔を上げて校舎に向かって真っ直ぐに歩く。
わたくしは泣きませんわ。
悲しい涙も、悔しい涙も、怒りの涙も。
そんなものは馬にでも食わせてしまえ。
わたくしが流すのは幸せの涙だけ。
『この世界で幸せになる』と宣言したあの日にそう誓ったのです。
愛する貴方が、わたくしの分まで泣いてくださっているのでしょう?
貴方が悲しい涙を流すのを想像するのは辛いけれど、今は仕方の無いこと。
貴方が再びそのお姿を見せて下さったその時は、きっと2人で幸せの涙を流しましょう?
あなたにおすすめの小説
美醜逆転の世界に間違って召喚されてしまいました!
エトカ
恋愛
続きを書くことを断念した供養ネタ作品です。
間違えて召喚されてしまった倉見舞は、美醜逆転の世界で最強の醜男(イケメン)を救うことができるのか……。よろしくお願いします。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい
ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26)
鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。
狭い個室にはメイド服がかかっている。
とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。
「この顔……どこか見覚えが……」
幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。
名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー)
没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。
原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。
「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」
幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。
病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。
エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18)
全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。
タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。
けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。
思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。
──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……?
※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。