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15 デメルフリード
デメルフリード視点
君の髪に触れてしまったあの日から、俺は完全に自分を止めることが出来なくなった。
そして、姿を隠した卑怯な俺は再び君に触れた。
しっとりと吸い付くようなその髪に。
ふくよかで柔らかなその肩に。
なだらかなまろいその背中に。
触れた指先に感じる甘い痺れが、恐れも、躊躇いも、罪悪感さえも覆い隠してしまう。
もっと、もっと。
君の躰のあそこにも、ここにも触れてみたい。
俺の欲望はどんどんエスカレートして、夜になれば夢の中で大爆発を起こす。
だから、きっと罰が当たったんだ。
「見目の悪い殿方に嫁ぐくらいなら、一生独身で構いませんわ。例えば今のお話にあった『第一王子殿下』ですか?そんな方に嫁ぐなんて死んでもお断りですもの」
俺を拒絶する君の声が冷たく響く。
俺の体がぐらりと揺れた。
心がぐちゃぐちゃに引き裂かれたように痛み、もう立っていることも出来ない。
「だからお断りと申しておりますでしょう!発狂して死んでしまう程に醜悪な第一王子に嫁ぐくらいなら舌を噛みちぎって自害した方がマシですわ!!」
絶望が津波のように押し寄せて、その波はもう二度と引くことは無い。
俺の頬を止めどなく涙が流れる。
俺に傷付く資格など、泣く資格などありはしないのに。
‥‥ああ、もう、死のう。
一方的に君を見つめて、付け回し、その躰に触れた。
学園で孤立するように誘導し、真っ黒の嫉妬と独占欲でその姿に喜んだ。
そして夜になれば君の柔らかさを思い出し、夢の中で穢す。
何度も、何度も、何度も。
君への想いは、歪み、淀み、狂気で覆い尽くされた。
こんな俺が生きているなど、許されるはずがない。
そして俺は、あの日から死んだ。
自室のベッドに横たわり、目を閉じる。
このまま死のう、と。
ああ、だが、しかし。
忌々しい俺のこの体は。
食事を取らずともエネルギーは勝手に魔力で補給され、垂れ流した排泄物は勝手に清浄魔法がかかる。
自分の首を切りつけてみれば治癒魔法が発動する。
俺は‥‥死ぬことすら出来ない。
だからこうやってただベッドに横たわり、生きたまま死んでいるのだ。
コンコン
部屋の扉をノックする音が聞こえた気がした。
俺はベッドに横たわったまま微動だにしない。
何故なら死んでいるからだ。
コンコンコン!
さっきよりも強くはっきりと聞こえる音。
「‥‥誰だ」
何処の誰が『忌み王子』の部屋を訪ねるというのだ。
きっとこれは幻聴だ。
死んでいるのに幻聴を聞くなど。
俺はこの後に及んでまだ死にたくないと願っているのか。
なんと浅ましいことか。
「国王陛下よりお手紙にございます。ご確認ください」
は?幻聴ではないのか?
手紙?
父からだと?
俺はふらりとベッドから下りて、ドアと床の隙間から差し込まれた真っ黒の封筒を手に取った。
『明日の午前10時、世の謁見室に参ぜよ 正装の必要は無いが、必ず仮面を付けて参れ』
俺を恨み憎んでいる父が、俺に何の用があるというのか。
ああ、そうか。
俺はいよいよこの王宮から追放されるのだ。
そうだ、それでいい。
うんと、うんと遠い所に飛ばされてしまえば良い。
瞬間移動魔法の使えない、例えば地獄の底にでも飛ばして貰いたいが、それはさすがの国王でも無理だろう。
それでもいい。
とにかく俺はここから遠く遠く離れた何処かで一人、生きながら死んでいく。
それが、死ぬことすら出来ない俺が出来る、マリアンヌに対する唯一の償いだ。
そうして翌日、訪れた国王の謁見室。
国王である父が壇上の玉座に座り、その脇にモラーハルトとピンク女が並んで立っている。
王妃の姿はない。
段下を固めるのはこの国の中枢を担う者達だろう。
王城でよく見かける面々がズラリと揃っていた。
「挨拶は要らぬ」
まるで汚物でも見るかのようにそう言って、部屋の隅に向かって顎をしゃくる父。
見目の良い王宮騎士に両脇を固められて、父の顎が差したその場所に立たされた。
コンコン
「失礼致します。マリアンヌ・ガセット公爵令嬢が到着なされました」
「入れ!」
‥‥‥は?マリアンヌ?
何故この場にマリアンヌが来るんだ。
これは俺の追放を言い渡すための招集だろう?!
マリアンヌには関係ないじゃないか!!
正装したマリアンヌが壇上の三人に向かって、それはそれは美しいお嬢の礼をする。
久しぶりに目にするマリアンヌに、俺は激しく動揺して全く頭が回らない。
何だ?
何なのだ?
今ここで行われているこれは、一体何なんだ!!
混乱している俺の耳に、モラーハルトの大声が響いた。
「マリアンヌ・ガセット!僕は本日この時を持って貴様との婚約を破棄する!」
君の髪に触れてしまったあの日から、俺は完全に自分を止めることが出来なくなった。
そして、姿を隠した卑怯な俺は再び君に触れた。
しっとりと吸い付くようなその髪に。
ふくよかで柔らかなその肩に。
なだらかなまろいその背中に。
触れた指先に感じる甘い痺れが、恐れも、躊躇いも、罪悪感さえも覆い隠してしまう。
もっと、もっと。
君の躰のあそこにも、ここにも触れてみたい。
俺の欲望はどんどんエスカレートして、夜になれば夢の中で大爆発を起こす。
だから、きっと罰が当たったんだ。
「見目の悪い殿方に嫁ぐくらいなら、一生独身で構いませんわ。例えば今のお話にあった『第一王子殿下』ですか?そんな方に嫁ぐなんて死んでもお断りですもの」
俺を拒絶する君の声が冷たく響く。
俺の体がぐらりと揺れた。
心がぐちゃぐちゃに引き裂かれたように痛み、もう立っていることも出来ない。
「だからお断りと申しておりますでしょう!発狂して死んでしまう程に醜悪な第一王子に嫁ぐくらいなら舌を噛みちぎって自害した方がマシですわ!!」
絶望が津波のように押し寄せて、その波はもう二度と引くことは無い。
俺の頬を止めどなく涙が流れる。
俺に傷付く資格など、泣く資格などありはしないのに。
‥‥ああ、もう、死のう。
一方的に君を見つめて、付け回し、その躰に触れた。
学園で孤立するように誘導し、真っ黒の嫉妬と独占欲でその姿に喜んだ。
そして夜になれば君の柔らかさを思い出し、夢の中で穢す。
何度も、何度も、何度も。
君への想いは、歪み、淀み、狂気で覆い尽くされた。
こんな俺が生きているなど、許されるはずがない。
そして俺は、あの日から死んだ。
自室のベッドに横たわり、目を閉じる。
このまま死のう、と。
ああ、だが、しかし。
忌々しい俺のこの体は。
食事を取らずともエネルギーは勝手に魔力で補給され、垂れ流した排泄物は勝手に清浄魔法がかかる。
自分の首を切りつけてみれば治癒魔法が発動する。
俺は‥‥死ぬことすら出来ない。
だからこうやってただベッドに横たわり、生きたまま死んでいるのだ。
コンコン
部屋の扉をノックする音が聞こえた気がした。
俺はベッドに横たわったまま微動だにしない。
何故なら死んでいるからだ。
コンコンコン!
さっきよりも強くはっきりと聞こえる音。
「‥‥誰だ」
何処の誰が『忌み王子』の部屋を訪ねるというのだ。
きっとこれは幻聴だ。
死んでいるのに幻聴を聞くなど。
俺はこの後に及んでまだ死にたくないと願っているのか。
なんと浅ましいことか。
「国王陛下よりお手紙にございます。ご確認ください」
は?幻聴ではないのか?
手紙?
父からだと?
俺はふらりとベッドから下りて、ドアと床の隙間から差し込まれた真っ黒の封筒を手に取った。
『明日の午前10時、世の謁見室に参ぜよ 正装の必要は無いが、必ず仮面を付けて参れ』
俺を恨み憎んでいる父が、俺に何の用があるというのか。
ああ、そうか。
俺はいよいよこの王宮から追放されるのだ。
そうだ、それでいい。
うんと、うんと遠い所に飛ばされてしまえば良い。
瞬間移動魔法の使えない、例えば地獄の底にでも飛ばして貰いたいが、それはさすがの国王でも無理だろう。
それでもいい。
とにかく俺はここから遠く遠く離れた何処かで一人、生きながら死んでいく。
それが、死ぬことすら出来ない俺が出来る、マリアンヌに対する唯一の償いだ。
そうして翌日、訪れた国王の謁見室。
国王である父が壇上の玉座に座り、その脇にモラーハルトとピンク女が並んで立っている。
王妃の姿はない。
段下を固めるのはこの国の中枢を担う者達だろう。
王城でよく見かける面々がズラリと揃っていた。
「挨拶は要らぬ」
まるで汚物でも見るかのようにそう言って、部屋の隅に向かって顎をしゃくる父。
見目の良い王宮騎士に両脇を固められて、父の顎が差したその場所に立たされた。
コンコン
「失礼致します。マリアンヌ・ガセット公爵令嬢が到着なされました」
「入れ!」
‥‥‥は?マリアンヌ?
何故この場にマリアンヌが来るんだ。
これは俺の追放を言い渡すための招集だろう?!
マリアンヌには関係ないじゃないか!!
正装したマリアンヌが壇上の三人に向かって、それはそれは美しいお嬢の礼をする。
久しぶりに目にするマリアンヌに、俺は激しく動揺して全く頭が回らない。
何だ?
何なのだ?
今ここで行われているこれは、一体何なんだ!!
混乱している俺の耳に、モラーハルトの大声が響いた。
「マリアンヌ・ガセット!僕は本日この時を持って貴様との婚約を破棄する!」
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