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20 デメルフリード
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デメルフリード視点
君と初めて会ったあの日。
俺は神に問うた。
─見ているだけなら許してくれますか?
そして誓った。
─絶対に触れたりしません。
それなのに、俺はそれを破った。
君に対する欲望はどんどん膨れ上がり、制御できなくなってしまった。
歪みきり、狂いきったこの愛で、君を縛りつけ、閉じ込めてしまいたいと。
君の全てを自分のものにしてしまいたいと。
地獄に落ちても構わない、と。
そんな俺に神が下したのは、地獄の業火でもこの身の消滅でもなくて‥‥‥
夢のような、君からの愛の告白だった。
「わたくしは6年前、あの北のガゼボで貴方と出会った瞬間、恋に落ちたのです。
その衝撃は、わたくしの全てを作り替えてしまうほどに強烈なものでした。
あの日、あの時、あの場所で貴方に出会えたこと。
それはわたくしがこの世界で生きる意味となりました。
いつか貴方と結ばれること、それだけを目標にこのクソのような世界を生きてきたのです。
そのお姿を見ることが出来なくとも、貴方はわたくしを見ていて下さっている。
貴方の存在を感じる瞬間、貴方の大きな手がわたくしに触れる瞬間が何よりも嬉しかったのです。
それだけでわたくしは頑張る事が出来ました。
デメルフリード様、わたくしは貴方が好きです。
大好きなんです!
どうしても、どうしても、貴方でなければ嫌なんです!!
だからお願い、どうか貴方もわたくしを好きになって。
わたくしは絶対に貴方を幸せにすると誓います。
だから、どうか、どうか、わたくしを愛してくださいませんか!!!」
美しい君が、醜悪な俺に愛を乞う。
あの日、北のガゼボで出会って恋に落ちたと。
コソコソと、隠れて見つめて付けまわし、君の許可無くその躰に触れる。
それが何より嬉しかったと。
そんな俺のために頑張れたと。
俺と結ばれることが、この世界で生きる希望であったと。
俺のことが好きだと。
俺に愛して欲しい、と。
これは夢だ。
これは幻だ。
それでもいい。
今はこの幸せにゆらゆらと漂い、静かにこの身を委ねよう。
苦しみも、悲しみも、怒りも憎しみも絶望も。
己の内の、負の感情を全てを放り投げて、今はただ、君の愛に酔いしれ、受け止めよう。
ああ、なんて幸せな夢だろう‥‥
ポロリ、ポロリと、俺の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「デメルフリード様、その涙が悲しみ、苦しみの涙ならば今すぐに泣き止んで下さいませ」
ああ、無理だよ。
だってこの甘い涙は勝手に溢れてくるんだ。
勝手にこぼれ落ちるんだ。
俺の顔を真っ直ぐに見つめたマリアンヌが、眉を下げて微笑んだ。
「でも、それが幸せの涙であるならば‥‥」
そして君は美しい笑顔のそのままに、大粒の宝石のような涙を落とした。
「わたくしも一緒に泣きますわ」
そう言って俺の胸に飛び込んできた。
「うあぁぁぁーーん!!デメルフリード様ぁぁぁ!!!!」
俺の胸に頭を埋め、大声で泣いたマリアンヌ。
そして、醜く痩せた背中に手を回し、ぎゅっと抱きついた。
その確かな感触に、生まれて初めて俺の視界が鮮やかに色づいて、この幸せは夢ではないのだと実感した。
「‥‥マリ‥アンヌ、ああ、マリアンヌ。マリアンヌ!!俺も君が好きだ!6年前のあの日から、ずっと、ずっと‥‥!!君が、君の存在だけが俺を生かしていた!」
強く、強く抱きしめ返した俺の腕は、もう、震えたりはしていない。
「愛してる、マリアンヌ、愛してるんだ、絶対に離さない!!」
「はいっ、わたくしも貴方を絶対に離しませんわ!!デメルフリード様、愛しています‥‥!!」
俺は、マリアンヌに愛されていた‥‥
そして俺とマリアンヌは未来永劫愛し合う。
こんなに、こんなに幸せなことがあるのか!!!
ああ。
神様。
あなたに誓う。
俺は絶対にマリアンヌを悲しませたりはしない。
生涯マリアンヌを愛し、慈しみ、幸せにする。
今度こそ、その誓いを違えはしない。
✳✳✳✳✳✳✳✳✳
ガタン、と音を立て、オンボロ馬車が停まった。
‥‥‥?
辺りを見回すと鬱蒼と木が生い茂る林の中だ。
しまった!
幸せに酔いしれて油断していた!!
マリアンヌを背の後ろに隠し馬車の小窓から見ると、黒いマントを目深に被った二人の御者が御者席から下りてこちらに歩いてくる。
何だこいつらは!
そうか、国王の手の者か!!
きっとどこぞの森の中で、人知れず俺とマリアンヌを亡き者にせよと命を受けているのだろう!!
マリアンヌに危害を加えるならば容赦はしない!
俺とマリアンヌの幸せを邪魔をする者は許さない!
殺してやる。
骨すら残らぬ程の消し炭にしてくれる!!!
俺は右手の人差し指を立て、その指先に魔力を集めた。
君と初めて会ったあの日。
俺は神に問うた。
─見ているだけなら許してくれますか?
そして誓った。
─絶対に触れたりしません。
それなのに、俺はそれを破った。
君に対する欲望はどんどん膨れ上がり、制御できなくなってしまった。
歪みきり、狂いきったこの愛で、君を縛りつけ、閉じ込めてしまいたいと。
君の全てを自分のものにしてしまいたいと。
地獄に落ちても構わない、と。
そんな俺に神が下したのは、地獄の業火でもこの身の消滅でもなくて‥‥‥
夢のような、君からの愛の告白だった。
「わたくしは6年前、あの北のガゼボで貴方と出会った瞬間、恋に落ちたのです。
その衝撃は、わたくしの全てを作り替えてしまうほどに強烈なものでした。
あの日、あの時、あの場所で貴方に出会えたこと。
それはわたくしがこの世界で生きる意味となりました。
いつか貴方と結ばれること、それだけを目標にこのクソのような世界を生きてきたのです。
そのお姿を見ることが出来なくとも、貴方はわたくしを見ていて下さっている。
貴方の存在を感じる瞬間、貴方の大きな手がわたくしに触れる瞬間が何よりも嬉しかったのです。
それだけでわたくしは頑張る事が出来ました。
デメルフリード様、わたくしは貴方が好きです。
大好きなんです!
どうしても、どうしても、貴方でなければ嫌なんです!!
だからお願い、どうか貴方もわたくしを好きになって。
わたくしは絶対に貴方を幸せにすると誓います。
だから、どうか、どうか、わたくしを愛してくださいませんか!!!」
美しい君が、醜悪な俺に愛を乞う。
あの日、北のガゼボで出会って恋に落ちたと。
コソコソと、隠れて見つめて付けまわし、君の許可無くその躰に触れる。
それが何より嬉しかったと。
そんな俺のために頑張れたと。
俺と結ばれることが、この世界で生きる希望であったと。
俺のことが好きだと。
俺に愛して欲しい、と。
これは夢だ。
これは幻だ。
それでもいい。
今はこの幸せにゆらゆらと漂い、静かにこの身を委ねよう。
苦しみも、悲しみも、怒りも憎しみも絶望も。
己の内の、負の感情を全てを放り投げて、今はただ、君の愛に酔いしれ、受け止めよう。
ああ、なんて幸せな夢だろう‥‥
ポロリ、ポロリと、俺の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「デメルフリード様、その涙が悲しみ、苦しみの涙ならば今すぐに泣き止んで下さいませ」
ああ、無理だよ。
だってこの甘い涙は勝手に溢れてくるんだ。
勝手にこぼれ落ちるんだ。
俺の顔を真っ直ぐに見つめたマリアンヌが、眉を下げて微笑んだ。
「でも、それが幸せの涙であるならば‥‥」
そして君は美しい笑顔のそのままに、大粒の宝石のような涙を落とした。
「わたくしも一緒に泣きますわ」
そう言って俺の胸に飛び込んできた。
「うあぁぁぁーーん!!デメルフリード様ぁぁぁ!!!!」
俺の胸に頭を埋め、大声で泣いたマリアンヌ。
そして、醜く痩せた背中に手を回し、ぎゅっと抱きついた。
その確かな感触に、生まれて初めて俺の視界が鮮やかに色づいて、この幸せは夢ではないのだと実感した。
「‥‥マリ‥アンヌ、ああ、マリアンヌ。マリアンヌ!!俺も君が好きだ!6年前のあの日から、ずっと、ずっと‥‥!!君が、君の存在だけが俺を生かしていた!」
強く、強く抱きしめ返した俺の腕は、もう、震えたりはしていない。
「愛してる、マリアンヌ、愛してるんだ、絶対に離さない!!」
「はいっ、わたくしも貴方を絶対に離しませんわ!!デメルフリード様、愛しています‥‥!!」
俺は、マリアンヌに愛されていた‥‥
そして俺とマリアンヌは未来永劫愛し合う。
こんなに、こんなに幸せなことがあるのか!!!
ああ。
神様。
あなたに誓う。
俺は絶対にマリアンヌを悲しませたりはしない。
生涯マリアンヌを愛し、慈しみ、幸せにする。
今度こそ、その誓いを違えはしない。
✳✳✳✳✳✳✳✳✳
ガタン、と音を立て、オンボロ馬車が停まった。
‥‥‥?
辺りを見回すと鬱蒼と木が生い茂る林の中だ。
しまった!
幸せに酔いしれて油断していた!!
マリアンヌを背の後ろに隠し馬車の小窓から見ると、黒いマントを目深に被った二人の御者が御者席から下りてこちらに歩いてくる。
何だこいつらは!
そうか、国王の手の者か!!
きっとどこぞの森の中で、人知れず俺とマリアンヌを亡き者にせよと命を受けているのだろう!!
マリアンヌに危害を加えるならば容赦はしない!
俺とマリアンヌの幸せを邪魔をする者は許さない!
殺してやる。
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