クソゲーで美醜逆転の世界に転生ですか?!イケメン(化け物)はお断り!何としても醜男(超絶イケメン)と結ばれてみせます!

むぎてん

文字の大きさ
21 / 32

21

しおりを挟む
「だだだ駄目です!!!」

わたくしは慌ててデメルフリード様の人差し指を握る。

「マリアンヌ、大丈夫だ、目を閉じていろ。あんな者達など一瞬で消してやる」

ふわぁぁぁあああ!!
怒りに目が据わったデメルフリード様、素敵!!

‥‥って、ずっきゅんときめいている場合ではない!
このままではあの二人が殺されていまいますわ!!!

「お、落ち着いて下さいませ!とにかく、ちょっと待ってて下さい!!!」

そう言ってデメルフリード様の背中から抜け出して、馬車から飛び降りた。

その後ろをデメルフリード様が慌てて降りると、マントの二人に駆け寄ろうとするわたくしの手を引いて、威圧的な声で叫んだ。

「貴様達は王家の影だろう!マリアンヌに危害を加えるならば容赦はしない!殺されたく無ければ今すぐ去れ!!!」

被っていたマントを脱ぎ捨てた二人が勢いよくわたくしの足下に跪いた。

「「お嬢さま!!!!」」

「マリアンヌお嬢さまっ!!!やっと、やっと、積年の恋が実ったのですね!おめでとうございます!!!」

さすが美人のフルール。
涙でぐしゃぐしゃの顔も可愛いですわ。

「お嬢さま、おめでとうございます!僕はこの日が来ることをどんなに待ち望んでいたか‥‥う、ううう」

もう!ファスグリーまで!!
イケメンは泣いてもやっぱりイケメンですわね。


そんな二人の泣き顔に、わたくしもまた喜びと共に涙が込みあげてどうしようもない。

「うわーん!フルール!ファスグリー!ありがとう!あなたたちがいてくれたお陰よ!」

「「いえ!全てお嬢さまが努力なさった結果です!」」

「ああ、フルール、ファスグリー、あなたたちはこれからもずっと一緒。あの日の宣言通り、みんなで幸せになりましょうね!!」

またぎゅうっと抱きしめ合って、喜びを噛みしめ合った。


「マ、マリアンヌ、この者達は一体‥‥」

あ!忘れてましたわ!
この二人をデメルフリード様に紹介しなければ!

二人は涙を拭って立ち上がり、わたくしのやや後ろに立ち並んだ。

「紹介いたしますわ。この二人はファスグリーとフルール。双子の兄妹です。彼らはわたくしの癒やしであり、親友であり、腹心ですわ」

わたくしの言葉に二人がアーモンド型の黒目からドバーッと涙を流した。

もう、二人ともホント涙もろいんだから!

「癒やし?腹心?これらが?!」

デメルフリード様が眉間にしわを寄せ、目を大きく見開いて二人を見る。

そうね、この世界では二人はかなりの醜人な
のだから、驚くのも無理はありませんわ。

「ええ、彼らはこの6年、ずっとわたくしの側にいて応援してくれていたのです。そして今日の断罪劇に備えて一緒に計画を練ってくれました。どんなパターンで断罪されようとも万に一つの抜けがないよう、それはもう綿密で完璧な計画を」

そう言うと、デメルフリード様はその険しいお顔をホッと緩めて二人を見た。

「そ、そうか。マリアンヌの敵でないならいいんだ。二人とも、先ほどは乱暴な事を言ってすまなかった」

「いえ、もったいないお言葉。貴方様はお嬢さまを守ろうとなさっただけです。お気になさらないで下さい」

ファスグリーはそう言ってデメルフリード様の前から三歩ほど後ろに下がると、フルールと共に跪いて頭を垂れた。

「「元ビシュー王国第一王子殿下デメルフリード様。ようやっとお目もじ叶いましたこと、至極光栄の極みに存じます」」

「わたくしはマリアンヌお嬢さまの腹心の執事、ファスグリーにございます」

「わたくしはマリアンヌお嬢さまの腹心の侍女、フルールでございます」

おお!さすがわたくしの腹心ですわ!
口上も姿勢も完璧!

「い、いや。俺は元々王子などと呼ばれる立場ではない。頭を上げてくれ」

デメルフリード様の言葉に二人は堂々と顔を上げた。

醜いと蔑まれ、顔を背けられて生きていた二人。
前髪を長く伸ばして顔を隠し、いつも俯いていた。
しかしこの6年で二人は、自分の顔を隠す事をしなくなった。

わたくしが許さなかったのだ。
わたくしの前で、その美しい顔を恥の如く隠すことを。





「お嬢さま、取り敢えずお着替えをしましょう。ここからサムーイ地方までは馬車で2ヶ月ほど掛かります。今お召しになっているドレスのままではお宿に入るのも大変です」

ファスグリーが大きな布を木に括り付けて簡易着替え室を作ってくれた。

「そうね、じゃあフルール、手伝ってくれる?」

「もちろんです」

「ま、待て!!ここで着替えるつもりか?!」

簡易着替え室に行こうとするわたくしを、デメルフリード様が慌てて止める。

「ええ。フルールが手伝ってくれますもの。大丈夫ですわ。」

「だだだ駄目だ!!もしも誰かに見られたらどうする!とにかく着替えはサムーイ地方の邸に着いてからだ!」

「え?でも二ヶ月もこの格好のままではさすがに‥‥」

「いや大丈夫だ、二ヶ月もかからない。どれほど遠かろうと俺の転移魔法なら馬車ごと一瞬だ」


一台詞前の慌てぶりなど一瞬で消え去り、自信たっぷりのドヤ顔で口角を上げるデメルフリード様。

きゃーーーーーーっっっ!!!
デメルフリード様!!
貴方、本気でわたくしの目を潰す気ですわね?!

今ですわ‥‥
今こそ正にあのセリフを叫ぶ時ですわ!!


あああああ!!!
目が!!目がーーーーーーーっっ!!!

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?

夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。  けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。  思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。  ──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……? ※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

『推しに転生したら、攻略対象が全員ヤンデレ化した件』

春夜夢
ファンタジー
「推しキャラが死ぬバッドエンドなんて認めない──だったら、私が推しになる!」 ゲーム好き女子高生の私が転生したのは、乙女ゲームの中の“推しキャラ”本人だった! しかも、攻略対象たちがみんなルート無視で私に執着しはじめて……!? 「君が他の男を見るなんて、耐えられない」 「俺だけを見てくれなきゃ、壊れちゃうよ?」 推しキャラ(自分)への愛が暴走する、 ヤンデレ王子・俺様騎士・病み系幼なじみとの、危険すぎる恋愛バトルが今、始まる──! 👧主人公紹介 望月 ひより(もちづき ひより) / 転生後:ヒロイン「シエル=フェリシア」 ・現代ではゲームオタクな平凡女子高生 ・推しキャラの「シエル」に転生 ・記憶保持型の転生で、攻略対象全員のヤンデレ化ルートを熟知している ・ただし、“自分が推される側”になることは想定外で、超戸惑い中

ウッカリ死んだズボラ大魔導士は転生したので、遺した弟子に謝りたい

藤谷 要
恋愛
十六歳の庶民の女の子ミーナ。年頃にもかかわらず家事スキルが壊滅的で浮いた話が全くなかったが、突然大魔導士だった前世の記憶が突然よみがえった。  現世でも資質があったから、同じ道を目指すことにした。前世での弟子——マルクも探したかったから。師匠として最低だったから、彼に会って謝りたかった。死んでから三十年経っていたけど、同じ魔導士ならばきっと探しやすいだろうと考えていた。  魔導士になるために魔導学校の入学試験を受け、無事に合格できた。ところが、校長室に呼び出されて試験結果について問い質され、そこで弟子と再会したけど、彼はミーナが師匠だと信じてくれなかった。 「私のところに彼女の生まれ変わりが来たのは、君で二十五人目です」  なんですってー!?  魔導士最強だけどズボラで不器用なミーナと、彼女に対して恋愛的な期待感ゼロだけど絶対逃す気がないから外堀をひたすら埋めていく弟子マルクのラブコメです。 ※全12万字くらいの作品です。 ※誤字脱字報告ありがとうございます!

美醜逆転の世界に間違って召喚されてしまいました!

エトカ
恋愛
続きを書くことを断念した供養ネタ作品です。 間違えて召喚されてしまった倉見舞は、美醜逆転の世界で最強の醜男(イケメン)を救うことができるのか……。よろしくお願いします。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

処理中です...