クソゲーで美醜逆転の世界に転生ですか?!イケメン(化け物)はお断り!何としても醜男(超絶イケメン)と結ばれてみせます!

むぎてん

文字の大きさ
24 / 32

24

しおりを挟む
時は少し遡り、断罪後の謁見室。



「モラーハルト殿下!ミリヨン様!おめでとうございます!」

「これでこの国の未来も安泰ですな!」

「あの賢しらに振る舞う性悪のマリアンヌなどより、ミリヨン様の方がずっとこの国の国母となられるに相応しい!!」

口々に喜びを口にする臣下たち。
段下に降りてそれらと手を取り肩を抱き合って喜ぶモラーハルトとミリヨン。


そんな光景を壇上の玉座から目を細めて眺めているのは、この国の国王であるゴディバルト・ビシューである。

その瞳は先ほどまでと打って変わり、驚くほどに冷たく光っている。

ゴディバルトはニヤリと口角を上げて、ゆっくりと人差し指を立てた。
そして、

「解除」

その指をパチンと鳴らした瞬間。


段下で喜びを爆発させていた者たちの動きが固まった。

「「「「‥??‥‥‥‥‥?‥‥」」」」

何が起きたのかと、キョロキョロと周りを見渡して‥‥‥

一人、また一人と膝から崩れ落ちていく。


「あ、あ、あ‥‥。わ、わたしは一体何を‥‥いや、全て、全て憶えている‥‥」

「何故あれほど美しくも聡明なマリアンヌ様にあのような酷いことを‥‥」

「‥‥ああ!我々は何と言うことを!!!」


皆が己の頭を鷲づかみ、その頭を床に打ち付けて泣き叫ぶ。

「「「「ああああああああああ!!」」」」


そんなカオスな阿鼻叫喚の中、まるで訳が分からない、とでも言うようにキョトンとアホ面を晒しているのは言わずもがな。
モラーハルトとミリヨンである。


ゴディバルトがミリヨンを冷たく見据え、口を開く。

「ミリヨン・ドブール。お主、魅了の魔法を行使していたであろう?」

「は?え?ちちち違う!王様、わたしそんなことしてません!本当です!」

ミリヨンがゴディバルトの瞳を見つめてパチパチと瞬きをする。

「ふ、そんな卑小な魔法なんぞで世を誑かせると思うてか」

「え、え、え、何で、何でよ!!違う、これは何かの間違いです!」

「黙れ!女狐の汚らわしい声など聞きとうないわ!今すぐにこの小娘を捕縛せよ!!!」

魅了魔法は解けたとはいえ、まだ上手く頭が回転していない王宮騎士たちが戸惑いながらもミリヨンの両手を後ろ手に回して捕縛した。

「父上!!これは一体何の茶番ですか!何故僕のミリヨンが捕縛されなければならないのですか!!!」

ゴディバルトは眉間を揉みながら深いため息を吐く。
モラーハルトという人間は、魅了の魔法など関係なく真正の暗愚なのだ、と。

「精神干渉の魔法を使える魔力を持つ者は、貴族、平民に関わらず必ず王家に名乗り出なければならない、という法律をお主は知らぬのか?これまで王太子として何を学んでおった」

「は?法律?えっと、それは‥‥いえ!そんなことよりミリヨンは僕の妻となる、ひいては王妃となる身!そんな些細なことで捕縛など!」

「そ、そうよそうよ!!あたしは王妃になるのよ!人心を掴む魔法が使えるのはいいことでしょ?!あたしが王妃になればどんな奴も王家に逆らったり出来ないし!」

ミリヨンが我が意を得たりと得意げに反論するが、ゴディバルトは冷たい声で一蹴する。

「王家に報告もせず、多数の者を魅了魔法で唆し、娼婦の如く股を開く。そして己の意のままに操り欲望を叶えんとする女狐が。そのような者が王妃だと?我が王家も舐められたものよ」

「な、何よ!そこまで言わなくたっていいじゃない!あたしは自分の持っている魔力を軽ーく使っただけ!引っかかる方が悪いのよ!そんくらいで縛り上げるとか酷い!とにかくこの縄を解いてよ!」

「何を言っておる。貴様は処刑だ。王家に名乗り出ず精神干渉の魔法を使った者は、問答無用で処刑と決まっておるのだ」

「しょしょしょ処刑!?嘘でしょ!そんなの知らないわよっ!!!!」

突然の死刑宣告に驚き大声を出すミリヨンを庇うように、モラーハルトが前に出る。

「父上、ミリヨンは何も知らなかったのです!どうか許してあげてください!優しい父上なら僕の大切なミリヨンにそんなことはしないはずです!!処刑などと、冗談もほどほどにして下さい!!」

「冗談?お前には世が冗談を言っておるように見えるのか?全く、何処まで愚鈍を晒せば気が済むのだ」

いつどんなときも優しく声を荒げることなど無かった父の蔑むような冷たい態度に、モラーハルトは呆然とした。

「‥‥ち、父上?」

「黙れ!!!貴様に父と呼ばれる筋合いはないわ!!二度と儂を父と呼ぶでない!!汚らわしい!!」

「な、何を仰ってるのですか!母上!何とか仰ってください!母上!って、あれ?母上は何処に‥‥」

何が何だか解らぬ状況に、キョロキョロと母親を探すモラーハルト。

今日は始めから王妃の席は空っぽだったというのに、そんなことも気づいていなかったとは。

「アレはもうこの世には居らぬ。先日毒杯を授けたからな。国民にも近いうちに公表されるであろう」

「は?毒杯?!何故!母上が何をしたというのですか!嘘だと言ってください父上!!」

「父と呼ぶなと申したであろう。お前は汚らわしい偽妃と他国の男娼の間に出来た子だ。あの女は男娼の子と知りながら貴様を産み、儂の子と偽った。毒杯を授けるに相応しい罪であろう?」

「ま、まさか!僕は父上と母上の子だ!この国の王太子だ!未来の国王だ!!」

ゴディバルトはフン、と一つ鼻を鳴らすと

「モラーハルト、ひとつ良いことを教えてやろう。このビシュー王家の血を継ぐ者は、生まれ落ちたその瞬間から強い魔力を持っている。それは人知を超えるほどの膨大な魔力」

「ち‥‥‥違‥‥」

そして続ける。

「しかしお前は魔力を持たない。この国の者であれば平民が持つ程度の魔力すらも。それが全ての答えだ」

「違う!違う!違う!何かの間違いだ!僕はちゃんと魔力を持ってる!今はまだ使えないだけだ!僕は父上の子で間違い無いんだ!!!」

あまりの動揺に激しく首を振るモラーハルト。

「世の血を継ぐのはお前ではない。儂の愛する息子は、最愛の元妃アンジェリカがその命をかけて産んでくれたデメルフリードただ一人!!」

「う、嘘だ!アレは醜悪の『忌み王子』だ!生まれた瞬間に母親を殺したほどに醜悪な王子だ!父上に愛されるのは僕一人!これまでもこれからもずっと!この美しい容姿を持つ僕だけが父上から愛されるんだ!!」
 
ゴディバルトは、わめき散らすモラーハルトに地の底から湧き出るような冷たい声で言い捨てる。

「この16年間、貴様を愛したことなどただの一度もないわ」

そして、王宮騎士に向かって命令した。

「この偽王子を捕らえよ!!」




お読みくださってありがとうございます!!
こんなに沢山の方に読んで頂けるなんて思ってもみなく‥‥
感謝感激の雨あられでございます!

次回は、国王視点になります。
引き続き読んで頂けると嬉しいです(ゝω・)
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?

夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。  けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。  思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。  ──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……? ※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

『推しに転生したら、攻略対象が全員ヤンデレ化した件』

春夜夢
ファンタジー
「推しキャラが死ぬバッドエンドなんて認めない──だったら、私が推しになる!」 ゲーム好き女子高生の私が転生したのは、乙女ゲームの中の“推しキャラ”本人だった! しかも、攻略対象たちがみんなルート無視で私に執着しはじめて……!? 「君が他の男を見るなんて、耐えられない」 「俺だけを見てくれなきゃ、壊れちゃうよ?」 推しキャラ(自分)への愛が暴走する、 ヤンデレ王子・俺様騎士・病み系幼なじみとの、危険すぎる恋愛バトルが今、始まる──! 👧主人公紹介 望月 ひより(もちづき ひより) / 転生後:ヒロイン「シエル=フェリシア」 ・現代ではゲームオタクな平凡女子高生 ・推しキャラの「シエル」に転生 ・記憶保持型の転生で、攻略対象全員のヤンデレ化ルートを熟知している ・ただし、“自分が推される側”になることは想定外で、超戸惑い中

ウッカリ死んだズボラ大魔導士は転生したので、遺した弟子に謝りたい

藤谷 要
恋愛
十六歳の庶民の女の子ミーナ。年頃にもかかわらず家事スキルが壊滅的で浮いた話が全くなかったが、突然大魔導士だった前世の記憶が突然よみがえった。  現世でも資質があったから、同じ道を目指すことにした。前世での弟子——マルクも探したかったから。師匠として最低だったから、彼に会って謝りたかった。死んでから三十年経っていたけど、同じ魔導士ならばきっと探しやすいだろうと考えていた。  魔導士になるために魔導学校の入学試験を受け、無事に合格できた。ところが、校長室に呼び出されて試験結果について問い質され、そこで弟子と再会したけど、彼はミーナが師匠だと信じてくれなかった。 「私のところに彼女の生まれ変わりが来たのは、君で二十五人目です」  なんですってー!?  魔導士最強だけどズボラで不器用なミーナと、彼女に対して恋愛的な期待感ゼロだけど絶対逃す気がないから外堀をひたすら埋めていく弟子マルクのラブコメです。 ※全12万字くらいの作品です。 ※誤字脱字報告ありがとうございます!

美醜逆転の世界に間違って召喚されてしまいました!

エトカ
恋愛
続きを書くことを断念した供養ネタ作品です。 間違えて召喚されてしまった倉見舞は、美醜逆転の世界で最強の醜男(イケメン)を救うことができるのか……。よろしくお願いします。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

処理中です...