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25 ゴディバルト国王
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ゴディバルト国王視点
儂の名はゴディバルト・ビシュー。
このビシュー王国の国王である。
モラーハルトとミリヨンがワーワーと喚き散らしながら騎士に引き摺られるように連れて行かれるのを今、万感の思いで見ている。
「これは何かの間違いだ!こんなのは間違ってる!!やめろ!離せ!僕は王太子だぞ!次期国王の命令が聞けないのか!!父上!!助けて下さい!父上ーー!!!」
「ちょっと痛い!!離してよ!あたしは王妃になるのよ!あんたたち許さないから!みんな処刑にしてやる!離してよ!ちくしょう離せぇぇぇ!!」
儂は全てが計画通りに成ったことに安堵の息を吐いた。
ああ、やっと今日という日を迎えることが出来た。
愛する妻アンジェリカがその命を持ってデメルフリードを産んでくれたあの日。
儂は亡きアンジェリカに、そして己に誓ったのだ。
何としても愛する息子、デメルフリードを守ると。
今から18年前。
儂の愛するアンジェリカは出産の際に儚くなってしまった。
通常、出産した女性はその場で己に癒やし魔法を掛ける。
痛みや体力の消耗により失神などした場合は数名の立会人が本人の代わりに癒やし魔法を掛けてやる、というのが慣例だ。
だが、アンジェリカの立ち会いの者は、アンジェリカが産んだ赤ん坊のあまりの醜悪さに腰を抜かした。
そして事もあろうか、大量出血で気を失っているアンジェリカをその場に残して逃げ出したのだ。
儂がアンジェリカの元に駆けつけたとき、既にアンジェリカは大量の血を失い、事切れていた。
ほんの少しでも息があれば儂の魔法で助けることが出来たのに‥‥
完全に事切れてしまってはどうすることも出来ない。
立会人などに任せず自分が付いていれば‥‥
儂は己を責めた。
愛するアンジェリカを亡くした悲しみと後悔で、気が狂いそうなほどに泣き叫んだ。
そして世にも醜悪な容貌を持って生まれた我が息子、デメルフリードを何としても守ると心に決めたのだ。
後に、
『妃は自分が産んだ子のあまりの醜悪さに気が触れてショック死したらしい』
などという根も葉もない噂を聞いたときは怒りで体が震えた。
儂のアンジェリカが我が子を見てショック死などするはずがない!
アンジェリカという妻は、優しく聡明で、全ての者を慈しむ事の出来る素晴らしい女性だったのだ!
しかし、デメルフリードをその目に映した者は決まって腰を抜かし、泣き喚き、嘔吐する。
『母親を死に至らしめるほどに醜悪な見目をした王子など、世継ぎに相応しくない』
そんな言葉があちらこちらで囁かれるようになるのに時間はかからなかった。
そして、いつの間にか儂と愛するアンジェリカの息子には『醜悪の忌み王子』という二つ名が付いていた。
『陛下、この偉大なるビシュー王国の世継ぎが『醜悪の忌み王子』ではこの国は滅びてしまいますぞ!今すぐに新しい妃をお迎えなされませ!そして、真のお世継ぎに相応しいお子をつくるのです!』
高位貴族の臣下どもが喚きたてる。
儂の妃は未来永劫アンジェリカだ!
そして愛する息子はデメルフリードただ一人!
勝手なことを申すでない!
そう言ってやりたい気持ちをグッと堪える。
何故ならその頃既にデメルフリードは何度も暗殺未遂にあっていたのだ。
愚かな臣下どもは、新しい世継ぎを欲するあまり『醜悪の忌み王子』を亡き者しようとした。
王家の血を継ぐ者は、毒を盛られようが、その首を掻き切られようが死ぬことはない。
仮に意識を失っていたとしても勝手に治癒魔法が発動する。
王家の血を持つ者は老衰以外で死ぬことを許されないのだ。
その事実を知らぬ臣下どもは、あの手この手でデメルフリードを殺そうと躍起になった。
いくら死ぬことはないといっても毒を飲めば苦しみにのたうち回り、剣で切られれば痛みにのたうち回る。
まだ一歳にも満たない赤ん坊のデメルフリードは、暗殺未遂の度に想像を絶するほどの苦しみと痛みをその身に受けた。
何度も、何度も。
デメルフリードは儂以外の全ての者から嫌悪されている。
母殺しという汚名を着せられて、不名誉な二つ名で呼ばれ、死んで欲しいと願われる。
世にも醜悪な容貌を持つデメルフリードはこの王家に居る限り、たとえ国王となってもこの苦しみから逃れることは出来ない。
デメルフリードにとって敵だらけの王家。
こんなところから愛する息子を解放してやりたい。
儂は一人密かに、デメルフリードを解放してやるための計画を立てた。
誰でもいいから取り敢えず側妃を迎える。
そして、側妃との間に子を成して溺愛し、
デメルフリードには冷たく当たる。
早々に第二王子を王太子と定め、デメルフリードは成人と共に王家から追放すると嘯く。
『醜悪の忌み王子』など、暗殺する価値もないと思わせるのだ。
デメルフリードにはつらい思いをさせるが、暗殺による痛みと苦しみにのたうち回るより、他人から死を願われるより、一生王家に縛られるより、ずっとずっといいはずだ。
ああ、デメルフリード。
待っておれ。
いつか儂がお前を全ての苦しみから解放してやる。
だから、それまで耐えるのだ。
辛ければ儂を恨めばよい、
悲しければ儂を憎めばよい。
しかし、いつかその時が来たら、儂はお前に心から謝り、全てを打ち明けよう。
儂が心から愛しておるのは、お前とお前を産んでくれた亡きアンジェリカだけだ、と。
儂の名はゴディバルト・ビシュー。
このビシュー王国の国王である。
モラーハルトとミリヨンがワーワーと喚き散らしながら騎士に引き摺られるように連れて行かれるのを今、万感の思いで見ている。
「これは何かの間違いだ!こんなのは間違ってる!!やめろ!離せ!僕は王太子だぞ!次期国王の命令が聞けないのか!!父上!!助けて下さい!父上ーー!!!」
「ちょっと痛い!!離してよ!あたしは王妃になるのよ!あんたたち許さないから!みんな処刑にしてやる!離してよ!ちくしょう離せぇぇぇ!!」
儂は全てが計画通りに成ったことに安堵の息を吐いた。
ああ、やっと今日という日を迎えることが出来た。
愛する妻アンジェリカがその命を持ってデメルフリードを産んでくれたあの日。
儂は亡きアンジェリカに、そして己に誓ったのだ。
何としても愛する息子、デメルフリードを守ると。
今から18年前。
儂の愛するアンジェリカは出産の際に儚くなってしまった。
通常、出産した女性はその場で己に癒やし魔法を掛ける。
痛みや体力の消耗により失神などした場合は数名の立会人が本人の代わりに癒やし魔法を掛けてやる、というのが慣例だ。
だが、アンジェリカの立ち会いの者は、アンジェリカが産んだ赤ん坊のあまりの醜悪さに腰を抜かした。
そして事もあろうか、大量出血で気を失っているアンジェリカをその場に残して逃げ出したのだ。
儂がアンジェリカの元に駆けつけたとき、既にアンジェリカは大量の血を失い、事切れていた。
ほんの少しでも息があれば儂の魔法で助けることが出来たのに‥‥
完全に事切れてしまってはどうすることも出来ない。
立会人などに任せず自分が付いていれば‥‥
儂は己を責めた。
愛するアンジェリカを亡くした悲しみと後悔で、気が狂いそうなほどに泣き叫んだ。
そして世にも醜悪な容貌を持って生まれた我が息子、デメルフリードを何としても守ると心に決めたのだ。
後に、
『妃は自分が産んだ子のあまりの醜悪さに気が触れてショック死したらしい』
などという根も葉もない噂を聞いたときは怒りで体が震えた。
儂のアンジェリカが我が子を見てショック死などするはずがない!
アンジェリカという妻は、優しく聡明で、全ての者を慈しむ事の出来る素晴らしい女性だったのだ!
しかし、デメルフリードをその目に映した者は決まって腰を抜かし、泣き喚き、嘔吐する。
『母親を死に至らしめるほどに醜悪な見目をした王子など、世継ぎに相応しくない』
そんな言葉があちらこちらで囁かれるようになるのに時間はかからなかった。
そして、いつの間にか儂と愛するアンジェリカの息子には『醜悪の忌み王子』という二つ名が付いていた。
『陛下、この偉大なるビシュー王国の世継ぎが『醜悪の忌み王子』ではこの国は滅びてしまいますぞ!今すぐに新しい妃をお迎えなされませ!そして、真のお世継ぎに相応しいお子をつくるのです!』
高位貴族の臣下どもが喚きたてる。
儂の妃は未来永劫アンジェリカだ!
そして愛する息子はデメルフリードただ一人!
勝手なことを申すでない!
そう言ってやりたい気持ちをグッと堪える。
何故ならその頃既にデメルフリードは何度も暗殺未遂にあっていたのだ。
愚かな臣下どもは、新しい世継ぎを欲するあまり『醜悪の忌み王子』を亡き者しようとした。
王家の血を継ぐ者は、毒を盛られようが、その首を掻き切られようが死ぬことはない。
仮に意識を失っていたとしても勝手に治癒魔法が発動する。
王家の血を持つ者は老衰以外で死ぬことを許されないのだ。
その事実を知らぬ臣下どもは、あの手この手でデメルフリードを殺そうと躍起になった。
いくら死ぬことはないといっても毒を飲めば苦しみにのたうち回り、剣で切られれば痛みにのたうち回る。
まだ一歳にも満たない赤ん坊のデメルフリードは、暗殺未遂の度に想像を絶するほどの苦しみと痛みをその身に受けた。
何度も、何度も。
デメルフリードは儂以外の全ての者から嫌悪されている。
母殺しという汚名を着せられて、不名誉な二つ名で呼ばれ、死んで欲しいと願われる。
世にも醜悪な容貌を持つデメルフリードはこの王家に居る限り、たとえ国王となってもこの苦しみから逃れることは出来ない。
デメルフリードにとって敵だらけの王家。
こんなところから愛する息子を解放してやりたい。
儂は一人密かに、デメルフリードを解放してやるための計画を立てた。
誰でもいいから取り敢えず側妃を迎える。
そして、側妃との間に子を成して溺愛し、
デメルフリードには冷たく当たる。
早々に第二王子を王太子と定め、デメルフリードは成人と共に王家から追放すると嘯く。
『醜悪の忌み王子』など、暗殺する価値もないと思わせるのだ。
デメルフリードにはつらい思いをさせるが、暗殺による痛みと苦しみにのたうち回るより、他人から死を願われるより、一生王家に縛られるより、ずっとずっといいはずだ。
ああ、デメルフリード。
待っておれ。
いつか儂がお前を全ての苦しみから解放してやる。
だから、それまで耐えるのだ。
辛ければ儂を恨めばよい、
悲しければ儂を憎めばよい。
しかし、いつかその時が来たら、儂はお前に心から謝り、全てを打ち明けよう。
儂が心から愛しておるのは、お前とお前を産んでくれた亡きアンジェリカだけだ、と。
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