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第6話 破滅の予感
しおりを挟む王城で王様がマールの安否を心配しているころ。アルマティア王国の最果て、魔の森に隣接するザハル辺境伯家では、“優雅なお茶会”が開催されていた。
広間のテラスには、高価な茶器と菓子が整えられている。だがその場に座る二人の顔立ちが醸し出す空気は、優雅さよりも不快な傲慢さのほうが勝っていた。
「ねぇプリシラ、今日はなんて気持ちのいい日なのかしら。あの忌々しい小娘がいなくなってから、家の空気がだいぶ澄んだと思わない?」
ヴァネッサ夫人が、わざとらしいため息をつきながら紅茶を啜る。
「ほんとよお母さま! だってあの子、見ているだけで鬱陶しかったもの!」
プリシラは自分のドレスの裾をひらひらさせながら、鼻で笑った。
そんなお茶会の空気を、突然の荒々しい足音が切り裂いた。
「ご、報告!! た、大変です奥様!!」
駆け込んできた騎士の顔は蒼白だった。
だがヴァネッサとプリシラは、眉をひそめて不快げに彼を睨む。
「……今はお茶の時間よ。無礼にもほどがあるわね」
「そうよ、女主人の前に出るなら礼儀を覚えなさいよ」
しかし騎士はそれどころではなかった。震える声を無理に整え、報告を吐き出す。
「魔の森の監視塔が──蛇神ヒュドラの襲撃により、壊滅いたしました!」
「……は?」
「当主ザハル様は……現在、生死不明です!!」
広間に凍りついた沈黙が落ちる──べきだった。本来なら、そうあるべきだった。
だが。
「えっ……じゃあ……」
プリシラの瞳がきらりと輝く。
「わ、私たちが正式にこの家の主に……!?」
「やったわねプリシラ!!」
二人揃って立ち上がり、満面の笑みで手を取り合う。騎士は言葉を失い、口をぱくぱくさせるしかなかった。
(こ、こんな状況で喜ぶなど……正気なのか……?)
その異様な光景は、むしろ滑稽ですらあった。
彼女たちは知らない。
いなくなった“あの子”が、今や国境を越えた大騒動の中心にいることを。
そして、己に迫りくる破滅の影にも――。
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