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第1章 とあるメイドの旅立ち
第6話 そのメイド、試される。②
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「金貨一枚だ」
「やっぱり足りなかった!?」
ぐうぅ、ジーク様に渡した金貨があれば、なんとか払えた金額だったか。
「その様子だと、お前さんは持っていなさそうだな。残念だが入学は……おい、やめろ! そりゃなんのつもりだ!?」
私は今、守衛さんの足元にひれ伏している。
これはサクラお母さん仕込みの最上級のお願いポーズだ。
「ど、土下座です……」
「土下座!? なんじゃそりゃ!! ともかく、こんな所でそんなことをするなって! 俺が学園長にどやされちまう!」
だけど私はやめない。
地面に這いつくばるようにして、どうにか入学させてもらえるよう守衛さんに頼み込む。
「お願いしますっ! お支払いするあてはあるので、少しだけ待ってもらえませんか!? 私、どうしてもここに入学したいんですっ!! お願いですっ、この通り!!」
在学中だって窓ふきでもトイレ掃除でも、頑張って働いて返しますから!
だからどうか、私を入学させて欲しいの!!
守衛さんは私を起き上がらせようとするけど、入学させてくれるまでは梃子でも動かない。
迷惑を承知で、おでこを地面に擦りつけるように懇願する。
ここまで来ると私が本気だと伝わったのか、先に折れたのは守衛さんの方だった。
「はぁ……分かったよ、俺の負けだ。ここまでする入学希望者なんて初めてだよ、まったく……」
「ありがとうございます!」
やったぁ!! 助かった!!
いや、守衛さんにとっちゃかなり迷惑だっただろうし、後で守衛さんが怒られちゃうかもしれないけれど……私も後に引けないのだ。
お詫びは後で絶対にするから!!
「その代わり、俺はお前さんを中に入れてやるだけだ。これから手続きを担当する人間に、お前さんが直接交渉しろ。後のことはどうなろうと、俺は知らん」
「はい! それだけでも助かります! よろしくお願いしますっ!!」
守衛さんは大きな溜め息を吐いた。
ここで大人しく待ってろと私に告げると、屋敷の中へ入っていった。
(大丈夫かな……もし駄目だったら、奥の手にジーク様のハンカチを出してみるしかないわね)
私の心配をよそに、そう時間も掛からず守衛さんは頭をポリポリと掻きながら戻ってきた。
「いちおう、担当の方には簡単に事情を説明しておいた。あとはお嬢さん次第だ」
「ありがとうございます!」
やったぁ! 守衛さん、すごい!!
私が思い付く限りの称賛を送ると、守衛さんは少し照れ臭そうにしながら「ついてこい」と言ってお屋敷の中へと向かった。
私たちは生徒用の通路らしい木扉を開けて、中へと入った。
「うわぁ、すっごい……」
そこには煌びやかな装飾に溢れた、キラキラとした空間が広がっていた。
芸術の分からない私には凄いとしか言えないけれど、細部にまでこだわってレイアウトしたのは何となく分かった。
「へへっ……凄いだろ?」
「はい……なんだか、夢でも見ているみたいです……」
広々としたホールに、赤い絨毯の敷かれた階段と廊下。
落ち着いた雰囲気を持ち合わせながらも、適所に置かれた調度品が豪華さを醸し出している。
お金とセンスがあるって、こういうことなんだろうなぁっていうのが良く分かる。
「さぁ、担当者がこの部屋でお待ちだぞ」
「ごめんさいっ、今行きます!」
口をポカンと開けて立ちつくしていた私を見て、守衛さんはニヤっと口角を上げた。
案内されたのは応接室のような部屋だった。
ローテーブルを挟んだソファーの前には、担当者らしき人物が立ったまま私を待ち受けていた。
「貴女が、当校の入学希望者ね? いいわ、私が面接してあげる」
「はい……」
どうやら面接はしてくれるらしい。
それは嬉しい。だけど……。
「さぁて、貴女はどんな子なのか……私にじっくりと教えてちょうだぁい?」
(メイドの……モンスター??)
目の前にいるメイド服をきた筋骨隆々の化け物は、満面の笑顔でそう言った。
あの……これって私……何か試されているのでしょうか……?
「やっぱり足りなかった!?」
ぐうぅ、ジーク様に渡した金貨があれば、なんとか払えた金額だったか。
「その様子だと、お前さんは持っていなさそうだな。残念だが入学は……おい、やめろ! そりゃなんのつもりだ!?」
私は今、守衛さんの足元にひれ伏している。
これはサクラお母さん仕込みの最上級のお願いポーズだ。
「ど、土下座です……」
「土下座!? なんじゃそりゃ!! ともかく、こんな所でそんなことをするなって! 俺が学園長にどやされちまう!」
だけど私はやめない。
地面に這いつくばるようにして、どうにか入学させてもらえるよう守衛さんに頼み込む。
「お願いしますっ! お支払いするあてはあるので、少しだけ待ってもらえませんか!? 私、どうしてもここに入学したいんですっ!! お願いですっ、この通り!!」
在学中だって窓ふきでもトイレ掃除でも、頑張って働いて返しますから!
だからどうか、私を入学させて欲しいの!!
守衛さんは私を起き上がらせようとするけど、入学させてくれるまでは梃子でも動かない。
迷惑を承知で、おでこを地面に擦りつけるように懇願する。
ここまで来ると私が本気だと伝わったのか、先に折れたのは守衛さんの方だった。
「はぁ……分かったよ、俺の負けだ。ここまでする入学希望者なんて初めてだよ、まったく……」
「ありがとうございます!」
やったぁ!! 助かった!!
いや、守衛さんにとっちゃかなり迷惑だっただろうし、後で守衛さんが怒られちゃうかもしれないけれど……私も後に引けないのだ。
お詫びは後で絶対にするから!!
「その代わり、俺はお前さんを中に入れてやるだけだ。これから手続きを担当する人間に、お前さんが直接交渉しろ。後のことはどうなろうと、俺は知らん」
「はい! それだけでも助かります! よろしくお願いしますっ!!」
守衛さんは大きな溜め息を吐いた。
ここで大人しく待ってろと私に告げると、屋敷の中へ入っていった。
(大丈夫かな……もし駄目だったら、奥の手にジーク様のハンカチを出してみるしかないわね)
私の心配をよそに、そう時間も掛からず守衛さんは頭をポリポリと掻きながら戻ってきた。
「いちおう、担当の方には簡単に事情を説明しておいた。あとはお嬢さん次第だ」
「ありがとうございます!」
やったぁ! 守衛さん、すごい!!
私が思い付く限りの称賛を送ると、守衛さんは少し照れ臭そうにしながら「ついてこい」と言ってお屋敷の中へと向かった。
私たちは生徒用の通路らしい木扉を開けて、中へと入った。
「うわぁ、すっごい……」
そこには煌びやかな装飾に溢れた、キラキラとした空間が広がっていた。
芸術の分からない私には凄いとしか言えないけれど、細部にまでこだわってレイアウトしたのは何となく分かった。
「へへっ……凄いだろ?」
「はい……なんだか、夢でも見ているみたいです……」
広々としたホールに、赤い絨毯の敷かれた階段と廊下。
落ち着いた雰囲気を持ち合わせながらも、適所に置かれた調度品が豪華さを醸し出している。
お金とセンスがあるって、こういうことなんだろうなぁっていうのが良く分かる。
「さぁ、担当者がこの部屋でお待ちだぞ」
「ごめんさいっ、今行きます!」
口をポカンと開けて立ちつくしていた私を見て、守衛さんはニヤっと口角を上げた。
案内されたのは応接室のような部屋だった。
ローテーブルを挟んだソファーの前には、担当者らしき人物が立ったまま私を待ち受けていた。
「貴女が、当校の入学希望者ね? いいわ、私が面接してあげる」
「はい……」
どうやら面接はしてくれるらしい。
それは嬉しい。だけど……。
「さぁて、貴女はどんな子なのか……私にじっくりと教えてちょうだぁい?」
(メイドの……モンスター??)
目の前にいるメイド服をきた筋骨隆々の化け物は、満面の笑顔でそう言った。
あの……これって私……何か試されているのでしょうか……?
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