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第1章 悪役令嬢、日本へ
1-8 弟クンの懺悔。
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【龍斗視点】
俺の姉さんが変わってしまった。
父さんの会社が不景気で経営破綻したおかげで、裕福だった我が家は一気に貧乏になった。
そこへ追い打ちをかけるように父さんの蒸発。稼ぎ頭の喪失によって、俺たちの生活は更に悪くなった。それでも残された母さんと姉さんと俺の三人で、仲良く支え合って生きてきた。
姉さんは当時、青春時代真っ只中の女子高生だった。
それまでやっていた贅沢をスッパリとやめて、俺の学費を稼ぐために自分からアルバイトを始めた。それまで働いたこともない、お嬢様みたいな生活をしていた姉さんにとってそれはかなり大変だったと思う。
だけど誰に対しても不満や文句を言わず、いつも優しい笑顔で俺の頭を撫でてくれていた。
――俺は、そんな姉さんが大好きだった。
一方で元々身体が弱かった母さんはパートや内職で働き詰めだったせいで体調を崩し、そのまま呆気なく天国へと旅立ってしまった。
悲しむ間もなく、姉さんは高校卒業後すぐに社会人になって働き始めた。
本当は姉さんだって行きたかった大学があったんだと思う。だけどそんな素振りも見せないで『龍斗はちゃんと大学を出て、良い企業に就職したら私に贅沢させてね』って言って家を出て行ってしまった。
今思えば、その時に何が何でも姉さんを引き留めておけば良かったのかもしれない。
たまに休日とかで会う度に、姉さんはどんどんやつれていった。
もちろん俺だって心配だった。
だけど姉さんは『大丈夫。龍斗こそちゃんとご飯食べてるの?』っていうばっかりで、自分のことは二の次だった。なんだかそれは、死んだ母さんを見ているようで俺は……。
そう、俺は何もできない自分が憎かった。
金もロクに稼げない、ただの無力なガキなのがどうしようもなく苦しかった。
はやく大学を卒業して、母さんに出来なかった孝行を姉さんにだけは絶対にしてやるんだって勉強を頑張るしかなかったんだ。
一刻も早く、俺は一人前の男になりたかった。
そんなある土曜日。
俺はふいに嫌な胸騒ぎがした。
それは母さんが倒れ、病院に運ばれたあの日と同じものだった。
……昨晩姉さんに送ったメールが未だに返ってこない。
それ自体はいつものことなんだけど、何となく不安に思った俺は何度も何度も電話をした――が、何をどれだけ待っていても、姉さんから返事がくることは一度もなかった。
しびれを切らした俺は心配になり、姉さんの住んでいるアパートに行ってみた。
どうやら留守のようだったので、そのまま家の前の廊下で待っていたら、姉さんが何事も無かったかのようにやってきた。
あぁ、嫌な予感が外れて良かった。まったく、いつもの連絡無精でズボラな姉さんが帰ってきたんだ。安心した俺が姉さんに文句の一つでも言ってやろうと思って声を掛けたら、挙動不審な態度でこう言ってきたんだ。
『ご、ごきげんよう?』
――この姉さんは、俺の姉さんじゃなかった。
ちょっと……いや、だいぶ綺麗になっていたけど、見た目だけは姉さんそのものだった。
だけど姉さんがそんな言葉遣いをするはずがない。何故なら、ウチが貧乏になった時にお嬢様とか金持ちが大嫌いになっていたから。
それに俺を見る目がいつもの姉さんじゃなかった。姉さんをずうっと見てきた俺なら、そんなのはすぐに分かる。
すぐにどういうことなのか問いただすと、姉さんと同じレイカと名乗ったアイツは予想外にも素直に理由を話した。
――だけど、その内容は耳を疑うような、とても信じられるようなモンじゃなかった。
魂だけが異世界からやってきた?
俺の姉さんはあった時にはもう死ぬ寸前?
『――ふざけるな。俺の姉さんを返せ』
でも俺だって……何となく分かってしまったんだ。姉さんはもう、この世にはいないんだって。
そう思うと、どうしても涙を抑えきれなかった。――また何も出来なかったんだって、どうしようもなく悔しかった。
泣き崩れて情けなく喚いていると、アイツはそばに寄ってきて……そんな俺を抱きしめた。アイツは、姉さんじゃ、ないのに。
でもそんな感情とは別に、何故だか不思議と嫌なカンジはしなかった。
姉さんじゃないのに、まるで姉さんみたいな優しい匂いがしたからかもしれない。さらにアイツは、戸惑っていた俺の耳元で「お姉さんは、私の中の記憶と共に一緒に居るよ」と囁いた。
認めたくは無かったけど、それは嘘なんかじゃないってことは、感覚で分かってしまった。
――だって、俺たちは姉弟だから。
『だったら、今度は俺が守ってやる。アイツごと、姉さんを』
本人にもそう言ったら、アイツは姉さんみたいな優しい笑顔でまた頭を撫でてくれた。やっぱり姉さんはちゃんとそこで生きているみたいで、今度は安心して泣いてしまった。
だけどまさか――レイカ姉さんと一緒に住むことになるとは思っていなかった。
でも、ちょっとだけ昔に戻ったみたいで嬉しい。姉さんとは性格が180度違うけれど、ギャーギャーと喧嘩しながら生活するのは楽しいんだ。
……ただ、俺の目の前で無防備に服を脱ぎだすだけは、マジでどうにかして止めさせたいんだけどな――。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつもご覧くださり、ありがとうございます!
第1章が終わり、次回から第2章お仕事編が始まります。
もし面白い、続き読みたい!と応援してくださる方がおりましたらコメント等いただけると大変嬉しいです!!
ではまた、第2章でお会い致しましょう!
俺の姉さんが変わってしまった。
父さんの会社が不景気で経営破綻したおかげで、裕福だった我が家は一気に貧乏になった。
そこへ追い打ちをかけるように父さんの蒸発。稼ぎ頭の喪失によって、俺たちの生活は更に悪くなった。それでも残された母さんと姉さんと俺の三人で、仲良く支え合って生きてきた。
姉さんは当時、青春時代真っ只中の女子高生だった。
それまでやっていた贅沢をスッパリとやめて、俺の学費を稼ぐために自分からアルバイトを始めた。それまで働いたこともない、お嬢様みたいな生活をしていた姉さんにとってそれはかなり大変だったと思う。
だけど誰に対しても不満や文句を言わず、いつも優しい笑顔で俺の頭を撫でてくれていた。
――俺は、そんな姉さんが大好きだった。
一方で元々身体が弱かった母さんはパートや内職で働き詰めだったせいで体調を崩し、そのまま呆気なく天国へと旅立ってしまった。
悲しむ間もなく、姉さんは高校卒業後すぐに社会人になって働き始めた。
本当は姉さんだって行きたかった大学があったんだと思う。だけどそんな素振りも見せないで『龍斗はちゃんと大学を出て、良い企業に就職したら私に贅沢させてね』って言って家を出て行ってしまった。
今思えば、その時に何が何でも姉さんを引き留めておけば良かったのかもしれない。
たまに休日とかで会う度に、姉さんはどんどんやつれていった。
もちろん俺だって心配だった。
だけど姉さんは『大丈夫。龍斗こそちゃんとご飯食べてるの?』っていうばっかりで、自分のことは二の次だった。なんだかそれは、死んだ母さんを見ているようで俺は……。
そう、俺は何もできない自分が憎かった。
金もロクに稼げない、ただの無力なガキなのがどうしようもなく苦しかった。
はやく大学を卒業して、母さんに出来なかった孝行を姉さんにだけは絶対にしてやるんだって勉強を頑張るしかなかったんだ。
一刻も早く、俺は一人前の男になりたかった。
そんなある土曜日。
俺はふいに嫌な胸騒ぎがした。
それは母さんが倒れ、病院に運ばれたあの日と同じものだった。
……昨晩姉さんに送ったメールが未だに返ってこない。
それ自体はいつものことなんだけど、何となく不安に思った俺は何度も何度も電話をした――が、何をどれだけ待っていても、姉さんから返事がくることは一度もなかった。
しびれを切らした俺は心配になり、姉さんの住んでいるアパートに行ってみた。
どうやら留守のようだったので、そのまま家の前の廊下で待っていたら、姉さんが何事も無かったかのようにやってきた。
あぁ、嫌な予感が外れて良かった。まったく、いつもの連絡無精でズボラな姉さんが帰ってきたんだ。安心した俺が姉さんに文句の一つでも言ってやろうと思って声を掛けたら、挙動不審な態度でこう言ってきたんだ。
『ご、ごきげんよう?』
――この姉さんは、俺の姉さんじゃなかった。
ちょっと……いや、だいぶ綺麗になっていたけど、見た目だけは姉さんそのものだった。
だけど姉さんがそんな言葉遣いをするはずがない。何故なら、ウチが貧乏になった時にお嬢様とか金持ちが大嫌いになっていたから。
それに俺を見る目がいつもの姉さんじゃなかった。姉さんをずうっと見てきた俺なら、そんなのはすぐに分かる。
すぐにどういうことなのか問いただすと、姉さんと同じレイカと名乗ったアイツは予想外にも素直に理由を話した。
――だけど、その内容は耳を疑うような、とても信じられるようなモンじゃなかった。
魂だけが異世界からやってきた?
俺の姉さんはあった時にはもう死ぬ寸前?
『――ふざけるな。俺の姉さんを返せ』
でも俺だって……何となく分かってしまったんだ。姉さんはもう、この世にはいないんだって。
そう思うと、どうしても涙を抑えきれなかった。――また何も出来なかったんだって、どうしようもなく悔しかった。
泣き崩れて情けなく喚いていると、アイツはそばに寄ってきて……そんな俺を抱きしめた。アイツは、姉さんじゃ、ないのに。
でもそんな感情とは別に、何故だか不思議と嫌なカンジはしなかった。
姉さんじゃないのに、まるで姉さんみたいな優しい匂いがしたからかもしれない。さらにアイツは、戸惑っていた俺の耳元で「お姉さんは、私の中の記憶と共に一緒に居るよ」と囁いた。
認めたくは無かったけど、それは嘘なんかじゃないってことは、感覚で分かってしまった。
――だって、俺たちは姉弟だから。
『だったら、今度は俺が守ってやる。アイツごと、姉さんを』
本人にもそう言ったら、アイツは姉さんみたいな優しい笑顔でまた頭を撫でてくれた。やっぱり姉さんはちゃんとそこで生きているみたいで、今度は安心して泣いてしまった。
だけどまさか――レイカ姉さんと一緒に住むことになるとは思っていなかった。
でも、ちょっとだけ昔に戻ったみたいで嬉しい。姉さんとは性格が180度違うけれど、ギャーギャーと喧嘩しながら生活するのは楽しいんだ。
……ただ、俺の目の前で無防備に服を脱ぎだすだけは、マジでどうにかして止めさせたいんだけどな――。
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いつもご覧くださり、ありがとうございます!
第1章が終わり、次回から第2章お仕事編が始まります。
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