40デニールの悪役令嬢。遂に世界を追放されたので日本を謳歌することにしました。連れ戻そうたって、もう遅いですよ?

ぽんぽこ@3/28新作発売!!

文字の大きさ
20 / 20
第3章 悪役令嬢、日本を満喫する

3-5 翔琉の初体験。

しおりを挟む

 まったくもって、俺らしくない。
 だけど今更、吐いた言葉は飲み込めなかった。


「もしよかったら、この後に食事でも行きませんか」

 俺が自分から女性をこんな風にあからさまなセリフで誘うなんて、生まれて初めてだ。
 思い出すだけでも、恥ずかしくて顔が熱くなってくる。


「ふふ、本当にご無理しなくて良かったんですよ?」
「いや……そんなことは……」

 う、マズい。
 逆にレイカさんに気を遣わせてしまった。

 お詫びを兼ねて食事になんて誘ってみたけど、これは明らかにデートのお誘いだ。
 だけど彼女は笑顔で「喜んで」と応えてくれた。

 普通なら下心を警戒されるか、無駄に恋愛感情を意識されるかのどっちかなのに。


 レイカさんは今まで出逢ったことのないタイプの女性だ。

 もちろん、彼女みたいに見た目の良い女性は居た。
 ……でも、俺に近付くようなのは俺の内面なんて殆ど見ていなかった。


『思ってたのと違う』

『勉強してないで遊びに行こうよ』

『貴方といてもつまんない』


 自分は最初から何も変わってなんかいないのに、そんな事を言って去っていく。
 俺にとって趣味や楽しみとは、研究や勉強だった。
 だが誰も俺のそんな考えを理解しようとしてくれる女性は、今まで誰一人として居なかった。

 ……いや、これは多分俺が悪いんだと思う。
 付き合っておいて、相手を楽しませようともせず、自分のやりたいことばかり。

 理解しようともせず、興味も向けなかったのは俺の方。
 これでは嫌われて当然だった。


 でもレイカさんは違った。
 医者の仕事に熱中する俺の事を、素晴らしいと褒めてくれた。
 彼女は医療についての理解も、尊敬もしている。

 それも上辺ばかりじゃない。
 あれは人の命を救う事の難しさを身をもって知っているようだった。
 もしかしたら彼女も過去に、何かあったのかもしれない。

 この前に俺の勤め先であった、勉強会の時だってそうだ。俺からあれだけ質問責めにされたら嫌だっただろう。

 それでも嫌な顔ひとつせずにひとつひとつ、真摯に答えてくれた。
 その場で分からないことは、曖昧に誤魔化すこともしなかった。

 逆に勉強会が終わった後には目をキラキラとさせて、時間を忘れて積極的に質問してくれた。
 あんなこと、本当に初めてだったんだ。


 だから、俺も彼女に興味が湧いた。
 今日も偶々見掛けて、嬉しくなって、思わず話し掛けてしまった。
 向こうも気さくに応じてくれて……俺はまた調子に乗って、気付けば……彼女を食事へ誘っていた。



「レイカさんは何か、苦手な食べ物はありますか?」

 食事には誘ってはみたものの、彼女の事はまだ知らないことだらけだ。
 医者の付き合いもあって、この辺の食事処のほとんどは網羅しているつもりだし、たいていの好みに合わせてセッティングできる自信はある。

 ……嫌々でも先輩の食事について行っていて本当に良かった。


「そうですね~、泥ナメクジの踊り食いなんかはちょっと……」
「え?」

 まさかの回答。
 ど、泥ナメクジ……??
 ナメクジって、あのヌメヌメしているアレ?

 ポカンとしている俺を見て、しまったという顔になるレイカさん。

 慌てて「昔に異国で食べたのがトラウマで……!」と誤魔化していたが……彼女は本当に海外に住んでいたのかもしれない。
 苗字で呼ばれ慣れていないとか、少し日本の常識から外れた考えをすることがある。

 でもそれが余計に俺の好奇心をくすぐってくる。
 もっともっと、彼女と話がしたい。
 彼女のことを知りたい、研究したい。

 ……駄目だ駄目だ、どんどん彼女から目が離せなくなっていく。


 結局彼女は大抵の物は食べられるという事だったので、俺は駅近のビルにある創作料理の店に行くことにした。

 ここは落ち着いた雰囲気で、料理も大将が和洋中を取り合わせた逸品揃いだし、お酒も豊富にある。


「えへへ。私、とっても楽しみです!!」
「……良かった」


 本心からのキラキラとした眩しいくらいの笑顔。


『自分のこの手で、レイカさんをもっと笑顔にさせたい』


 気付けば俺は、心からそう思うようになっていた。




しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

2021.08.31 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2021.08.31 ぽんぽこ@3/28新作発売!!

お気に入り登録ありがとうございます!
とても嬉しいです!

解除

あなたにおすすめの小説

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

追放された悪役令嬢、前世のスマホ知識で通信革命を起こしたら、王国に必須の存在になっていました

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢エリザは、婚約者の第二王子アルフォンスに身に覚えのない罪を着せられ、満座の中で婚約破棄と勘当を言い渡される。全てを奪われ、たった一人で追放されたのは、魔物が跋扈する寂れた辺境の地。 絶望の淵で、彼女の脳裏に蘇ったのは、現代日本で生きていた前世の記憶――人々がガラスの板で遠くの誰かと話す、魔法のような光景だった。 「これなら、私にも作れるかもしれない」 それは、この世界にはまだ存在しない「通信」という概念。魔石と魔術理論を応用し、彼女はたった一人で世界のあり方を変える事業を興すことを決意する。 頑固なドワーフ、陽気な情報屋、そして彼女の可能性を信じた若き辺境伯。新たな仲間と共に、エリザが作り上げた魔導通信端末『エル・ネット』は、辺境の地に革命をもたらし、やがてその評判は王都を、そして国全体を揺るがしていく。 一方、エリザを捨てた王子と異母妹は、彼女の輝かしい成功を耳にし、嫉妬と焦燥に駆られるが……時すでに遅し。 これは、偽りの断罪によって全てを失った令嬢が、その類まれなる知性と不屈の魂で自らの運命を切り拓き、やがて国を救う英雄、そして新時代の女王へと駆け上がっていく、痛快にして感動の逆転譚。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

「そうだ、結婚しよう!」悪役令嬢は断罪を回避した。

ミズメ
恋愛
ブラック企業で過労死(?)して目覚めると、そこはかつて熱中した乙女ゲームの世界だった。 しかも、自分は断罪エンドまっしぐらの悪役令嬢ロズニーヌ。そしてゲームもややこしい。 こんな謎運命、回避するしかない! 「そうだ、結婚しよう」 断罪回避のために動き出す悪役令嬢ロズニーヌと兄の友人である幼なじみの筋肉騎士のあれやこれや

転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな
恋愛
 前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。 なんていうのが、一般的だと思うのだけど。  気がついたら、神様の前に立っていました。 神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。  初めて聞きました、そんなこと。 で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。