透影の紅 ~悪魔が愛した少女と疑惑のアルカナ~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!

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剣の章

♠7 不穏な予感

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「星奈のやつ――」
「いいの。面倒事になるから止めて?」
「……ごめん、紅莉」

 別に星奈だって、悠真が自分以外の女子と少し話をしたぐらいでキレたりはしない。
 ただこれは、紅莉を格下に見られているからだ。

 そして、わざと聞こえるような声で話をしたのは、動物が相手に自分の立場を分からせる為のマウント行為なのだろう。調子に乗って他人の雄を奪うなよ、というメッセージ。

 しかしここで焦って謝ってはいけない。下手に事を荒立てれば、むしろイジメに発展するというのが感覚的に紅莉は分かっていた。

 もちろん、紅莉だって内心ではムカついている。
 星奈の悠真に対する無関心な態度は、正直言って有り得ない。
 自分が彼女だったら、いつだって自慢するのに……。


「え、どうしたのこれ。新機種じゃん。あれ? この前スマホ買ったばかりじゃなかった?」
「えへへ~、パパに買ってもらったんだ!」

 そんな紅莉の気持ちは露知らず。
 女子グループの一人が、星奈の持っているスマートフォンに目を付けた。


「ちょっ、パパってまさか……」
「違うよ~、本当のパパ! ねぇ、アプリ入れ直したからグループに誘い直してくれる?」
「オッケー」
「いいなあ、星奈。え、もしかして今付けてる香水も?」
「あ、分かる? パパが夏服の新作と一緒に買ってくれるっていうからさ~」

 すでに紅莉の事なんて忘れてしまったようだ。今度はファッションの話に移っている。
 彼女達の会話に耳をそばだてて聞いていた紅莉は、ホッと胸をなでおろした。

 話題がコロコロ変わるのはいつものことだが、クラスカーストの上位者たちの関心事に一々振り回される下位者にとっては非常にいい迷惑だ。


「……ごめんな、紅莉」
「良いよ、別に。慣れてるから」
「あと……あのさ、今日学校終わった後って予定空いてる?」

 反射的に「空いてる!」と言ってしまいそうになった心を抑え、紅莉は視線を床に落とした。


「ごめんね、放課後は寄る所があるの。……ほら、もうすぐ授業始まるよ。次、世界史の尾山だから」
「あ、やっべぇ! 俺、教科書忘れて隣のクラスに借りに行く途中だったんだわ」

 あぁ、それで独りで廊下に居たのか。
 頑張ってね、と言おうとした時にはもう、悠真は慌てて駆けていくところだった。

 まぁ、大丈夫。きっと彼なら、何の問題も無く借りることができるでしょう。


「う~い、授業始めっぞ。席に座ってないやつはチェックするからな~」

 予鈴が鳴るキッカリ二分前。やたら伸びる指示棒をクルクルと手で回しながら、世界史担当の尾山が教室へと入って来た。
 悠真は無事に借りられたのか、予鈴が鳴る前に教科書を片手に自分の席へと滑り込んだ。


「ふふ。良かったね、悠真君」

 生徒指導係でもある尾山は何かにつけて生徒を叱るタイプの教師だ。
 ただ紅莉の母と同じく、言うことを守りさえすれば害のない大人だったので、彼女はそこまで彼のことが嫌いではなかった。

 とはいえ、スマホを没収されてしまっては困る。紅莉は未だ右手の中に握ったままのスマホをさっさと鞄に仕舞うことにした。


「ん、何か着てる……」

 端末の購入時に最初から入っていた防災アプリから、殺人事件があったことを知らせる通知が来ている。

 既に予鈴は鳴り始めている。
 紅莉はそのニュースを流し読みすると、電源を落として鞄に入れた。


「『連続殺人事件、またも男性が被害に』、ね――あぁ、怖い怖い」
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