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剣の章
♤10 待ち伏せ
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普段は起きている限りアプリでのメッセージを続けていたし、朝や晩には通話も欠かさなかった。
それが今では、「うん」とか「はい」またはスタンプのみと、素っ気ない返事しか来ないのだ。加えて電話も忙しいと言ってさせてもらえない。
中々手を出さない自分にじれったくなったのだろうか。
ようやくキスをしたばかりで、浮かれ上がっていたのは自分だけなのだろうか。
そういえば今日、女友達と『服や香水も買った』と話していたな。見せる相手である俺には遭わないのに? もしかしたら別の男ができたんじゃ……
「いや、まさか星奈に限ってそれはないだろう。……でも不安だ。紅莉は心配ないよって言ってくれていたけど」
不安で押しつぶされそうになった時に、助けてくれたのが同じく幼馴染である紅莉だった。
紅莉とはあまり学校では話さないが、スマホで連絡を取り合っている間柄だ。
彼女はとても親身になってアドバイスをくれる、有り難い存在だった。
さすが女性というべきか、星奈と同じ視点で意見をくれるのだ。
彼女が居なければ、本当に破局の危機だったかもしれない。
そうだ、信号待ちをしている間に紅莉に電話を……。
「……って、アイツは放課後に用事があるって言ってたよな。ははは。最近、なんだか星奈よりも紅莉とのやり取りの方が多い気がする」
少し自虐的になっている間に、歩行者用の信号が青になっていた。
「やべっ!?」
気が付いた時にはすでに、その青信号もピカピカと点滅し始めている。
悠真が立っている場所は静かな住宅街なのだが、今日はやけに人通りが少ない。歩く人影も無いせいで、信号が変わったことに気付けなかった。
「まだ、間に合う……!」
車も見る限りいないようだし、ここは渡ってしまおう。
そう判断した悠真は、小走りで横断歩道を渡っていく。
「ふぅ。……ん? なんだ、あれ?」
交差点を渡った先。悠真の家へ向かう道の電信柱の陰に、先程は見えなかった人影があった。
目を凝らしてみてみれば、それはワンピースを着た黒い長髪の女性のようである。
服のチョイスからして、二十代ぐらいだろうか。
可愛らしい兎の刺繍がされたトートバッグを肩に提げ、左手には黒い図鑑のようなものを持っていた。
まぁ、そんな人も居るか。そう思った悠真はそのまま歩き出した。
ただ、様子がおかしい。
彼女は誰か人を待っているのか、身動きもせずに直立不動しているのだ。
「俺を……見てる……?」
辺りを見回してみても、他に人は居ない。
顔は髪の毛で隠れてしまっているのでハッキリとは分からない。だが顔そのものは、間違いなく真っ直ぐ悠真の方を向いている。
まだ出逢って一分も経っていない。にもかかわらず、悠真の頭の中で警鐘が鳴り響く。
幽霊や妖怪の類は信じていない悠真であったが、さすがに不審人物が目の前に現れると急に怖くなった。
「どうしよう」
こんな時の対処法なんて知るわけがない。
暴漢や痴漢から女性を護る妄想なんてしたことはあるが、いざ実物を前にすると何もすることができない。
――警察? いや、別に見られているだけで何もされていないし、それはまだ早いよな。もしかしたら、ただそこで待ち合わせか何かをしているだけかもしれないし……
悠真は自分にとって都合の良い言い訳を脳裏に並べながら、自身の足を少しずつジリジリと後ろへ下がらせた。
「――来る!?」
それが今では、「うん」とか「はい」またはスタンプのみと、素っ気ない返事しか来ないのだ。加えて電話も忙しいと言ってさせてもらえない。
中々手を出さない自分にじれったくなったのだろうか。
ようやくキスをしたばかりで、浮かれ上がっていたのは自分だけなのだろうか。
そういえば今日、女友達と『服や香水も買った』と話していたな。見せる相手である俺には遭わないのに? もしかしたら別の男ができたんじゃ……
「いや、まさか星奈に限ってそれはないだろう。……でも不安だ。紅莉は心配ないよって言ってくれていたけど」
不安で押しつぶされそうになった時に、助けてくれたのが同じく幼馴染である紅莉だった。
紅莉とはあまり学校では話さないが、スマホで連絡を取り合っている間柄だ。
彼女はとても親身になってアドバイスをくれる、有り難い存在だった。
さすが女性というべきか、星奈と同じ視点で意見をくれるのだ。
彼女が居なければ、本当に破局の危機だったかもしれない。
そうだ、信号待ちをしている間に紅莉に電話を……。
「……って、アイツは放課後に用事があるって言ってたよな。ははは。最近、なんだか星奈よりも紅莉とのやり取りの方が多い気がする」
少し自虐的になっている間に、歩行者用の信号が青になっていた。
「やべっ!?」
気が付いた時にはすでに、その青信号もピカピカと点滅し始めている。
悠真が立っている場所は静かな住宅街なのだが、今日はやけに人通りが少ない。歩く人影も無いせいで、信号が変わったことに気付けなかった。
「まだ、間に合う……!」
車も見る限りいないようだし、ここは渡ってしまおう。
そう判断した悠真は、小走りで横断歩道を渡っていく。
「ふぅ。……ん? なんだ、あれ?」
交差点を渡った先。悠真の家へ向かう道の電信柱の陰に、先程は見えなかった人影があった。
目を凝らしてみてみれば、それはワンピースを着た黒い長髪の女性のようである。
服のチョイスからして、二十代ぐらいだろうか。
可愛らしい兎の刺繍がされたトートバッグを肩に提げ、左手には黒い図鑑のようなものを持っていた。
まぁ、そんな人も居るか。そう思った悠真はそのまま歩き出した。
ただ、様子がおかしい。
彼女は誰か人を待っているのか、身動きもせずに直立不動しているのだ。
「俺を……見てる……?」
辺りを見回してみても、他に人は居ない。
顔は髪の毛で隠れてしまっているのでハッキリとは分からない。だが顔そのものは、間違いなく真っ直ぐ悠真の方を向いている。
まだ出逢って一分も経っていない。にもかかわらず、悠真の頭の中で警鐘が鳴り響く。
幽霊や妖怪の類は信じていない悠真であったが、さすがに不審人物が目の前に現れると急に怖くなった。
「どうしよう」
こんな時の対処法なんて知るわけがない。
暴漢や痴漢から女性を護る妄想なんてしたことはあるが、いざ実物を前にすると何もすることができない。
――警察? いや、別に見られているだけで何もされていないし、それはまだ早いよな。もしかしたら、ただそこで待ち合わせか何かをしているだけかもしれないし……
悠真は自分にとって都合の良い言い訳を脳裏に並べながら、自身の足を少しずつジリジリと後ろへ下がらせた。
「――来る!?」
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