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杖の章
♣10 過去・現在・未来
しおりを挟む悠真の目の前に、計三枚のカードが置かれた。
それぞれ右から順に、川を船頭が客を渡している絵、人の足首に縄を括られて逆さに吊るされている絵。最後にこちらを背に荒野を向いている人の絵だ。
駄目だ。どう見るべきなのかが、さっぱり分からない。
いくら絵をジッと見つめてみても、それが意味するものを察することができないのだ。取り敢えず、この真ん中の男は見るからに良い意味ではなさそうである。
「えーっとね。私から見て左……悠真君からは右ね。こっちから過去、現在、未来を表しているの」
「過去……現在がこれかぁ……」
「次はカードの意味ね。過去がソードの六。現在が真ん中が吊るされた男。未来がワンド……これは棒ね。それの三よ」
やっぱり見た通りのままだ。この男は吊るされていた。
ということは、どういうことなんだろう。苦しいってことか?
いや、首を縛られているわけではないから、また違う意味なのかもしれないな。
じいっと真ん中のカードだけを睨む悠真を見て、紅莉はフフッと笑った。
「まずは過去ね。これは困難に向かう時、誰かの援助を受けられるって示されてるわ」
「困難と、援助……あー、なるほど?」
困難というのは、かなり心当たりがある。
まさに今こうなっている原因とも言える、あの襲撃事件だ。
そして助けというのは、間違いなく紅莉のことだった。
「そして現在。悠真君は心配していたけれど、これはどちらかと言えば良い兆候よ」
「良い兆候? いや、吊るされてるんだけど、この人。本当に大丈夫なのか?」
「ふふ。男性の顔を良く見てみて。なんだか平気そうな顔でしょう? この人は自分から望んで吊るされているんだよ」
「ええっ!? 自分で!?」
現在の自分は、まさかの変態だった。
ということはこの状況を俺は楽しんでいることなのか!?
悠真はそんな事はない、と頭を振る。
それを彼女はクスクスと笑いながら「大丈夫、分かってるよ」と手を振った。
「このカードは報われる努力を意味しているの。だから今の行動を信じて、このまま突き進むべきって事かな」
「え、そうなのか? なんだぁ、良かった……」
思わずホッと安堵の溜め息が出てしまった。
むしろ今の自分が望むような答えだった。あとは未来が気になる所だが……。
「うんうん。三枚目は新たなる旅立ち。先はまだ見えずとも、しっかりと大地に立って進んでいける。そんなカードだよ」
「そっか……そうなのかぁ! あぁ~、良かった安心したぁ!」
始まるまではかなりのドキドキだったが、いざやってみればどれも良い結果だったみたいだ。
万が一ひどい結果だったら、目の前に居る二人に泣きついていたことだろう。それこそ、悪魔でも良いから助けてくれと願うほどに。
これが朝にテレビでやっている星座占いだったら、多少テンションが下がる程度だっただろう。
しかし今回は、信頼に値する紅莉の占いなのである。当たる当たらないよりも、紅莉に自分の未来を肯定してほしかった。
「あはは。たとえどんな結果が出ようと、大丈夫だよ。私が一緒に居る限り、絶対に悠真君のことを救うから」
「紅莉……」
この数日、彼女にはすでに何度も助けられている。
今だってそうだ。そばで懸命に支えようとしてくれている。
「ありがとう。俺も紅莉に何かあったら身体張って護るから」
「えへへ、嬉しい。でも、無理はしないでね? 私、悠真君が居なくなっちゃったら、耐えられないと思う……」
――やっぱり、優しい。
こうやって、紅莉は欲しい言葉をスッと言ってくれている。
「はぁ。そろそろ、ボクが居ることも思い出してほしいんだけど?」
「「あっ……」」
すっかり蚊帳の外に放り出されてしまっていたマルコ。
ニコニコとした表情のまま、彼はこめかみをヒクつかせていた。
「ボクは紅莉の事が大好きだけど、今のキミはなぁんかイヤだなぁ」
「はぁ? なんでよ!?」
おっと、なんだか不穏な雰囲気になりそうだ。
そう感じた悠真は、ずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「そ、そういえば紅莉。タロットの話はその辺にして、そろそろ教えてくれよ。この教会には、何しに来たんだ?」
マルコの話を聞かせたいだけだったら、わざわざ時間の無い今やるべきことでもない。他に何か理由があったはずだ。
「うん。あのね、マルコ。貴方に聞きたいことがあって」
「はぁ……紅莉には関わって欲しくないから、絶対に言わないって決めていたのに……」
マルコは額を手で抑えながら、深い溜め息をついた。
彼も彼で、紅莉がどうしてやってきたのか予想はついていたらしい。態度から察するに、あまり良い事ではなさそうだ。
それでも、紅莉は引くつもりはなかった。
「分かってる。だけどお願いしたいの。私に、カレイドスコープの本拠地を教えて」
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