透影の紅 ~悪魔が愛した少女と疑惑のアルカナ~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!

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杖の章

♣10 過去・現在・未来

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 悠真の目の前に、計三枚のカードが置かれた。

 それぞれ右から順に、川を船頭が客を渡している絵、人の足首に縄を括られて逆さに吊るされている絵。最後にこちらを背に荒野を向いている人の絵だ。

 駄目だ。どう見るべきなのかが、さっぱり分からない。
 いくら絵をジッと見つめてみても、それが意味するものを察することができないのだ。取り敢えず、この真ん中の男は見るからに良い意味ではなさそうである。


「えーっとね。私から見て左……悠真君からは右ね。こっちから過去、現在、未来を表しているの」
「過去……現在がこれかぁ……」
「次はカードの意味ね。過去がソードの六。現在が真ん中が吊るされた男。未来がワンド……これは棒ね。それの三よ」

 やっぱり見た通りのままだ。この男は吊るされていた。

 ということは、どういうことなんだろう。苦しいってことか?
 いや、首を縛られているわけではないから、また違う意味なのかもしれないな。

 じいっと真ん中のカードだけを睨む悠真を見て、紅莉はフフッと笑った。


「まずは過去ね。これは困難に向かう時、誰かの援助を受けられるって示されてるわ」
「困難と、援助……あー、なるほど?」

 困難というのは、かなり心当たりがある。
 まさに今こうなっている原因とも言える、あの襲撃事件だ。

 そして助けというのは、間違いなく紅莉のことだった。


「そして現在。悠真君は心配していたけれど、これはどちらかと言えば良い兆候よ」
「良い兆候? いや、吊るされてるんだけど、この人。本当に大丈夫なのか?」
「ふふ。男性の顔を良く見てみて。なんだか平気そうな顔でしょう? この人は自分から望んで吊るされているんだよ」
「ええっ!? 自分で!?」

 現在の自分は、まさかの変態だった。
 ということはこの状況を俺は楽しんでいることなのか!?

 悠真はそんな事はない、と頭を振る。
 それを彼女はクスクスと笑いながら「大丈夫、分かってるよ」と手を振った。


「このカードは報われる努力を意味しているの。だから今の行動を信じて、このまま突き進むべきって事かな」
「え、そうなのか? なんだぁ、良かった……」

 思わずホッと安堵の溜め息が出てしまった。
 むしろ今の自分が望むような答えだった。あとは未来が気になる所だが……。


「うんうん。三枚目は新たなる旅立ち。先はまだ見えずとも、しっかりと大地に立って進んでいける。そんなカードだよ」
「そっか……そうなのかぁ! あぁ~、良かった安心したぁ!」

 始まるまではかなりのドキドキだったが、いざやってみればどれも良い結果だったみたいだ。

 万が一ひどい結果だったら、目の前に居る二人に泣きついていたことだろう。それこそ、悪魔でも良いから助けてくれと願うほどに。


 これが朝にテレビでやっている星座占いだったら、多少テンションが下がる程度だっただろう。
 しかし今回は、信頼に値する紅莉の占いなのである。当たる当たらないよりも、紅莉に自分の未来を肯定してほしかった。


「あはは。たとえどんな結果が出ようと、大丈夫だよ。私が一緒に居る限り、絶対に悠真君のことを救うから」
「紅莉……」

 この数日、彼女にはすでに何度も助けられている。
 今だってそうだ。そばで懸命に支えようとしてくれている。


「ありがとう。俺も紅莉に何かあったら身体張って護るから」
「えへへ、嬉しい。でも、無理はしないでね? 私、悠真君が居なくなっちゃったら、耐えられないと思う……」

 ――やっぱり、優しい。
 こうやって、紅莉は欲しい言葉をスッと言ってくれている。


「はぁ。そろそろ、ボクが居ることも思い出してほしいんだけど?」
「「あっ……」」

 すっかり蚊帳の外に放り出されてしまっていたマルコ。
 ニコニコとした表情のまま、彼はこめかみをヒクつかせていた。


「ボクは紅莉の事が大好きだけど、今のキミはなぁんかイヤだなぁ」
「はぁ? なんでよ!?」

 おっと、なんだか不穏な雰囲気になりそうだ。
 そう感じた悠真は、ずっと気になっていたことを聞いてみることにした。


「そ、そういえば紅莉。タロットの話はその辺にして、そろそろ教えてくれよ。この教会には、何しに来たんだ?」

 マルコの話を聞かせたいだけだったら、わざわざ時間の無い今やるべきことでもない。他に何か理由があったはずだ。


「うん。あのね、マルコ。貴方に聞きたいことがあって」
「はぁ……紅莉には関わって欲しくないから、絶対に言わないって決めていたのに……」

 マルコは額を手で抑えながら、深い溜め息をついた。
 彼も彼で、紅莉がどうしてやってきたのか予想はついていたらしい。態度から察するに、あまり良い事ではなさそうだ。


 それでも、紅莉は引くつもりはなかった。


「分かってる。だけどお願いしたいの。私に、カレイドスコープの本拠地を教えて」

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