*婚前なれそめファンタジー* 盟主は手綱を握りたい! ※ 猜疑心強めのいじわる盟主は、光の溺愛男に進化する ※

保志見祐花

文字の大きさ
2 / 78
1 じゃあ、説明するよ

第2話 辛辣男と口の減らねー女 2

しおりを挟む




(──────はぁ──────っ……)




 その状況に。 
 さっきからやかましいナンパ男に。

 腹を決めたミリアは、渾身を込めたハニーブラウンの瞳でヤツを正面から睨み返して言い放つ!




「要らない要らない、そういうの迷惑。
 わたし、これ、買い物帰り! 
 見ればわかるでしょ?」



 キッパリはっきり言い切る彼女が次の文言を喰らわせるべく、見せつけるように動かすのは右腕の紙袋だ。同時に左手の麻袋をぐいっと持ち上げ見せつけると、




「重いの、これ。結構な重さなの。
 こんな状態で『あら嬉しい♡ じゃあ、焼き菓子でも食べちゃおうかなあ♡』ってなると思う?
 なるわけないじゃん!
 ならない! ならないよ!」


 身振り手振り、一人芝居も交える彼女。 
 その勢いは『絡まれている大人しそうな女性』というよりも『説教をかます母親』である。
 色気も何もあったものじゃない。



 意見を述べているのか煽っているのか分からないミリアの態度仕草に、ナンパ男の眉がピクンと跳ね上がったのを、知ってか知らずか。彼女は左腕の麻袋から手を離し足元に置くと、自らの胸を押さえ


「まずさあ、誘う相手が間違ってると思わない?
 わたしみたいな荷物抱えた女じゃなくて、他の暇そうにしてるヒトとかに声かけない? 
 ほら、あそことか! あそことか!
 たくさんいるじゃん!」




 言いながらナンパ男の背後をぴしぴしと指しまくる。 
 指された女性からしてみれば迷惑な話である。 


 ──────が。

 彼女は止まらないのだ。



「普通、荷物もってせかせか歩いてたら『あ、忙しそうだ』とか思わない? 『声かけても無理っぽいな』とか思うじゃん? 思うよね?  まあアナタが新手の宗教とかの客引きとかならわかるけど、そうじゃないんでしょ? 新興宗教の人なの?」

「……い、いや」


「じゃあ声かける相手間違ってるよ!
 ずれてるズレてる、的外れもいいところ! 空のかなたに弓を放っても、ただカラぶるだけなの・狙ってるところがちがうの! もっと観察しなよ、荷物抱えて帰る女がお茶するわけないじゃん。 

 ……いやまあ?
 中には居るかもしれないけど?
 でも、わたしはしない・早く荷物置いて楽になりたい!

 観察力が!
 不足していると!
 思います!」

「────っ……!」



 一気に早口、論破する勢いで捲し立てられ、ナンパ男の口元が怒りに歪んだ。


 女の分際で男の自分にこれだけ言い返すのも腹が立つのに、女の言い分が妙に的を得ているから、さらにムカつく。そして悔しいことに、すぐに反論の言葉は出ない。



 歩く姿がいいと思った。 
 軽い気持ちで声をかけた。 
 年齢も推定25、6と申し分ない。


 大人しそうで、それでいて柔らかそうな雰囲気で、声をかけた時の反応がこのあたりの女の中では抜群に良かった。「これはいける」と、ナンパ男は思った。



 ……それだけに──

 じわじわ沸々と沸き上がるのは『怒り』と『意地』だ。




 細身の体。
 服の上からでもわかる、ふくよかな胸。

 尻や他の塩梅はわからないが──そこは、もはやどうでもいい。

 これだけのことを言われて、おめおめと諦めるのは癪に障る。
 力づくでも服をむいて、ごめんなさいと言わせてやりたい。


「……この女……いい度胸してるじゃねえか……!」 



 男は吐き出す声に顔に怒りを滲ませるが……ミリアの目つきは……変わらなかった。




「────もちょっと観察力とか想像力とかつけてきてからの方がいいと思う!
 そしてわたしは行かない!
 しつこいです! どうぞ他へお回りください!
 そこをお退きくださいませ! お出口はあちらです!」


「オ・レ・ガ! 誘ってんのに来ねえのか!」
「はあ!?知らんし!行かないって言ってるで────っ!?」



 迫られても怯まぬミリアのその顔に、次の瞬間、緊張が走った。


 ナンパ男の大きな手が彼女の腕を掴んだのである。
 明らかな怒りが込められたその力に、ミリアが(──やばいッ……!?)と喉を詰まらせた──その時。






「……ちょっと。いい加減にしてくれないか」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜

来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。 自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。 「お前は俺の番だ」 番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。 一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。 執着と守護。すれ違いと絆。 ――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。 甘さ控えめ、でも確かに溺愛。 異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...