*婚前なれそめファンタジー* 盟主は手綱を握りたい! ※ 猜疑心強めのいじわる盟主は、光の溺愛男に進化する ※

保志見祐花

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第56話「目を覚ましてこっとぉぉぉぉぉぉぉぉん!ううっ!こっとぉぉぉぉぉぉぉんっ」

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 やかましいミリアをほったらかしに、
 一点を見つめて考えるのはエリックは、表情を鋭く砥ぎながら眉を寄せる。



(……この問題。
 今のうちに原因を突き止めて潰すことができれば
 服飾業界の大きな混乱も、民の暮らしも守ることができるよな。

 まさか綿やシルクまで上がるなんて。
 ギルド内で見つけられていたかどうか。

 …………気づけたとしても、だいぶ後手に回っていたかもしれない。

 問屋の店主の様子だと跳ね上がったみたいだし、早急に見つけられたと考えていいだろう。今後は、綿とシルクの高騰も含めて、広い視野とありとあらゆる可能性を加味しつつ動いた方が良さそうだ)



「…………ううっ、こっとん……!
 こっとぉおおん……!
 目を覚ましてぇ、安くなってェェェェェ……!」


 (────ああ……
 俺の人選は間違っていなかった。
 あの時、靴を投げられたのは驚いたけど。

 結果として情報源をいち早く確保できたのだから、”災い転じて福と成す”かな。

 で、問題は『縫製組合をどこから切り崩すか』なんだが……

 ……やっぱり、縫製組合全体の雰囲気は……、
 男の俺にはキツいな。
 屋敷に来るお抱えのテーラーとはわけが違う。
 あれじゃあ、情報どころか警戒されるだけだ)



「こっとん、あのね? きいてコットン。
 これから冬になるのよ、あなたたちがどれだけ活躍すると思ってるの?
 だいかつやくの時期に……

 …………って、ちょっと待てよ、いや値段どうしよう値段、ええええ、うううんんん
 えええええええ考えれば考えるほどっ
 胃が痛ーい、胃が痛あああああいっ
 えええええ、オーナーに言いにくいなああっ」


(…………やはり、
 彼女を情報源とするのが一番手っ取り早いだろう。
 ミリアの中で俺はもう『その他一般』では無いはずだし。

 ……しかし問題はアプローチ方法だ。どうやら彼女にはデートアプローチは効かないようだし、かと言ってこのままズルズルとここにいても、怪しまれるだけだ。
 ……そうだな……なんとか彼女に上手く・かつ怪しまれずに近づくアプローチを)
「──────ねえ!」
「!」


 彼の思考を遮って。
 ガシッと掴まれた腕と声に、エリックは驚き目を上げた。




 弾かれた様に上げた先、飛び込んできたその顔に────息を呑んだ。






 視界いっぱい

 映し出された

 彼女の焦りと、混乱の色




「……黙ってないで相槌とか打ってよ、せめてっ!」
「…………っ」



 声から、表情から、滲み出る。
 いつもの「飄々な彼女」はそこにいない。


 エリックが彼女の気迫に慄いたわずかな一瞬に、ミリアはそのハニーブラウンの瞳を合わせて、


 ぐっ…………! っと間をとり、


「…………困る!」


「………………わかってる」
「なんで、どうしてこうなったのっ!」


「…………………………、………………だから」
「あーもー、あーもー、ありえない!
 どうしよう……!
 いや、わかってる、お兄さんに言っても仕方ない、それはわかってる!
 こんなの言ってもキミも困るよねっ!?」



「……あの、ミ」
「────っていうかわたし、どうやって帰ってきた?? ねえ、わたしちゃんと歩けてた? 記憶があるようで、無いよ!?」

「……大丈夫だよ、ミリア。
 だからここにいるんだろ?」
「コットンとシルク!
 無理無理無理無理、だって納期あるのに……!

 いや! なんとかするけど、このまま布高いのマジでやばい……!
 今はいいよ、いまは! 
 でもその内どうしようもなくなるじゃん!
 ハッ! 代わりのもの探す? 探したらいい?
 いやいやいやいや綿の代わりなんて無いよおおお!」
「……………………」


 ────もはや会話が成り立たない。
 頭をぐしゃぐしゃと掻きむしる彼女の口から出てくる言葉は、支離滅裂だ。




 そんな彼女を前に、彼は


 言葉に、迷っていた。


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