さくら彩

齪和莉さき

文字の大きさ
上 下
3 / 4

三話 異世界ブロッサムアワー

しおりを挟む
「ん・・ここ、何処・・」
私はいつの間にか、画面に映るアバター・・春咲かのはちゃんの分身になっていた。
ブロッサムアワー、と唱えた時の意識は不思議と無くなっていた。
もう一つ、景色がネットパークと少し違っていた。

私が手を動かすと、かのはちゃんは同じ動作で手を動かす。
(そっか、バーチャルの世界だもんね・・私、ここでは「春咲かのはちゃん」なんだ)
少し背伸びする。ずっとゴーグルを被っていたせいで、感覚に慣れ被っているような感覚が無かった。
(ちょっとやりすぎたかなあ・・かれこれ一時間はやっているような・・もう今日はやめる、か)
私は頭を触る。少し固い、ゴーグルの感触・・では、無かった。
「え?」
髪の毛のふわふわとした感触。ゴーグルをしているはずなのに。
感覚に慣れて・・ではなく、ゴーグルを被っていなかった。
(じゃあ、ここは何処なの?バーチャルの世界では無いの?じゃあ、私・・誰なの?広崎文恵?それとも、春咲かのは?)
夢の可能性がある。その考えが一番だ。
(夢かな?だって、VRなんて凄いもの、見ちゃったんだもん。ビックリして寝て、夢を見ているんだ。だよね。)
頭に??が周りグルグルしていた時に、一人の誰かが私の肩をポンと叩いた。
「うわあああ!何!」
私はヒヤリとして振り向く。
(幽霊?でも多分ここは夢だし・・)
そこには、私よりも2つ年下くらいの少女が立っていた。
不思議ちゃんっていうような雰囲気をまとった、おちょぼ口の女の子。
「・・ぁ・・ご、ごご・・ごめ・・・・な、な、・・さ・・・・っ・・さ・・」
(やばい、声、出ない・・)
「大丈夫?アナタもしかして、文恵チャン?」
軽々と本名を言われる。そうか、ここは夢だもんね・・
「ぁ・・ああ・・あ・・」
(どうしよ・・)
「そんなに話すの、無理しなくていいよ?」
(ここは、多分夢。だから、何しても現実とは反映されない。だから、何してもいいかな?
・・だって、私。お母さんとなら、話せるし。私なら。できる。話せる。)
文恵はこのころ、何も分かっていなかった。ここが、異世界だなんて。
「・・!はい!私は、広崎文恵こと春咲かのはですっ!!」
「あ! やっぱり~!手紙、読んだ?ここは、異世界ブロッサムアワー!VRから呪文を唱えれば行ける、百万人に一人しか行けない場所!改めて・・日向唄です!あと、ここ・・夢じゃないから!」
そう言って、唄は文恵のほっぺたを叩く。
「い、痛っ!」
「ほら、夢じゃない」
私は、数分間フリーズして目を見開く事しかできなかった。

しおりを挟む

処理中です...