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1章 少女との契約 上
13話 妹分の少女
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あれから灯里と別れ、陣はとある事務所へとたどり着いていた。
ここは四階建てのテナントビル内にある事務所。中はいたって普通の内装で、作業ディスクに来客用のソファーが置かれ、給湯室も設置されている。棚には奈月の私物である雑誌や本が入っている程度で、あまり物が置かれてないわりとスッキリとした事務所であった。
今の陣はすでに奈月の付き人をやめているので、一人で生きていかなければならない状況。ゆえに生活資金を稼ぐためにも、神代特区で魔法や星詠みなど魔道関連専門のなんでも屋シリウスという事務所を、一年前に立ち上げていたのだ。
この件に関しては神代家次期当主である、奈月の姉の計らいが強いといっていい。シリウスの表向きは、神代側に属さない普通の民間会社。なので基本星葬機構や星魔教などの圧力を受けず自由に介入できるため、神代側にとって非常に動かしやすい駒になりえる。そういった思惑のもと、奈月の姉が陣に話を持ち掛けてきたのであった。もちろんこの話は陣にとってもメリットがあった。まず事務所の設備や活動資金などは奈月の姉が常に出してくれ、さらにシリウスを運営するにあたる面倒事もすべてやってくれる。しかも陣が興味を持ちそうな星詠みに関わる依頼を、持ってきてくれるというのだ。神代のものだけでなく、星魔教側の依頼まで。陣としては自身の世界の形を見つけるためにも、少しでも多くの星詠みと対峙しておきたい。ゆえにもはや願ったり叶ったり。快く奈月の姉の案を了承したのが事の経緯であった。ちなみに事務所の名前は奈月の姉が決めてくれたという。
「じんお兄ちゃん! お帰りなさーい!」
陣がシリウスの事務所の扉を開けると、一人の少女が顔をぱぁぁっとほころばせながら大きく手を振ってきた。そしてそのままはしゃぎ気味に、駆け寄ってくる。
陣のことを兄のように慕う彼女は一つ年下の少女で、名前を蓮杖セナ。茶色がかった髪に付けている大きなリボンがトレードマークで、あどけなさをただよわせる非常にかわいらしい女の子である。
彼女はこの事務所に入り浸っている人間の一人なのだ。
「ん? 誰かと思えば、セナか。お前も本当に物好きだよな。きっすいのお嬢様が、こんななにもないただの事務所に入り浸るなんて」
「えっへへ、だってここに来れば、じんお兄ちゃんに会えるんだもん!」
セナはとびっきりの笑顔を向けながら、ぎゅーっと陣に抱き着いてきた。
結果、まだまだ成長途中のやわらかい感触が押し寄せてきた。
「おー、なんか変な勘違いを生みそうな言葉だな」
そのあまりのいじらしい反応に、思わず心打たれそうになってしまう。なので彼女の髪をやさしくなでてあげながら、ツッコミを。
「うん? 勘違いでもなんでもないよぉ。セナはじんお兄ちゃんの熱狂的ファンだもん! 四六時中じんお兄ちゃんのこと考えてるし、会うためならたとえ火の中水の中、どこだって追い駆けにいくんだからぁ! もう、この一途な想いは誰にも止められないほど、あらぶってるよぉ!」
セナは目を輝かせながら、力説を。
「ははは、わかってるさ。セナは心酔してるんだよな。ただオレのようになりたいと憧れてるだけで」
「そうだよぉ! どこにも縛られず、ただ自分の信じた道をひたすら突き進むアウトローの生き方! そしてどんな問題も力で華麗に解決してみせる、熟練された手際! うん、かっこよすぎてたまんない! じんお兄ちゃんこそ、セナがずっと求めてきた理想の姿そのもの! あー、あこがれちゃうなぁ!」
セナは両腕をブンブン振り、うっとりしたまなざしを向けてくる。
この通り彼女はただ陣に心酔しているだけ。恋愛感情はとくにないらしい。
そんなセナと話していると、ふと少年の声が割り込んできた。
「ハハハ、相変わらずのなつかれようだね、陣」
「カナメまで、来てたのかよ。ほんと毎度毎度、我が物顔で入り浸りやがって……。ここはお前たちのたまり場じゃないんだからな」
事務所のソファーでくつろいでいる彼の名前は、雨宮カナメ。年は陣と同じ。温厚な性格の少年で、無駄にイケメン。なので学園内では女子からの人気がすごいのだ。彼とは昔から悪友の間柄。カナメもセナと同じくよくこの事務所に出没しており、星海学園ではよくつるむ関係であった。
「固いこと言わないでくれよ。僕たちの仲じゃないか」
「うんうん、そうだよぉ、じんお兄ちゃん! こんな楽しそうなことしてるのに、仲間外れはよくないよぉ!」
「まったく、お前ら本当に自分の立場がわかってるのか? オレは神代側で、そっちは星葬機構側。しかもむこうの最大戦力、断罪者の家系の人間ときたもんだ。というかカナメに関してはもう断罪者の称号を持ってるし。――はぁ……、本来なら会って早々、やり合う関係だろ」
意気揚々と主張してくるセナたちに肩をすくめながら、カナメの座っている向かいのソファーに腰を下ろした。
陣が呆れるのも無理はないだろう。なぜなら彼らは星葬機構側の人間であり、断罪者になることを課せられた名家の血筋なのだから。一応セナは子供なので、まだ断罪者の称号を持っていない。だが彼女の家はとある理由から断罪者としての責務を負っているため、いずれは断罪者となり役目をこなさなければならなくなるのだ
カナメに関してはまだ子供であるが創星術師としての格、さらには彼の家での立ち位置上すでに断罪者の称号を手にし猟犬の役目をこなしていた。このようにたとえ子供であろうと、条件に当てはまっていれば早いうちから断罪者の任につくことになるのである。ちなみに責務を負った名家の者でも、星詠みの素養が低いなど条件に当てはまらない場合は断罪者にならずに済むのであった。
「確かに僕たちは星葬機構に仇名す者たちを殲滅するために生まれた、断罪者側だね」
なぜ星葬機構がパラダイスロストを収拾でき、その後の恐怖による支配体制を整えられたのか。その答えは星詠みを行使する事を星葬機構に認められた、カナメたち断罪者の家系だ。
パラダイスロストが起こり、世界は混沌の渦へとたたき落とされた。ここで星葬機構を取り仕切るレイヴァースは、とある重い決断をすることになる。現状魔法使いの暴走ならば、自分たちでも食い止められるのだ。彼らは少し魔法をかじった素人ゆえ取り押さえるのも可能であり、なによりまだ正気。ある程度魔法を振るえば、力を使える感動も薄れ大人しくなるのだから。
しかし暴走した創星術師は違う。彼らは狂気に取りつかれ、自らが破滅するまで止まりはしない。しかもここでの一番の問題は、彼らに対し普通の魔法使いでは基本歯が立たないということ。星葬機構側にも創星術師はいるが、その数はたかが知れている。もはや世界中で起こる創星術師の暴走を止めるには、人手が足りなさすぎたのだ。
そこでレイヴァースは英断する。星詠みという強力な毒に対抗するには、もう毒をもって毒を制すしかない。ゆえにレーヴェンガルトや星魔教の影響で世界中に広まっていた創星術師を招集した。彼らは暴走せず星詠みを使いこなせる猛者たち。暴走した創星術師を殲滅できる力を持つため、彼らに事態の収拾を任せたのであった。これが断罪者と呼ばれる者たちの始まりなのである。
「星詠みの許可や断罪者という地位を見返りに、猟犬の役目を与えられてるから、星葬機構に刃向かう神代は倒さなければならない敵になる」
パラダイスロスト時に招集された創星術師たちだが、当然ただで動くはずもない。それ相応の見返りがなければならないということで、レイヴァースは英断し断罪者という制度を作った。それこそ制限付きだが星詠みを行使し極めることの許可と、権力を振るえる地位を見返りに、今後星葬機構へ従属を約束するというものである。
これにより招集に応じた創星術師たちは星葬機構の殲滅対象から外れ、安心して魔道を求道することができる。しかもそれなりの権力を振るえる、地位付きでだ。もはや彼らには願ったり叶ったりな見返りだったため、多くの者が星葬機構の猟犬になることを受け入れたという。
このパラダイスロストにおける星葬機構の招集こそ、今後の創星術師たちの命運を決める分岐点といっていい。星葬機構の猟犬となり飼いならされ続けるか、鎖につながれるのは御免だと自由を求めるかの二択。ある者は見返りのために星葬機構への従属を。ある者はどこにもつかず隠れながら魔道の求道を。ある者はレーヴェンガルト側や星魔教に身をひそめた。そしてある者は神代の星詠みの研究を手伝うことを条件に、クロノスに保護を求めた。こうして創星術師たちは先のことを見すえ、各勢力についていったのである。
ちなみに断罪者の権限に関しては、星葬機構が彼らという圧倒的戦力を保有していることを、常に世界中に知らしめるための狙いがあったらしい。パラダイスロストで力を見せつけ猛威を振るった断罪者が、権力を振りかざしながら今も変わらず目を光らせていることを。こうすることで人々に星葬機構や断罪者は畏怖すべき存在と認識させ、恐怖による支配体制を強固なものにできたのであった。
「だけどそれはあくまで仕事での話。今のプライベート時にはまったく関係ないさ。そもそもそこまで星葬機構に加担する道理はないしね」
「おいおい、そんな星葬機構を軽んじること言っていいのか? ただでさえカナメは最上位クラスに位置する断罪者、雨宮家の次期当主だろ。ほかの断罪者たちを率いる立場なんだから、もっと断罪者としての責任感をだな」
カナメのあまりのやる気のない答えに、ツッコミを入れる。
そう、雨宮家は断罪者の中でも最上位クラスの名家。もはや星葬機構の必須戦力であり、その権力も相当なもの。しかも彼はその雨宮家の次期当主様であらせられるのだから、本来星葬機構の批判的言葉はもちろん、神代とつながりがあるシリウスに来るのはまずいのだ。
「ハハハ、やだね。第一僕たちはもとをたどれば、神代のような魔道を極める者。星詠みの研究こそすべてなんだから、世界のためとか言う正義感はあまり持ち合わせていないのさ。ただ自分たちの保身のため、命令を聞いてるようなものだからね」
陣の指摘を、もはや笑い飛ばすカナメ。
ただ見返りのために動いているだけであって、星葬機構に対する忠誠心はそこまでないようだ。魔道の求道は制限され、星葬機構側にいいように使われる日々。きっと首輪を付けられていることへの不満も、相当なものなのだろう。たがたとえどれほど不満が募ろうと、彼らは星葬機構から脱却することができない。それもそのはず星葬機構がほかの断罪者たちを集め、制裁を下しに来るからだ。星葬機構側としては今の断罪者のまとまりを乱したくはない。ゆえに見せしめもかねて、離反した者の末路を知らしめるのである。第一断罪者ほどの創星術師を野に放てば、世界に大きな害を及ぼすゆえなおさら見逃すわけにはいかないのだ。よってたとえ全断罪者を総動員してでも潰しにいくだろう。 なのでもし断罪者に名をつらねる名家の身内が離反した場合、自分たちとは関係ないとすぐさま縁を切り身の潔白を証明するのである。そう、まるで陣の時のように。
「というか、キミだけには言われたくないんだが? 元四条家の次期当主である陣にはね」
そしてカナメは肩をすくめながら正論で反撃してきた。
ここは四階建てのテナントビル内にある事務所。中はいたって普通の内装で、作業ディスクに来客用のソファーが置かれ、給湯室も設置されている。棚には奈月の私物である雑誌や本が入っている程度で、あまり物が置かれてないわりとスッキリとした事務所であった。
今の陣はすでに奈月の付き人をやめているので、一人で生きていかなければならない状況。ゆえに生活資金を稼ぐためにも、神代特区で魔法や星詠みなど魔道関連専門のなんでも屋シリウスという事務所を、一年前に立ち上げていたのだ。
この件に関しては神代家次期当主である、奈月の姉の計らいが強いといっていい。シリウスの表向きは、神代側に属さない普通の民間会社。なので基本星葬機構や星魔教などの圧力を受けず自由に介入できるため、神代側にとって非常に動かしやすい駒になりえる。そういった思惑のもと、奈月の姉が陣に話を持ち掛けてきたのであった。もちろんこの話は陣にとってもメリットがあった。まず事務所の設備や活動資金などは奈月の姉が常に出してくれ、さらにシリウスを運営するにあたる面倒事もすべてやってくれる。しかも陣が興味を持ちそうな星詠みに関わる依頼を、持ってきてくれるというのだ。神代のものだけでなく、星魔教側の依頼まで。陣としては自身の世界の形を見つけるためにも、少しでも多くの星詠みと対峙しておきたい。ゆえにもはや願ったり叶ったり。快く奈月の姉の案を了承したのが事の経緯であった。ちなみに事務所の名前は奈月の姉が決めてくれたという。
「じんお兄ちゃん! お帰りなさーい!」
陣がシリウスの事務所の扉を開けると、一人の少女が顔をぱぁぁっとほころばせながら大きく手を振ってきた。そしてそのままはしゃぎ気味に、駆け寄ってくる。
陣のことを兄のように慕う彼女は一つ年下の少女で、名前を蓮杖セナ。茶色がかった髪に付けている大きなリボンがトレードマークで、あどけなさをただよわせる非常にかわいらしい女の子である。
彼女はこの事務所に入り浸っている人間の一人なのだ。
「ん? 誰かと思えば、セナか。お前も本当に物好きだよな。きっすいのお嬢様が、こんななにもないただの事務所に入り浸るなんて」
「えっへへ、だってここに来れば、じんお兄ちゃんに会えるんだもん!」
セナはとびっきりの笑顔を向けながら、ぎゅーっと陣に抱き着いてきた。
結果、まだまだ成長途中のやわらかい感触が押し寄せてきた。
「おー、なんか変な勘違いを生みそうな言葉だな」
そのあまりのいじらしい反応に、思わず心打たれそうになってしまう。なので彼女の髪をやさしくなでてあげながら、ツッコミを。
「うん? 勘違いでもなんでもないよぉ。セナはじんお兄ちゃんの熱狂的ファンだもん! 四六時中じんお兄ちゃんのこと考えてるし、会うためならたとえ火の中水の中、どこだって追い駆けにいくんだからぁ! もう、この一途な想いは誰にも止められないほど、あらぶってるよぉ!」
セナは目を輝かせながら、力説を。
「ははは、わかってるさ。セナは心酔してるんだよな。ただオレのようになりたいと憧れてるだけで」
「そうだよぉ! どこにも縛られず、ただ自分の信じた道をひたすら突き進むアウトローの生き方! そしてどんな問題も力で華麗に解決してみせる、熟練された手際! うん、かっこよすぎてたまんない! じんお兄ちゃんこそ、セナがずっと求めてきた理想の姿そのもの! あー、あこがれちゃうなぁ!」
セナは両腕をブンブン振り、うっとりしたまなざしを向けてくる。
この通り彼女はただ陣に心酔しているだけ。恋愛感情はとくにないらしい。
そんなセナと話していると、ふと少年の声が割り込んできた。
「ハハハ、相変わらずのなつかれようだね、陣」
「カナメまで、来てたのかよ。ほんと毎度毎度、我が物顔で入り浸りやがって……。ここはお前たちのたまり場じゃないんだからな」
事務所のソファーでくつろいでいる彼の名前は、雨宮カナメ。年は陣と同じ。温厚な性格の少年で、無駄にイケメン。なので学園内では女子からの人気がすごいのだ。彼とは昔から悪友の間柄。カナメもセナと同じくよくこの事務所に出没しており、星海学園ではよくつるむ関係であった。
「固いこと言わないでくれよ。僕たちの仲じゃないか」
「うんうん、そうだよぉ、じんお兄ちゃん! こんな楽しそうなことしてるのに、仲間外れはよくないよぉ!」
「まったく、お前ら本当に自分の立場がわかってるのか? オレは神代側で、そっちは星葬機構側。しかもむこうの最大戦力、断罪者の家系の人間ときたもんだ。というかカナメに関してはもう断罪者の称号を持ってるし。――はぁ……、本来なら会って早々、やり合う関係だろ」
意気揚々と主張してくるセナたちに肩をすくめながら、カナメの座っている向かいのソファーに腰を下ろした。
陣が呆れるのも無理はないだろう。なぜなら彼らは星葬機構側の人間であり、断罪者になることを課せられた名家の血筋なのだから。一応セナは子供なので、まだ断罪者の称号を持っていない。だが彼女の家はとある理由から断罪者としての責務を負っているため、いずれは断罪者となり役目をこなさなければならなくなるのだ
カナメに関してはまだ子供であるが創星術師としての格、さらには彼の家での立ち位置上すでに断罪者の称号を手にし猟犬の役目をこなしていた。このようにたとえ子供であろうと、条件に当てはまっていれば早いうちから断罪者の任につくことになるのである。ちなみに責務を負った名家の者でも、星詠みの素養が低いなど条件に当てはまらない場合は断罪者にならずに済むのであった。
「確かに僕たちは星葬機構に仇名す者たちを殲滅するために生まれた、断罪者側だね」
なぜ星葬機構がパラダイスロストを収拾でき、その後の恐怖による支配体制を整えられたのか。その答えは星詠みを行使する事を星葬機構に認められた、カナメたち断罪者の家系だ。
パラダイスロストが起こり、世界は混沌の渦へとたたき落とされた。ここで星葬機構を取り仕切るレイヴァースは、とある重い決断をすることになる。現状魔法使いの暴走ならば、自分たちでも食い止められるのだ。彼らは少し魔法をかじった素人ゆえ取り押さえるのも可能であり、なによりまだ正気。ある程度魔法を振るえば、力を使える感動も薄れ大人しくなるのだから。
しかし暴走した創星術師は違う。彼らは狂気に取りつかれ、自らが破滅するまで止まりはしない。しかもここでの一番の問題は、彼らに対し普通の魔法使いでは基本歯が立たないということ。星葬機構側にも創星術師はいるが、その数はたかが知れている。もはや世界中で起こる創星術師の暴走を止めるには、人手が足りなさすぎたのだ。
そこでレイヴァースは英断する。星詠みという強力な毒に対抗するには、もう毒をもって毒を制すしかない。ゆえにレーヴェンガルトや星魔教の影響で世界中に広まっていた創星術師を招集した。彼らは暴走せず星詠みを使いこなせる猛者たち。暴走した創星術師を殲滅できる力を持つため、彼らに事態の収拾を任せたのであった。これが断罪者と呼ばれる者たちの始まりなのである。
「星詠みの許可や断罪者という地位を見返りに、猟犬の役目を与えられてるから、星葬機構に刃向かう神代は倒さなければならない敵になる」
パラダイスロスト時に招集された創星術師たちだが、当然ただで動くはずもない。それ相応の見返りがなければならないということで、レイヴァースは英断し断罪者という制度を作った。それこそ制限付きだが星詠みを行使し極めることの許可と、権力を振るえる地位を見返りに、今後星葬機構へ従属を約束するというものである。
これにより招集に応じた創星術師たちは星葬機構の殲滅対象から外れ、安心して魔道を求道することができる。しかもそれなりの権力を振るえる、地位付きでだ。もはや彼らには願ったり叶ったりな見返りだったため、多くの者が星葬機構の猟犬になることを受け入れたという。
このパラダイスロストにおける星葬機構の招集こそ、今後の創星術師たちの命運を決める分岐点といっていい。星葬機構の猟犬となり飼いならされ続けるか、鎖につながれるのは御免だと自由を求めるかの二択。ある者は見返りのために星葬機構への従属を。ある者はどこにもつかず隠れながら魔道の求道を。ある者はレーヴェンガルト側や星魔教に身をひそめた。そしてある者は神代の星詠みの研究を手伝うことを条件に、クロノスに保護を求めた。こうして創星術師たちは先のことを見すえ、各勢力についていったのである。
ちなみに断罪者の権限に関しては、星葬機構が彼らという圧倒的戦力を保有していることを、常に世界中に知らしめるための狙いがあったらしい。パラダイスロストで力を見せつけ猛威を振るった断罪者が、権力を振りかざしながら今も変わらず目を光らせていることを。こうすることで人々に星葬機構や断罪者は畏怖すべき存在と認識させ、恐怖による支配体制を強固なものにできたのであった。
「だけどそれはあくまで仕事での話。今のプライベート時にはまったく関係ないさ。そもそもそこまで星葬機構に加担する道理はないしね」
「おいおい、そんな星葬機構を軽んじること言っていいのか? ただでさえカナメは最上位クラスに位置する断罪者、雨宮家の次期当主だろ。ほかの断罪者たちを率いる立場なんだから、もっと断罪者としての責任感をだな」
カナメのあまりのやる気のない答えに、ツッコミを入れる。
そう、雨宮家は断罪者の中でも最上位クラスの名家。もはや星葬機構の必須戦力であり、その権力も相当なもの。しかも彼はその雨宮家の次期当主様であらせられるのだから、本来星葬機構の批判的言葉はもちろん、神代とつながりがあるシリウスに来るのはまずいのだ。
「ハハハ、やだね。第一僕たちはもとをたどれば、神代のような魔道を極める者。星詠みの研究こそすべてなんだから、世界のためとか言う正義感はあまり持ち合わせていないのさ。ただ自分たちの保身のため、命令を聞いてるようなものだからね」
陣の指摘を、もはや笑い飛ばすカナメ。
ただ見返りのために動いているだけであって、星葬機構に対する忠誠心はそこまでないようだ。魔道の求道は制限され、星葬機構側にいいように使われる日々。きっと首輪を付けられていることへの不満も、相当なものなのだろう。たがたとえどれほど不満が募ろうと、彼らは星葬機構から脱却することができない。それもそのはず星葬機構がほかの断罪者たちを集め、制裁を下しに来るからだ。星葬機構側としては今の断罪者のまとまりを乱したくはない。ゆえに見せしめもかねて、離反した者の末路を知らしめるのである。第一断罪者ほどの創星術師を野に放てば、世界に大きな害を及ぼすゆえなおさら見逃すわけにはいかないのだ。よってたとえ全断罪者を総動員してでも潰しにいくだろう。 なのでもし断罪者に名をつらねる名家の身内が離反した場合、自分たちとは関係ないとすぐさま縁を切り身の潔白を証明するのである。そう、まるで陣の時のように。
「というか、キミだけには言われたくないんだが? 元四条家の次期当主である陣にはね」
そしてカナメは肩をすくめながら正論で反撃してきた。
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