創星のレクイエム

有永 ナギサ

文字の大きさ
54 / 114
2章 第1部 水無瀬灯里

53話 陣と灯里の逃亡生活?

しおりを挟む
「奈月、灯里あかりを確保したぞ」

 陣は奈月に、灯里を見つけたことを報告する。
 リルには電話をかける前に、引き続き周りの警戒を頼んでいた。なのでこの路地裏にいるのは陣と灯里だけなのであった。

「あら、早いわね。じゃあ、さっそく今から指定する場所に隠れなさい、と言いたいところなんだけど……」

 ふと奈月の口調にかげりが。

「どうしたんだ?」
「少し面倒なことになってね。実は星葬機構だけじゃなく、クロノス。主に陸斗りくと兄さん側が、この件を追ってるみたいなの。だから星葬機構が重要参考としてる灯里を、探してる」

 陸斗側は神代かみしろ次期当主である神楽かぐらに、敵対する勢力。彼らは成果をもって次期当主の座を奪おうとしているので、今回の件もその一環なのだろう。最悪彼らとぶつかる可能性も。考慮しなければならない。

「おいおい、マジかよ」
「だからクロノス側の隠れ家が、安全とはいえないの。陸斗兄さんはアタシたちも灯里を探してることをつかんでるみたいだし、張り込んでる可能性があるわ。そういうわけで避難場所の件、もう少し待ってちょうだい。今、向こうに気づかれないように用意してるから」
「了解した。用意出来次第、連絡をくれ」

 この分だと少し時間がかかりそうだ。
 奈月の行動はマークされている可能性が高いため、慎重しんちょうに動かなければならないはず。星魔教のカーティス神父あたりに頼めば、陸斗側をけるだろう。だが例の創星術師と星魔教の大司教につながりがあるみたいなので、そっちの手も使いにくいといっていい。
 通話を切り、今だ路地裏に隠れている灯里の方へ歩み寄る。

「奈月、なんて言ってたの?」
「わるい知らせだ。星葬機構だけでなく神代のある一派も、灯里のことを追ってるらしい。その関係上、避難場所を確保するのにもうしばらくかかるそうだ」
「そっか、何事もそううまくいかないね」

 灯里はため息交じりに肩を落とす。

「灯里、事態の深刻さを理解したか? 星葬機構に神代、それに例の創星術師も狙ってくるかもしれない状況だ」
「あはは、灯里さん、人気者で困っちゃうね!」

 陣の忠告に、灯里は冗談めかしに笑いウィンクを。
 こんな状況でも笑える彼女のポジティブさには、感心せざるを得ない。

「さっきも言ったがその原因は、灯里がリル・フォルトナーの擬似恒星を持ってるからだぞ。それは普通の一般人が持ってて、いい代物じゃない。だからさっさと手放すべきだ」

 彼女の身の安全も考え、はっきりと告げた。

「陣くんも、リルみたいなこと言うんだ」
「今手放せば事態はそこまで深刻にならないし、これからも普通の日々を過ごせる。灯里自身、わかってるだろ? 星葬機構やクロノス、おまけにレーヴェンガルトまで。一体今どれだけ危険な状況に、置かれているのかをさ」
「――それでも私は手放したくないよ。リルを……」

 灯里はリル・フォルトナーの擬似恒星であるペンダントをにぎりしめ、切実にうったえてきた。
 そのあまりの想いの強さに、ここは一端引くしかないようだ。

「まあ、この話は、安全な場所に着いてからか。――それはそうとオレが来なかったら、どうする気だったんだ?」
「あはは、とりあえずほとぼりが冷めるまで、身をひそめようとは思ってたよ! 逃亡生活もなかなか刺激的そうだし、むねをはずませながらね!」

 陣の疑問に、灯里はぱぁぁっと笑顔を咲かせて主張を。

「楽しんでたのかよ。ははは、ずば抜けたポジティブ精神だな」
「ふっふっふっ、どんな時でも楽しむのが、私のもっとうだからね! せっかく貴重な経験ができてるのに、楽しまないと損でしょ?」

 胸に手を当て、ふふんとドヤ顔で宣言する灯里。

「まあ、一理あるか」
「ということで、陣くんも一緒にいかがかな? 私とのロマンスあふれる逃亡生活! もしかするとその途中で、二人の距離が急接近し愛の逃避行展開まで発展するかもしれないよ!」

 灯里は手を差し出し、歓迎ムードで誘ってくる。興味を引かそうとしているのか、かわいらしくウィンクして意味ありげにだ。

「ははは、さすがにそこまで付き合ってられないな。オレにもオレのやることがあるし」
「そこをなんとか! ここはプロの力を、ぜひとも借りたいんだー! でないと寝床一つ、見つけられるかどうか。――うぅ、女の子に野宿はキツイよー! 私の快適な逃亡生活のためにも、なにとぞお力をー!」

 灯里は涙目になりながら手を合わせ、必死に頼み込んできた。
 どうやら陣を誘おうとしてたのは、これが理由だったようだ。確かに今まで普通の日々を過ごしてきた灯里にとって、いきなり逃亡生活などできるはずがない。陣が来なければ、
あのままずっと途方に暮れていたかもしれない。

「いや、自分のまいた種だろ。自分でなんとかしろよ」

 ここで引き受けでもしたら、リルの件での説得材料が一つ減ってしまうことに。よってとりあえず正論をツッコンでおいた。一応灯里が逃亡生活を続けることになったならば、さすがにかわいそうなので助ける心積もりではあるが。

「えー!? じゃあ、陣くん、依頼ということで私をかくまってよー」

 灯里は陣の腕を揺さぶりながら、ねだってくる。

「依頼ならいいが、金はあるのか?」
「――そ、そこは親友のよしみでダメー?」
「ははは、一生こき使っていいなら、面倒みてやらんこともないぞ?」

 瞳をうるうるさせ上目遣いでお願いしてくる灯里に、笑ってたたみかける。

「うわーん、ブラックすぎない!? それ!?」
「――さて、そんなことより奈月からの連絡はまだか。こうなったら自分で探した方がいいかもしれない。――確か今日は……、一応使えるか。しかたない。今日の宿やどはここに決定だな」

 両腕を胸元近くでブンブン振りながら抗議してくる灯里を放って、今後のことを考えながら通信端末をいじる。そしてとある人物のメールを見て、ある決断を。

「宿!? さっすが陣くん! さっそく屋根のあるところで寝られるなんて、頼りになるー! もう、一生ついていきますぜ! 兄貴!」

 すると目を輝かせ、陣をあがめてくる灯里。

「期待していいぞ。なんたって今回の宿は、なかなかの物件だからな」

 こうして灯里とリルを連れ、目的の宿へと向かう陣なのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...