創星のレクイエム

有永 ナギサ

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2章 第1部 水無瀬灯里

56話 灯里の問い

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 あれから灯里あかりを探しにいった陣は、星海ほしみ学園高等部の校舎近くにいた。というのもリルいわく、灯里がここにいるらしいのだ。灯里が持つ擬似恒星に宿るリルからして見れば、場所の特定など朝飯前とのこと。なのでリルの案内にそって、すぐさまこの場所まで追ってきたのであった。
 夜の校舎にはもう人が残っていないため、どこも電気が消え静寂に包まれている。普段は生徒たちの活気にあふれている場所ゆえ、こうも静まり返っているとものさみしく感じてしまう。周囲は月明かりに照らされているため、思ったより明るい。差し込む月明かりを頼りに校舎内を探検でもしたら雰囲気、わくわく感ともに最高であろう。
 ただここで一つ気になるのは、夜だというのに風の魔法を利用した防音装置が起動していること。星海学園だと授業中に魔法を行使することが多いため、ほかより防音設備がしっかりしていた。なので装置が起動していれば、中で激しい戦闘があったとしてもかなり音を抑えられるのだ。

「灯里の奴、あんなところに」

 しばらく歩いていると、グラウンドの真ん中に灯里の後ろ姿が。

「ジンくん、さっきのこともあるし、わたしは少し離れとくんだよ」
「わかった。周りを警戒しといてくれ」

 リルと別れ、灯里の方へと向かう。
 グラウンドは月明かりに照らされ、まるでステージに淡い青色の光が差し込んでいるかのよう。まるでこれからなにかが起こりそうな予感にさいなまれる。

「灯里、急に飛び出していったから、ビックリしたぜ」
「あー、裏切者が来たー。リルから聞いたよ! 陣くん! リルと組んで裏でこそこそしてたんだって? 灯里さん、信じてたのになー」

 すると灯里が陣の方を振り返り、ジト目で非難の言葉を投げかけてくる。

「――裏切者って……、一応、あれは灯里のための行動でもあったんだぞ」
「えー、でも、リルの味方をしたことには、変わりないよねー? あーあ、親友よりも小さな女の子をとるなんて、やっぱり陣くんはロリコンさんだったかー。灯里さん、悲しいよー、およおよ」

 灯里は肩をすくめ、わざとらしく泣き崩れだす。
 飛び出した時はどうなるかと思ったが、いつもの彼女のようで内心安堵あんどする。

「ははは、最近ロリコンやらストーカー呼ばわりされすぎて、いい加減キツイおきゅうをすえたくなるんだが?」
「あはは、まあまあ、陣くん、そう怒りなさんな! このいじりも、仲よし特有のスキンシップみたいなものでしょ!」

 だんだんこみ上げてくる怒りに対し、灯里は陣の背中をバシバシたたきながら親しげな笑みを。

「まったく、それが周りに定着したら、どうしてくれようか……。――いや、そんなことよりほら、灯里、さっさと戻るぞ。お前は追われてるんだから、外にいるのは危険だ」

 そんな彼女の反応に、毒気を抜かれてしまう。本当はまだ思うところがあるが、今はそれどころではない場面。ゆえにここはグッとこらえることに。

「えー、せっかくなんだから、もっとここを満喫していこうよー! 夜の学園なんて、テンション上がるじゃん! まさに青春まっさかりみたいなー!」 
「――あのな……」

 陣の腕を揺さぶりテンション高くおねだりしてくる灯里に、あきれてしまう。彼女は本当に今の自分の立場がわかっているのだろうかと。
 しかしその心配はつかの間、灯里は真剣なおもむきで話を振ってきた。

「――それに誰もいないここでなら、込み入った話もできるだろうしね……」
「なるほど。ここで話を付けようというわけか」

 どうやら彼女は始めからこの場所で、リルの件の話をする気だったみたいだ。
 ここでなら近くにいろはやセナがいないため、話に集中できる。追手の方もグランドの中心という見晴らしのいい場所なので、見つかってもいち早く気付けた。よってそれなりに込み入った話をするのに、適しているかもしれない。

「そういうこと! ねえ、陣くん、私はどういう人間だと思う?」
「ふむ、周りを面白おかしく巻き込む、少し困った明るいやつといったところか。陽だまりの日々がよく合う、どこにでもいる普通の女の子……、だと思う……」

 灯里の意味ありげな質問に対し、少しあいまいな感じで答える。
 これまでの彼女を見れば、普通の明るい女の子。だがどこか引っかかりを覚えてしまっている陣がいた。

「あれれ? 最後、やけに自信がないように聞こえるよ?」

 ほおに指を当て、小首をかしげてくる灯里。

「これは普段の灯里を見ての感想だ。でもオレの勘が、なにかあると叫んでいる。確証はないが、胸騒ぎがして止まない」
「あはは、さっすが陣くん、するどい! その勘は見事に的中してるよ! そう、なにを隠そう、灯里さんは普通の女の子じゃない! 実は結構、わけありのヒロインだったのだよ!」

 灯里はむねにバッと手を当て、堂々と宣言を。

「――ヒロインって……、いや、この際、野暮なことはいわない。それで灯里の秘密とやらを教えてくれるのか?」
「ちっちっちっ、乙女の秘密をそう簡単に知ることなんてできないよ! 陣くんが灯里さんの好感度を上げて、もっと攻略しないと!」

 灯里は人差し指を左右に振りながら、意味ありげにウィンクしてきた。

「好感度上げなんてめんどくさいこと、ごめんなんだが」
「あはは、陣くんらしい答えだね! 仕方ないから、ここは優しい灯里さんが大サービスしてあげよう! ――ごほん、じゃあ、ここに乙女の一大告白をするよ……、うん、告白を……」

 肩をすくめる陣に、灯里は呼吸を整えなにやら告白しようとする。
 しかしよほど大事なことなのか、その先がなかなかつむがれない。

「――なんだ、改まって。さっさとやってくれ」
「もー、こっちにも心の準備があるの! 少しは空気読んで欲しいよー」

 陣のツッコミに、灯里はジト目で抗議してくる。
 ここは彼女の好きなタイミングまで、待つしかないようだ。

「わかった、わかった。好きなタイミングで始めてくれ」
「――よし、じゃあ、告白するね! 実は私、陣くんと初めて会った時、内心おさえきれないぐらい舞い上がってたんだ! もう、あまりにもうれしくてうれしくて、そのまま抱き付きたいぐらいだった! うんうん、その時の熱ときたら、陣くんの好感度爆上げで夢中にさせるほど! 私の中では友達とかそういった垣根かきねを超え、一瞬で親友レベルに上り詰めたね!」

 灯里は胸をぎゅっと押さえ、恋する乙女のごとく熱烈に告白を。しかもその時のことを思い出しているのか、これでもかというほど満ち足りた笑顔でだ。

「おいおい、そこまで親しげになるってどういう感情だよ? まさかほんとに……」
「あはは、残念でした! 恋とかそういった感じじゃないよ! この気持ちは陣くんも感じていたはず! だって慣れ慣れしくする私を、すぐに受け入れてくれたよね? 私のこと特別とか思ってくれたりしなかった?」

 陣の顔をのぞき込みながら、かわいらしく小首をかしげてくる灯里。

「――うっ、確かに……。でも、理由がわかってないんだよな……」

 その主張には心当たりがありすぎた。そう、四条陣は水無瀬みなせ灯里をなぜだか特別に感じてしまっている。それは陣の悲願である魔道の求道より、優先しそうな勢いで。

「あはは、答えは簡単! 陣くんは無意識にこう思ってたんじゃないかな? 水無瀬灯里なら、四条陣が抱える葛藤かっとうを理解してくれると!」
「なっ!? どうしてそんなことがわかるんだ?」

 灯里の答えに、みょうに納得してしまっていた。
 それはこれまで言葉にできそうで、できなかった答え。今教えられて始めて、明確に認識できたといっていい。なので驚愕きょうがくしつつも、どうしてわかったのか聞かずにはいられなかった。

「――それはね……」
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