創星のレクイエム

有永 ナギサ

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3章 第3部 学園生活

104話 学園案内

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 陣と奈月は風紀委員のクリスとエドガーたちと別れ、灯里の元へ。
 そして学園案内を再開しだした。

「さあさあ、気をとり直して次行こう!」

 灯里はタッタッタッと駆けていき、はしゃぎ気味に陣たちのほうへ振り向いた。

「ふむ、とはいえめぼしいところは案内しきったような」
「あはは、なんならマニアックなところでもいいよ!」
「そうね。じゃあ研究とうにでも行きましょうか。今向こうは新入生を入れようと、勧誘してるはず。体験や説明とかいろいろしてくれるはずよ」

 陣が考えていると、奈月が提案してくる。

「あの研究室制度の? うーん、あまり堅苦しいのは……」

 灯里はテンションが一気にダダ下がりする。

「ちゃんとしてるところはあれだけど、たまにくだらないおもしろいものや、魔法工学を用いたロボットとか、ロマンあるものもあるのよね」
「わー! それならおもしろそうかも!」

 これには目を輝かせて食いつく灯里。
 研究室といえば本格的で、小難しいものばかりと思うかもしれない。だが中には魔法関連のマニアック系やオカルト系など、ゆるい内容のエンジョイ系研究室もけっこうあるのだ。学園側は生徒の魔法に対する自主性を尊重しているため、わりとなんでもありなのだそうだ。

「あの神代かみしろ奈月が来たって、向こうは大騒ぎになるやつだな」
「あら、騒がせはするだろうけど、わりと歓迎もしてくれるはずよ。うまくアタシの目にかなえば、追加の研究資金やアドバイスがもらえるかもしれないんだもの。ちょっとしたイベントにもなってるぐらいだし」

 奈月が髪をかき上げ、得意げに。
 そう、彼女は見学だけでなく、神代の人間として生徒たちの支援もしているのだ。自身のポケットマネーまで使い、彼らの研究を後押ししているのである。

「イベント!? なにそれ? 教えて、教えて!」
「始めは琴音ことねとぶらぶらと研究室を見学してたんだけど、あちこちから自分たちのところにも来てお力添えのチャンスをって要望があってね。こっちも見識が深められるし、学生たちの力にもなれる。どちらもいいことづくめだったから、いっそのことそういう機会を作ろうってなったのよ」

 研究室側からすれば、追加の資金が手に入るかもしれないのだ。しかもそこにあのクロノスの表の研究所所長である神代琴音から、アドバイスがもらえるときた。もはや研究が一気に進むチャンスゆえ、彼らからしたら願ったり叶ったり。なにがなんでも来てほしいと、みな声を大にしていたらしい。
 ちなみにこの支援イベント。奈月大好きっ子の琴音にとっては、楽しい楽しい奈月とのデートらしい。毎回すごく気合を入れ、二人っきりになりたいため陣に絶対こないでほしいと念を押してくるのだという。

「それに研究室にいる学生は、いづれクロノスの技術部門にくる可能性が高いの。ここで関係性をよくしてコネをつくっておくのは、正直ありなのよね。だから毎回そのがんばりに見合った援助金を出してるのよ」

 奈月は不敵な笑みを浮かべる。
 
「はえー、これができる女」
「そういうわけだからアタシと行けば、いろいろ接待もしてくれるかもね」
「わーお! じゃあ、決まりだね! さっそく行こう! うん? あれってリル?」

 研究棟へ向かおうとすると、灯里が学園内の敷地を歩いているリルを見つける。

「あっ、アカリ、ナツキちゃん、マスターなんだよ!」

 リルも陣たちに気づいたようで、こちらへ駆け寄ってきた。
 そしてもう一人。さきほどまでリルと一緒にいたであろう、学園長のしおりも歩いてくる。

「あなたがリルさんが言っていた水無瀬さんですね。初めまして。星海学園学園長の春風栞です」

 栞はほがらかな笑みで、親しげにあいさつを。

「わわっ!? あの学園長さん!? どうもー、水無瀬灯里です! ――えっと、リル、なんで学園長さんと一緒にいるの?」

 灯里は急な大物に少しビビりつつも、リルに小声でたずねる。

「これの手続きをしてもらってたんだよ! じゃじゃーん!」

 リルは首からぶら下げていた名札を、はしゃぎながら見せてきた。
 そこには特別ゲストという、リルの証明書があった。ここで疑問に思うのはなぜか彼女の名字が神代になっていることだろう。

「特別ゲスト? 神代リルだと?」
「そうなんだよ! なんと神代の身分をもらっちゃったんだ!」
「ふふ、リルさんはこの星海学園の創始者のお孫さんということにして、特別ゲストになってもらいました。なので学園内でも自由に行動できます」

 首をひねっていると、栞が丁寧に説明してくれる。

「えへへ、これも社会勉強の一環ってことにしてるらしいんだよ」
「えー!? なんかすごいことになってる!?」
「なるほど。これが奈月の言ってた、どうにかするってやつか」
「くす、そうよ、といいたいところだけど、少し違うのよね。アタシがうまいことやろうとしたら、そのことを聞きつけて代わりに全部取り計らってくれた人がいたの。そしたらこのとおり。最善の形で実現されてたってわけ」

 奈月が肩をすくめながら、おかしそうに笑う。

「それって神楽さんかスバルさんが?」
「いいえ、もっと上よ……」
「――おいおい、もっと上って……。神代家当主よりも上の人間がいるのかよ」

 奈月の意味ありげな言葉に、旋律せんりつを覚えてしまう。

「それがいるらしいのよ。表舞台には一切姿を現わさない、神代をべる存在。神代家当主や次期当主クラスじゃないと会えさえしない大物がね」
「その人がリルのために?」
「ええ、彼女のためならこれぐらいお安いごようさ、って直々にやってくれたそうよ」

 奈月の様子を見るに、その人物に対しかなり畏怖いふの念を感じているみたいだ。

「これで学園の外で、さみしく待たずに済むんだよ!」

 リルがうれしそうにぴょんぴょん跳びはねる。
 彼女は霊体になって姿を消せるため、その状態で学園内を好きに行動すればいいと思うかもしれない。しかし霊体状態でしばらく居続けると、意識が薄れていってしまうらしい。なのでできれば実体のままでいたいとのこと。ちなみに実体のままでいるのは力とかもいらず、とくに制限もないらしい。

「わーい! これでリルと学園でも一緒にいられるんだね!」
「えへへ、休憩時間や放課後ならだね。さすがに授業時間は学園長室でくつろがせてもらったり、栞さんについて回ったりするだけでおとなしくいい子にしてるんだよ」
「もしかして栞さんにめんどうみてもらう形になるのか。申しわけない。子供のおもりを任せてしまって。なにかわがままいったり、やらかしたらすぐに呼んでください。しつけに行くので」

 リルの頭をポンポンしながら、保護者のように頭を下げる。
 するとこれには納得いかないと、抗議してくるリル。

「ちょっと!? マスター、なにその手のかかる子供みたいなあつかい!?」
「いや、実際手のかかる子供だろ」
「むー」
「いえいえ、こんなかわいらしいステキな話し相手ができて、とてもうれしいですよ。ふふ、むしろ私の方が、お世話になるかもしれません」

 栞は手をポンと合わせ、ほんわかとほほえむ。
 純粋に心から歓迎してくれているようだ。

「シオリさんはマスターやアカリと違って、すごくやさしくて、甘やかせてもくれるんだよ。おいしいお菓子や紅茶も用意してくれて、ステキなお姉さんがお世話もしてくれる。あー、なんて居心地がいいんだろう。もう、ずっとここに居たいぐらいなんだよ♪」

 リルが栞のスカートにしがみつき、うっとりしだす。

「リル、そんないい思いしてずるいよー!」
「えへへ、うらやましいでしょー」

 両腰に手を当て、ふふんと胸を張るリル。

「水無瀬さんもいつでも遊びにきてくださいね」
「はーい! ぜひ行かせてもらいまーす!」
「奈月ちゃんも。前に話していた茶葉が、ようやくとり寄せられたんですよ」
「あら、それはごちそうになりにいかないと、いけないわね」

 そして女性陣は、キャッキャッと話が盛り上がっていく。
 そこでふと気づいた。少し離れたところでカーティスが、陣へほほえみかけていることに。
 なにやら陣に用があるみたいなので、彼の元へと向かった。

「カーティス神父、どうしたんですか?」
「それが一つ、陣さんにお願いがありまして。あなたのクラスメイトの里村末緒みおさんの付き添いで、創星クラブにいってほしんです」

 星海学園には、星魔教が裏で運営している大規模な星詠みのコミュティがあるのだ。それこそ創星クラブ。星詠み関係の講義やレクチャー、資料の閲覧、さらにそっち方面の交流の場としても利用されていた。

「末緒の?」

 今日の朝の魔法の実技訓練のとき、いろいろ話した末緒のことを思い浮かべる。

「はい、彼女は星詠みに大変興味を持ってくれたみたいなので、創星クラブへ見学を勧めたんですよ。でも一人だと、心細いはず。そこで陣さん。あなたも創星クラブにいったことがないそうですし、この機会に一緒に見学してみてはと」
「うーん、創星クラブですか……。今となってはもう完全に意味が……」

 創星クラブのことは前から知ってはいたが、実際に行ったことはなかった。さすがに学生が利用する程度の場所では、陣の探し求めていた輝きとは出会えないだろうと思っていたからだ。自身の輝きを手に入れた今だと、なおさら行く必要はない気がしていたといっていい。

「これは陣さんだけでなく、もしかすると奈月さんのためになるかもしれません」
「へー、奈月の」

 奈月にも関係があるということは、神代案件ということ。どうやら今、創星クラブでは見過ごすことができないなにかが起こっているのかもしれない。

「ワタシの思い過ごしでなければ、おそらく……」

 眼鏡をくいっとし、意味ありげにかたるカーティス。
 確証はないが、なにかに感づいたということだろう。

「わかりました。ぜひ行ってみます」
「創星クラブには、ワタシから二人のことを伝えておきますので」
「陣くーん、今から学園長室へお茶しにいくよー!」

 灯里が手を大きく振って、声をかけてくる。
 どうやら栞にお茶会に誘われたみたいだ。

「わかった。ではカーティス神父」
「ええ、頼みましたよ、陣さん」

 カーティスに見送られ、灯里たちの方へ戻る陣であった。


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