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3章 第3部 鳥かごの中の少女
145話 透vs謎の敵
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「マズイ!?」
透はレイジとの間に降ってきた物体を知っていた。
ゆえにすぐさまこの場から引き離そうと駆け寄るが、さすがに間に合わない。黒い筒状の小さな物体は地面にぶつかり、そして。
「スモークグレネードを持ち出してくるなんて!?」
透の予想通り物体の正体はスモークグレネード。中から白い煙が放出され、辺りがまたたく間におおわれる。結果、透はレイジとカノンを視界から見失ってしまった。
(このまま逃がすわけには!?)
レイジの反応から、あれは彼らの一手なのは間違いない。となると視界を奪ったあとレイジたちがとる行動はおそらく逃走。そのため今すぐこの煙の中を抜け出し、彼らを追わなければ。
「ッ!?」
だが追いかけようとした次の瞬間、異変が。
透はとっさにウデを前に出し、防御のかまえを。それもそのはずなんと透のみぞおち目掛けて、掌底が襲ってきたのだから。
(クッ、鋭い掌底だ!? 動きが洗練されてる!?)
奇襲をなんとかしのぐことに成功。
今の一撃から、かなりの戦闘技術を持っているのがわかる。しかも相手はこの視界が悪い白煙の中だというのに、正確にこちらを狙ってきた。まるでスモークグレネードの効果を受けていないかのように。
「フッ」
(二撃目が来る!?)
みずからの直観にしたがい後方へと跳(と)ぶ。
すると透の目の前すれすれに、回し蹴りの一撃が。もしあと一瞬でも反応が遅れていれば、今の攻撃は当たっていただろう。
(やっぱりこちらをとらえてるか。となるとさすがに分が悪いね)
向こうは視界を確保する装備、おそらくはガスマスクを付けているらしい。よってこのままでは押し切られるのも時間の問題であろう。
透は耳をすまして、なんとか敵の動きを把握しようとする。
「――撤退した?」
だが耳をすましかまえていると、相手が後方に駆けていく足音が。どうやら向こうは引いたらしい。ただ逃げながらもスモークグレネードを投げているらしく、しばらくここら一帯は白煙におおわれたままになるだろう。一応追撃は可能だが、相手が見えている以上返り討ちに合うのは目に見えている。ゆえにここはルナのもとに戻り、彼女を避難させるのが正しい選択であろう。
「ルナ、大丈夫かい?」
「私は無事です。透は?」
ルナの声をたどり、彼女の方へ駆け寄った。
「敵の奇襲を受けたけど、なんとかやり過ごせたよ」
「カノンはどうしましたか?」
「ごめん。おそらく逃げられただろうね」
「――そうですか……」
ルナの安全を確保していると、白煙が晴れてきた。
もちろんさっきまでいたレイジとカノンの姿はない。もうこの場から立ち去ったはずだ。
「透、すみません。事態を収拾するため、もうしばらく付き合ってもらえませんか?」
ルナは申しわけなさそうに頼み込んでくる。
アポルオンの重要人物であるカノンが逃走を謀ったのだ。となれば序列二位側のルナたちにとって決して見過ごすわけにはいかない事態。なんとしてでも彼女を連れ戻さなければ。
「ボクのことは気にしないでくれ。それが役目だしね」
「助かります。では伊吹に連絡を取りますね」
ルナはそう言ってターミナルデバイスで連絡を取り始める。
(――今の敵、もしかして……)
攻撃をさばいていた時見た相手側のシルエット。どこか見覚えがある気がしたのだ。小柄だったため、おそらくは少女。そしてあの戦闘技術は透と同じものだったような。ふと、脳裏をかすめるのは透のよく知る人物。そういえば今朝、金になる依頼が入ったとか言っていたような気が。
(はは、まさかね……)
透は軽く笑いながら、レイジたちが立ち去ったであろう方向を見すえるのであった。
透はレイジとの間に降ってきた物体を知っていた。
ゆえにすぐさまこの場から引き離そうと駆け寄るが、さすがに間に合わない。黒い筒状の小さな物体は地面にぶつかり、そして。
「スモークグレネードを持ち出してくるなんて!?」
透の予想通り物体の正体はスモークグレネード。中から白い煙が放出され、辺りがまたたく間におおわれる。結果、透はレイジとカノンを視界から見失ってしまった。
(このまま逃がすわけには!?)
レイジの反応から、あれは彼らの一手なのは間違いない。となると視界を奪ったあとレイジたちがとる行動はおそらく逃走。そのため今すぐこの煙の中を抜け出し、彼らを追わなければ。
「ッ!?」
だが追いかけようとした次の瞬間、異変が。
透はとっさにウデを前に出し、防御のかまえを。それもそのはずなんと透のみぞおち目掛けて、掌底が襲ってきたのだから。
(クッ、鋭い掌底だ!? 動きが洗練されてる!?)
奇襲をなんとかしのぐことに成功。
今の一撃から、かなりの戦闘技術を持っているのがわかる。しかも相手はこの視界が悪い白煙の中だというのに、正確にこちらを狙ってきた。まるでスモークグレネードの効果を受けていないかのように。
「フッ」
(二撃目が来る!?)
みずからの直観にしたがい後方へと跳(と)ぶ。
すると透の目の前すれすれに、回し蹴りの一撃が。もしあと一瞬でも反応が遅れていれば、今の攻撃は当たっていただろう。
(やっぱりこちらをとらえてるか。となるとさすがに分が悪いね)
向こうは視界を確保する装備、おそらくはガスマスクを付けているらしい。よってこのままでは押し切られるのも時間の問題であろう。
透は耳をすまして、なんとか敵の動きを把握しようとする。
「――撤退した?」
だが耳をすましかまえていると、相手が後方に駆けていく足音が。どうやら向こうは引いたらしい。ただ逃げながらもスモークグレネードを投げているらしく、しばらくここら一帯は白煙におおわれたままになるだろう。一応追撃は可能だが、相手が見えている以上返り討ちに合うのは目に見えている。ゆえにここはルナのもとに戻り、彼女を避難させるのが正しい選択であろう。
「ルナ、大丈夫かい?」
「私は無事です。透は?」
ルナの声をたどり、彼女の方へ駆け寄った。
「敵の奇襲を受けたけど、なんとかやり過ごせたよ」
「カノンはどうしましたか?」
「ごめん。おそらく逃げられただろうね」
「――そうですか……」
ルナの安全を確保していると、白煙が晴れてきた。
もちろんさっきまでいたレイジとカノンの姿はない。もうこの場から立ち去ったはずだ。
「透、すみません。事態を収拾するため、もうしばらく付き合ってもらえませんか?」
ルナは申しわけなさそうに頼み込んでくる。
アポルオンの重要人物であるカノンが逃走を謀ったのだ。となれば序列二位側のルナたちにとって決して見過ごすわけにはいかない事態。なんとしてでも彼女を連れ戻さなければ。
「ボクのことは気にしないでくれ。それが役目だしね」
「助かります。では伊吹に連絡を取りますね」
ルナはそう言ってターミナルデバイスで連絡を取り始める。
(――今の敵、もしかして……)
攻撃をさばいていた時見た相手側のシルエット。どこか見覚えがある気がしたのだ。小柄だったため、おそらくは少女。そしてあの戦闘技術は透と同じものだったような。ふと、脳裏をかすめるのは透のよく知る人物。そういえば今朝、金になる依頼が入ったとか言っていたような気が。
(はは、まさかね……)
透は軽く笑いながら、レイジたちが立ち去ったであろう方向を見すえるのであった。
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