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3章 第4部 逃走劇
152話 作戦内容
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レイジと結月はアビスエリアの十六夜島内、聖域と呼ばれる上位序列ゾーンで待機していた。空は薄暗くなってきており、もう少し時間がたてば完全に夜になるころ合い。そうすれば闇にまぎれながら逃げることができるので、発見されるリスクをかなり減らせるはず。
次第に街灯の光がつき始める、静寂に包まれた街中。相変わらずアビスエリアの建物は廃墟ふうではなく、きれいな状態で慣れなかった。これまではどこも荒れていたため躊躇なく暴れられたが、こうも普通の街並みが広がっていると少し壊すのをためらってしまいそうだ。
この上位序列ゾーンに関しては権限を持つ者に直接連れていってもらわなくてよく、許可証を発行してもらえばオッケー。なので前回同じく結月の妹の片桐家次期当主、美月に頼んで入れてもらったのである。ただ上位序列ゾーンへの許可証の発行にも制限があるため、そんなにも戦力を連れていけないのだが。
そして後方にあるのは管理区ゾーン。以前結月に説明してもらった話によると、ここはアポルオンメンバーがセフィロトの特別なデータベースにつながれる場所。構造は少し特別で、現実の十六夜島と少し変わっているらしい。まず中心に管理棟と呼ばれる超高層ビルがそびえ立っており、その周りに様々な施設が立ち並ぶ街並みが。規模はクリフォトエリアのシティーゾーンレベルであり、割と広めの一画であった。
この管理区ゾーンはアポルオンメンバーがセフィロトの敷(し)く政策や方針などのデータベースを、閲覧(えつらん)するために存在するとのこと。基本は中心にそびえる管理棟内で閲覧するらしいが、このゾーン内ならどこでもそのシステムにアクセスすることが可能だそうだ。ちなみにこのデータベースに関しては、現実でもある程度ならつながれるらしい。ほかにも会談や密談といった話し合いの場所という側面もあるらしく、管理棟の周りには誰でも使用できるオフィスビルや庭付きの豪邸、娯楽施設など。さらには華やかな庭園や日本の風情ある庭園などの憩いのスペースも完備されているそうだ。
ちなみにアビスエリアはクリフォトエリア同様、基本は外との連絡がつかない。だが管理区ゾーンだと、シティーゾーンみたいに連絡、ネット回線やアーカイブスフィアにつながることが可能とのこと。
「くおん、ヴァーミリオンの奴らも配置についたみたいだぁ。あとはかのんのこと任せたぞぉ」
ゆきが通信回線で報告を入れてくれる。
「わかった。ゆきの方も場の支配のサポート頼んだぞ」
「ふっふーん、この剣閃の魔女に任せといてぇ!」
現状上位序列ゾーンには、ウデの立つヴァーミリオンメンバーが数人。管理区ゾーンの入り口付近には、脱出経路の確保のためアキラとエリーを配置。そして同じく管理区ゾーンの中間地点あたりに改ざんによるサポートのためゆきと、その護衛の那由他、レーシスが。
ゆきに関しては場の支配で通信妨害や、敵の索敵、あとレイジたちの逃走経路のナビなどを頼んでいる。なのでもし彼女がやられれば、カノンを連れ出す難易度が格段に上がってしまうため、護衛の方に戦力を回していた。というのも敵側からしてみれば、ゆきほどの凄腕の電子の導き手は厄介すぎる。それゆえ向こうの最善の一手はゆきの居場所を割り出し、直接叩くという戦法だろう。実際データの奪い合いなどの戦場の定石手段は、まず敵側の改ざんによる場の支配をつぶすこと。ゆえに改ざんによる場の支配を敷く者に、護衛をつけるのは基本中の基本という。
ちなみにゆきはまだ改ざんによる場の支配をやっていない。今やってしまうとこちらが動いていることがすぐにばれてしまうので、カノンが巫女の間から出るまで待機してもらっていた。
「ゆきちゃんの護衛は、那由他ちゃんたちにお任せあれ!」
「ハァー、まさかアビスエリアでの作戦に、俺まで駆り出されるとはねー。こっちは現実での妨害の件で、昨日から働きっぱなしなんだぜ? 少しばかり休みをくれー」
するとゆきとの通信に、那由多とレーシスが割り込んできた。
「レーシス、また裏方の仕事、手伝ってやるから頑張ってくれよ。ここでゆきがやられると連携が取れなくなるのはもちろん、敵にこっらの動きが筒抜けになってしまうんだからな」
愚痴るレーシスを正論でたしなめる。
「しゃーねーな。実際、カノンを自由にするのはこっち側にとっても最重要案件。もう一踏ん張りするとしますかねー」
「結月も準備の方はいいか?」
レーシスがしぶしぶ納得するのを確認し、結月の方にも最終確認を。
「いつでも行けるよ。あとはカノンが、この上位序列ゾーンのどこかに出るのを待つだけね」
今回の作戦の第一問題。それはカノンが巫女の間から、このアビスエリアの十六夜島に出てくる時だ。序列二位側の許可なしに無理やり出てくるため、正規の方法ではない。なので自分で出る場所を指定できないらしい。カノンいわく一応上位序列ゾーンのどこかとのこと。よってレイジたちはまずカノンと合流し、それから彼女をこの十六夜島の外まで送り届けないといけないのだ。
「ああ、その後すぐに合流し、カノンをこのアビスエリアの十六夜島の外へ連れ出す。追手が来た場合は基本アキラ達ヴァーミリオンの連中に任せて、オレたちはできるだけ前に進む流れだ」
「そうすればカノンがエデンで自由になるのよね。あはは、これで好きなだけこっちで遊べるね!」
結月は胸元近くで両手をぐっとにぎりしめ、目を輝かせる。このときをどれだけ待ち望んでいたかと言いたげにだ。
制御権を破壊しつなぐ鎖も外せれば、カノンはエデンで晴れて自由の身。一昨日のように一緒に行動できるのだ。今度は時間など気にせず、好きなだけ。
「そうだな。そのためにもがんばって、カノンを外に送り届けよう」
「うん!」
「かのんが来たみたいだなぁ! みんなやるぞぉ!」
結月のやる気満々の返事のあと、ゆきの連絡が。
これよりカノンをつなぐ鎖を引きちぎり、エデンで自由にする戦いの幕が開けるのであった。
次第に街灯の光がつき始める、静寂に包まれた街中。相変わらずアビスエリアの建物は廃墟ふうではなく、きれいな状態で慣れなかった。これまではどこも荒れていたため躊躇なく暴れられたが、こうも普通の街並みが広がっていると少し壊すのをためらってしまいそうだ。
この上位序列ゾーンに関しては権限を持つ者に直接連れていってもらわなくてよく、許可証を発行してもらえばオッケー。なので前回同じく結月の妹の片桐家次期当主、美月に頼んで入れてもらったのである。ただ上位序列ゾーンへの許可証の発行にも制限があるため、そんなにも戦力を連れていけないのだが。
そして後方にあるのは管理区ゾーン。以前結月に説明してもらった話によると、ここはアポルオンメンバーがセフィロトの特別なデータベースにつながれる場所。構造は少し特別で、現実の十六夜島と少し変わっているらしい。まず中心に管理棟と呼ばれる超高層ビルがそびえ立っており、その周りに様々な施設が立ち並ぶ街並みが。規模はクリフォトエリアのシティーゾーンレベルであり、割と広めの一画であった。
この管理区ゾーンはアポルオンメンバーがセフィロトの敷(し)く政策や方針などのデータベースを、閲覧(えつらん)するために存在するとのこと。基本は中心にそびえる管理棟内で閲覧するらしいが、このゾーン内ならどこでもそのシステムにアクセスすることが可能だそうだ。ちなみにこのデータベースに関しては、現実でもある程度ならつながれるらしい。ほかにも会談や密談といった話し合いの場所という側面もあるらしく、管理棟の周りには誰でも使用できるオフィスビルや庭付きの豪邸、娯楽施設など。さらには華やかな庭園や日本の風情ある庭園などの憩いのスペースも完備されているそうだ。
ちなみにアビスエリアはクリフォトエリア同様、基本は外との連絡がつかない。だが管理区ゾーンだと、シティーゾーンみたいに連絡、ネット回線やアーカイブスフィアにつながることが可能とのこと。
「くおん、ヴァーミリオンの奴らも配置についたみたいだぁ。あとはかのんのこと任せたぞぉ」
ゆきが通信回線で報告を入れてくれる。
「わかった。ゆきの方も場の支配のサポート頼んだぞ」
「ふっふーん、この剣閃の魔女に任せといてぇ!」
現状上位序列ゾーンには、ウデの立つヴァーミリオンメンバーが数人。管理区ゾーンの入り口付近には、脱出経路の確保のためアキラとエリーを配置。そして同じく管理区ゾーンの中間地点あたりに改ざんによるサポートのためゆきと、その護衛の那由他、レーシスが。
ゆきに関しては場の支配で通信妨害や、敵の索敵、あとレイジたちの逃走経路のナビなどを頼んでいる。なのでもし彼女がやられれば、カノンを連れ出す難易度が格段に上がってしまうため、護衛の方に戦力を回していた。というのも敵側からしてみれば、ゆきほどの凄腕の電子の導き手は厄介すぎる。それゆえ向こうの最善の一手はゆきの居場所を割り出し、直接叩くという戦法だろう。実際データの奪い合いなどの戦場の定石手段は、まず敵側の改ざんによる場の支配をつぶすこと。ゆえに改ざんによる場の支配を敷く者に、護衛をつけるのは基本中の基本という。
ちなみにゆきはまだ改ざんによる場の支配をやっていない。今やってしまうとこちらが動いていることがすぐにばれてしまうので、カノンが巫女の間から出るまで待機してもらっていた。
「ゆきちゃんの護衛は、那由他ちゃんたちにお任せあれ!」
「ハァー、まさかアビスエリアでの作戦に、俺まで駆り出されるとはねー。こっちは現実での妨害の件で、昨日から働きっぱなしなんだぜ? 少しばかり休みをくれー」
するとゆきとの通信に、那由多とレーシスが割り込んできた。
「レーシス、また裏方の仕事、手伝ってやるから頑張ってくれよ。ここでゆきがやられると連携が取れなくなるのはもちろん、敵にこっらの動きが筒抜けになってしまうんだからな」
愚痴るレーシスを正論でたしなめる。
「しゃーねーな。実際、カノンを自由にするのはこっち側にとっても最重要案件。もう一踏ん張りするとしますかねー」
「結月も準備の方はいいか?」
レーシスがしぶしぶ納得するのを確認し、結月の方にも最終確認を。
「いつでも行けるよ。あとはカノンが、この上位序列ゾーンのどこかに出るのを待つだけね」
今回の作戦の第一問題。それはカノンが巫女の間から、このアビスエリアの十六夜島に出てくる時だ。序列二位側の許可なしに無理やり出てくるため、正規の方法ではない。なので自分で出る場所を指定できないらしい。カノンいわく一応上位序列ゾーンのどこかとのこと。よってレイジたちはまずカノンと合流し、それから彼女をこの十六夜島の外まで送り届けないといけないのだ。
「ああ、その後すぐに合流し、カノンをこのアビスエリアの十六夜島の外へ連れ出す。追手が来た場合は基本アキラ達ヴァーミリオンの連中に任せて、オレたちはできるだけ前に進む流れだ」
「そうすればカノンがエデンで自由になるのよね。あはは、これで好きなだけこっちで遊べるね!」
結月は胸元近くで両手をぐっとにぎりしめ、目を輝かせる。このときをどれだけ待ち望んでいたかと言いたげにだ。
制御権を破壊しつなぐ鎖も外せれば、カノンはエデンで晴れて自由の身。一昨日のように一緒に行動できるのだ。今度は時間など気にせず、好きなだけ。
「そうだな。そのためにもがんばって、カノンを外に送り届けよう」
「うん!」
「かのんが来たみたいだなぁ! みんなやるぞぉ!」
結月のやる気満々の返事のあと、ゆきの連絡が。
これよりカノンをつなぐ鎖を引きちぎり、エデンで自由にする戦いの幕が開けるのであった。
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