原初のヒーロー

七星北斗

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答えなき問い3

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 灼冥之木からの追っ手から逃げ続けるのには限界がある。

 だから助けてよ。と、魔名は彼方に懇願する。

 生まれた環境には同情するが、そんな都合のいい話しはない。

 今までたくさんの人を殺した敵が、突然改心しました!助けてくださいなんて信用できると思うか?

 魔名は止めの殺し文句に、分け隔てなく困っている人を助けるのがヒーローでしょ?なんていうのだから。

 見て見ぬ振りすることができなかった。

 僕にどうしてほしいのか訪ねると、魔名は日の丸の社長に会わせてほしいと言う。

 会ってどうするのだろうか、まさかボスを殺害するつもりじゃ?

 だけど、流石に一人で敵の本拠地に突っ込まないよね。

 話を通すだけならと、彼方は快諾した。

 スマホでボスに連絡を取ると。おう、りーょうかぁーい。明日、連れてこい…とのこと。おい、ちょっと軽くないか?

 そんなに簡単に承諾していいのかと、心の中でツッコミを入れた。

 電話を切り、そのことを伝えると、魔名は跳び跳ねて喜んだ。

 じゃあ、また明日。彼方は魔名に別れの挨拶をした。

「わかった。じゃあ、ここで待ってる」

 彼方は、自宅に入ろうとして動きを止めた。そしてゆっくりと振り返る。

 魔名はその場から動く気配がない。というか、彼方の顔を見て、どうしたの?といった表情をしている。

「…ちなみに聞くけど、今日はどこに泊まるの?」

 そんなの当然といった顔で魔名は答える。

「泊まるところがないし、行く宛なんてないよ」

 彼方は、ああ…もう、と頭を掻く。

「だったら家に泊まれよ。だけど、今晩だけだからな」

「えっ!どうして優しくしてくれるの?」

 魔名は大層驚いた顔をしていた。

「もし家の前で、風邪でも引かれたら寝覚めが悪いからだよ」

 彼方は、魔名の顔を見ずに素っ気なく答えた。

「…ありがと」

 魔名は、今の自分の感情をどう表現したらいいのかわからなかった。どうして私に優しくする?自分の家族を危険に晒してしまうとか考えないのだろうか?

「とりあえず中に入れよ」

「うん」

 玄関を開けて、ただいまーと挨拶をすると、お帰りーと挨拶が帰ってくる。

「どうしたの!その娘?」

「コイツ同期なんだけど、電車の終電終わってて。お金も持ってないみたいだから家に停めてもいい?」

「あらあらまあまあ」

 傘寝は口に手を当て嬉しそうにする。

 お前もやるなーと、父は彼方の肩を叩く。こんなカワイイ娘、大事にしろよと、父は耳打ちする。

 違うからー、彼方はそんなんじゃないと弁明しようとするが、照れ隠しだと更に勘違いされた。

 魔名当人は特に気にした様子もなかった。
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