ヤンヘラル、、、?!

七星北斗

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プロローグ タイムセールはお早めに

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 裏社会では、電子ドラッグが流通している。

 電子ドラッグとは、人を超越した身体能力や第六感を持つ化物へ変えるものから。麻薬のような中毒症状を引き起こす音楽や動画等のコンテンツのことをそう呼ぶ。

 日本には、金のためならどんな犯罪にでも手を染める、裏組織が数多く存在する。

「アオ、ご飯の時間だよ」

 タタタッと走り、擦り寄ってくる。僕を上目遣いで見上げてくる生き物の正体は、顔の皮膚が垂れた犬、ブルドックである。

「今日も可愛いな、アオ」

 わしゃわしゃと、アオの頭を撫でてやる。すると尻尾をちぎれんばかりに振る。

 居間のお布団の触覚髪が声に反応し、ピコピコ動く。何かがお布団から、ちょこんと顔を出した。

「私のご飯は?」

「マネのご飯はそこ」

 テーブルの上には、ちんまりとした小魚とお握りが二個。

「え!今日も目刺一匹だけ?お肉食べたい…」

「贅沢言わない。おかず増やしたいなら働いて」

「やだー、働きたくない」

「何でこんな奴がパートナーなの?」

「今酷いこと言った。やる気なくした。今日は寝てる」

「いつも寝てるだろ」

「チューしてくれなきゃ起きない」

 コイツの名前は、マネ。人格が三パターンある変な奴。

 今の人格が通常であるが、手間はかかるし困っている。残りの二パターンは更にめんどくさいし、パートナーを解消したい。

「私には、可愛いって言ってくれないんだ…」

 無視すると拗ねた。しかし空腹には抗えず、ご飯をムシャムシャ食べていた。

「食べたなら、仕事行くよ」

「はーい」

 食器を片付けて、身だしなみを整える。正しくは、マネの身だしなみを整える。

「そのボサボサ髪何とかしなよ。せっかく綺麗な髪してるのに」

「めんどい」

「ワガママ言わない。ほら、髪とかしてあげるから座りな」

「うぅー、お母さんみたい」

「誰がお母さんだ!」

「お母さん、今日の晩御飯はステーキがいいな」

「ねだるな」

 マネの支度に手間取り、出掛けるのが予定より遅くなってしまった。

「行くぞ」

 玄関を出て、マンションから一歩踏み出した所で。

「今日のお空は、青いね。じゃあ、行ってらっしゃい」

「おい、お前もくるんだよ」

「やだー、お外暑い~」

 白髪の少女の手を引く僕は、周りから見れば微笑ましい姉弟に見えることだろう。

 背が低くて悪かったな。

 見た目通りの年齢だよ。

 僕十一歳、マネ十五歳。

 僕は、孤児として育ち、今に至る。我ながら端折りすぎだと思うが、説明している時間はない。

 卵がワンパック八十円なのだ。お一人様、お一つ限りである。
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