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1.意味

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 呪われた子を拾っていけない。何故ならば、呪いは周りを不幸にするからだ。

 だから忌み子は、見つけたら殺す。もしくは遠くへ捨てる。そうするように語り継がれていた。

 雨の降る日、調合した薬を山を降り、村まで売りにきていた。

 いくら自給自足の生活をしているといっても、お金がなくては何とやらだ。

 予想よりも薬が高く売れ、ホクホク顔で東台丘の林を抜けた頃。風の音とともに、甲高い生き物の鳴き声を運ぶ。

 気になった私は、雨の降る中を川沿いに進む。

 しばらく歩くと、この泣き声の正体に辿り着いた。

「やはりな」

 橋の下には、赤子が捨てられていた。

「この魔力量は、間違いなく。忌み子であるな」

 これまた、面倒なものを見つけてしまった。

 普通の赤子であるならば、孤児院に連れていくところであるが。

 しかしこの赤子は、忌み子なのだ。

 私と同じ。

 忌み子は、疎まれてしまう。

 不吉の象徴、見つかれば殺される。

 今なら見なかったことにもできるが、このままでは、この赤子は衰弱死、もしくは水死するだろう。 

 雨は止む気配がないし、水かさが増す一方だ。

 それに少しばかり肌寒いので、赤子にはキツかろう。

 あまり時間はない。

 どうしよう?

 見殺しにするのは目覚めが悪い。かといって引き取れば、面倒事が増える。

「あー、クソっ」

 泥で汚れた赤ん坊用のバスケットを、両手で優しく包み。雨の中濡れながら、雨宿りをできる場所を探した。

 村からは離れているし、この辺りには危険な魔物が出没する噂がある。

 赤子が無事なのも、運が良かったといえる。

 とはいえ、歩き回るのも得策とはいえない。

 なので大木の下で、雨が上がるのを待つことにする。

 しかし赤子が泣き止まないので、正直困る。

 空腹なのか?寒い?おしめ?

 食べられるようなものは持ってないぞ。寒いなら、直接抱き上げた方がいいのか?おしめになるような布はないし。

 わからない。

 …水魔法で水を作り、赤子に飲ませ。火魔法で周りを暖め。水魔法でおしめを洗浄する。

 赤子は、ようやく泣き止んで、疲れたのか眠りについた。

 雨は止み、空気が澄んだ。

 ようやく帰れる。

 私の家は、ヘイレムの森の奥にある。

 魔除けの結界を張り、家畜を飼育し、薬草に野菜を育てている。

「ただいまーとっ」

 お腹が空いているだろうし、離乳食を作らなければならない。

 こういう時は、ジャガイモのポタージュ何かが無難だろう。

「ふんふーふーん」

 台所で背丈の低い童女にしか見えない彼女は、数百の年月を生きた魔女なのだ。
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