空語り

七星北斗

文字の大きさ
上 下
1 / 1

1.人生は喜劇

しおりを挟む
 日本という国は、風化し忘れられた。もう誰の記憶にも残ってはいないだろう。

「争い」「奪い」「汚し」「蹂躙」せし、欲深き人間たちに幸あれ。

 空を見て、世界の広さを知る。

 だが見えていたのは、ほんの一部にすぎない。

 人間の見える範囲の空など、大地よりも狭い。

 この地上で、広大な深き世界を見る。

「全軍突撃ーーーーー」

「オオーーーーッ」

「って、何でこんなことに」

 八歳で戦場に放り込まれ、六五日が過ぎた。

 何百回と、死にかけたかわからない。

 まともな食事もなく、休む暇がない。隣にいた兵士は、今日死んだ。

 名も知らない花、意味もなく散る。

 敵の補給部隊を叩き、物資を盗む。そうすることで生き長らえた。

 いつ死んでもおかしくない、そんなリアル。

 この戦争は後に、サロクゴと呼ばれ、吟遊詩人が歌にした。

 サロクゴ戦争終結から二年が経ち、国の復興は進み、驚くべき発展を遂げた。

 四日後には、ワンス国立剣魔導学院塾生として、コードの新生活が始まる。

 寮住まいのため、引っ越しの準備を済ませなければならない。

 あまり荷物は多くはないので、一時間ほどで片付けは終わった。

「暇になったな」

「コード様、お食事でもご用意致しましょうか?」

 ダークエルフのルベリエだ、雇われメイドの一人で献身的によく働いてくれる。

 主なダークエルフの特徴としては、両耳が尖っており、肌が黒くて髪が白い。

 エルフ系の種族は、長寿で美形が多いために奴隷狩り遭うことがある。

 種族は違っても、人間とさほど変わらないと、僕は思っている。

 ルベリエは、僕の大事な家族だ。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...