女性ファースト

七星北斗

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二 覚悟と意志

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 神経質そうな男と愚直さを絵に描いたような男が、バーで会話をしていた。

「あー、あく側に動きがある。スパイの話によれば、元総理の子供、安原勝治を人質に取るつもりのようだ」

「その情報は本物か?まあ、じんのことだから間違いはないとは思うが。だけど、何のために人質を取るんだ?」

「人質を取る理由の大半は予防策だろうが、女側はそれだけではないだろう。元総理である安原定晴やすはらさだはるの息子の安原勝治は神童と呼ばれ、現代の聖徳太子とも呼ばれている。そこから考えればわかると思うが、安原勝治はせい側の希望なんだ。安原勝治が女側の味方になった場合はどうなると思う?」

「そうなったら、戦わずして投了だな」

「そうならないように手は打っておくが。なあ、砂山さやま。俺達で革命軍を作らないか?このままではジリ貧だ。女側は組織で動く分、思考を読みやすくはあるが、俺達二人で対応するのは無理だ」

「男の組織を作るってことか?」

「それしかこの現状を打開する手がない。組織を作らないで動くのは身軽ではあるが、組織を作った場合はバリエーションが広がると言うべきか、幅が広がる。規模が大きくなることのメリットの方が大きい」

「でもメンバーはどうするんだ?信用のある奴じゃないと暴走するだろ?」

「女側に恨みを持ってて、自制の出来る。尚且つ戦力になる男」

「そんな奴いるのか?男は女側に恨みを持ってる人間が殆どで、我慢出来る奴がいるとは思えんが。戦力になりそうな奴は心当たりがあるけどな」

「砂山。そいつは男側の必要なピースだ、勧誘を頼む。俺は勝治が誘拐される前に策を打つ。じゃあ、また明日。お疲れ」

「相変わらずの思考力だな」

「砂山の周辺にいた奴で、当てはまるのはソイツだけだしな。じゃあな」

「お疲れ、俺も今日のうちに済ませるわ」

「期待してる」

 そして、迅は会計を済ませ、バーを後にした。砂山はもう会うことはないと思っていた、そんなアイツにコンタクトをとる。三十分後、殺気のような威圧感を身に纏った、体格の良い男がバーに現れた。

「久しぶり、急に呼び出してすまん」

「いいから本題を話せ」

「実は俺達は女側の女尊男卑の世界をぶち壊し、平等な世界を作りたいんだ。そこで粗野老そやろうの力を借りたい。力を借りたい人間に聞くのは可笑しいが、粗野老は何で暴力に頼るんだ?」

「強さがねーと生きられん」

「違う、強さの中に弱さを理解できないとただの暴力だ。人間は感情の生き物、弱さこそが人間の強さ。これは俺の心情だ。弱さは人を育てるが、強さは弱い自分を隠すための防衛反応だと思う」

「だったらお前の強さを見せてみろ」

 粗野老はリボルバー式拳銃を取り出し、砂山の額に突きつけた。

「銃弾は三発入っている。論より証拠だ」

「それで良いのか?」

「大した虚勢だな」

 粗野老はシャッフルをして引き金を引いた。そして、更に引き金を引く。しかし、どちらも不発だった。

「何でビビらねーんだ?」

「俺は俺の道を信じた、それだけだ。ここで死ぬようなら、生きてたところで何の結果も出せない」

「オメーは頭おかしいんじゃねーのか?だが、お前の未来が見とーなった。ワシの命、お前に預ける。失敗したらお前を殺す」

「諦めたときは死ぬときだ。せいぜい殺されないように期待に応えるよ」

「気張れよ」

 粗野老はそう言ってバーを後にした。
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