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1日目

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 今日も、この物語の主人公の岡田直人は、日雇いの派遣で、働いていた。
仕事を終わらせると、地元の駅に着き、ため息をついた。
「今日の現場も、梱包が続いて疲れたな。」
彼は、そう呟きながら、ボーッと歩いていた。
道の端を歩いていた時、何者かに背中を押された。
彼は、道路を走っている車に、はね飛ばされた。
しばらくすると、彼は、息絶えた。
うっすら、目を開けると、目の前がぼんやりと、見えた。
目の前には、黒ずくめのスーツの男が、ビシッと、立っていた。彼のことをやおら、手を伸ばして立ち上がらせると、やっと、しっかりした意識に、戻った。彼の前で、今度は、名刺を渡しながら、彼に向かい、話し始めた。
「私は、天から派遣された派遣会社の者です。あなたは、これから、1ヶ月勇者として、働いてもらいます。最近は、勇者も人手不足でして…。」
彼は、話を遮った。
「待て。待て。どういうことだ。私は今、どうなっているんだ。君は、誰だ。なんの事を言っているんだ。」
黒ずくめのスーツの男は、不気味な笑みを浮かべて、続けて言った。
「ですから、私は、天から来た派遣会社の営業マンです。あなたは、もう、亡くなられています。
これから、天国か地獄に行くか。それとも、生きつづけられるか、勇者としての行いによって、決めさせて頂きます。
期間は1ヶ月の契約となります。よろしくお願いいたします。
早速、現場へ行って頂きます。今日は、竜の
駆除をお願いします。細かいことは、あなたのスマホのメールに送らせて頂きます。今日は、現場に、あなたの先輩のリーダーがいますので、その人に従って下さい。では、私は、これで失礼致します。」
そういうと、黒ずくめのスーツの男は、姿を消した。
彼は、慌てて、言った。「まっ、待って!!」
彼は、自分のスマホのメールをとりあえず見た。
日付の下に「今日の仕事の内容は、竜の駆除となります。主な持ち物は、剣と盾となります。リーダーが持っておりますので、その他、指示などリーダーに全て聞いて下さい。では、よろしくお願いいたします。」と、書かれていた。
すると、さっきのように、誰かに、背中を押され、車にはね飛ばされそうになったところで、異世界に転生した。
私は、いつの間にか鎧を着けていた。
すると、同じ鎧を着けたリーダーらしき男が、スマホを見ながら、点呼をとっていた。
「えーと、前田さん、花岡さん、元木さん…。あれ、まだ、岡田さんが来てないな。派遣先に、連絡しないと…。」
彼は、リーダーらしき男に慌てて、話しかけた。
「はい、私、岡田です。遅くなってすみません。」
リーダーらしき男は、恐縮したように、
「いえいえ、はじめてですよね。私は須田と、申します。」
そういうと、白い紙袋の中から、剣と収納された盾が出た。
「剣はベルトの間に入れて、盾は、裏のボタンを押すと、広がりますので、今、作動するかどうかやってみて下さい。」
彼は、リーダーの言うとおり、盾の裏にあるボタンを押してみた。
すると、収納されていた盾が普通の大きさに広がった。
「便利でしょう。ふた山越えた所に竜がいるので、楽ですよ。」
彼は、驚いて「えっ、ふた山…。」と、言った。
リーダーは言った。「すみません。現場が遠くて…。」
彼は、内心思った。「今日は、ただでさえ、梱包の仕事で、へとへとなのに、これから、ふた山…。」
彼は、リーダーに、笑顔で言った。
「いいえ、大丈夫です。よろしくお願いします。」
リーダーは、言った。「今日中に、竜を倒して帰らなくては、いけないので急ぎましょう。」
彼は、状況を把握することなく、後ろから、ついていった。
道すがら、彼らは、話をして、盛り上がっていた。
彼は、言った。「私は、岡田です。車に、轢かれたんですよ。」
そういうと、相手は、「私は、前田です。私は、お恥ずかしいことに、妻に、刺されまして…。」
最初は、話が、盛り上がっていたものの、だんだん
皆疲れて無言になっていった。
ふた山越えると、やっと、村らしきところに着いた。
リーダーは、そこの村長に挨拶をした。「今日は、よろしくお願いいたします。」
村長は、言った。「では、手っ取り早く竜を駆除してくれ。」
彼は、思った。「本当に派遣のようだな…。」
彼らは、竜のいる場所に着くと、竜は、羽を広げ、彼らを威嚇した。火まで吹き、周りは、熱風に包まれた。
彼らは、慣れたように竜に、登り、剣を突き立てた。皆は、ブンブンと振る竜にしがみつき、竜に剣を突き立てた。
なかなか、彼が竜に立ち向かわないことに、業を煮やした村長は、彼に言った。「さぁ、早くお前も行け。早く倒さないと、駄目だろう。」
彼は、その言葉を聞いて、普段の自分を思い出した。「そういえば、あの事故に遭う前から、私は、怒られてばかりだったな、ここでも、怒られるのか。」
彼は、竜に、見よう見まねで、剣を刺した。
しばらくすると、竜は、息絶えた。
彼らは、一斉に派遣先に、終了メールを送った。
すると、また、駅の前の道に戻った。
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