ルーペ

ナカムラ

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アテナ

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 朝早く、牢屋で、目を覚ました。朝食は、まだ、届かないらしい。
マテオは、起きて、あくびを、した。
ポケットから、ルーペをなんとなく、取り出し、ルーペのガラスを覗き込んだ。マテオは、ルーペの中に吸い込まれた。
 マテオは、海の中で溺れていた。バタバタして暴れて海の上に行こうとしたが、とても、無理だった。マテオは、気を失いそうになった。すると、人魚が、マテオを、助けに、きた。マテオは、海の上に打ち上げられた。その砂浜には、人魚達がたくさんいた。皆、女性の人魚だった。
「どうしたのです?イザベル様」マテオを、助けた人魚は、言った。「いや、この者が、溺れていたので、助けたのだ。」人魚の皆が、珍しいものを見るように、集まってきた。一人の人魚が、言った。「初めてです。人間を見るの。噂には、聞いておりましたが、それも、男性のようです。」皆も、口々に、騒ぎ立てた。「静かにせよ。皆の者。皆でこの者の世話をするのだ。」皆は、応えた。「はっ。女王様。」
マテオは、思った。「そうか、私を助けてくれたのは、女王で、イザベルというのか」「済まない。私は、マテオだ。ここは、どこだ?」と、マテオは、言った。イザベルは、「ここは、アテナという国です。」
マテオは、周りを、やっと、落ち着いて、見回した。足元には、真っ白な砂浜が広がっていて、海は、透き通ったエメラルドグリーンをしていて、大変、美しい風景だった。
マテオは、焼いた魚や、果物などをご馳走になった。
また、腹一杯食べた。
マテオは、気が向くと、海の中を泳いだりした。海の中は、美しい魚や、珊瑚が、あり、とても、美しく、楽しい時間を過ごした。
マテオが、遊んでいると、深刻な顔をして、マテオに、イザベルは、言った。「あなたに、相談が、あるのですが。」マテオは、訊いた。「どうしたのだ?」イザベルは、遠くに見える小さな島を差して、「あの島で、島民が、石を切り出し、そのために、石を切り出した白い粉が、珊瑚を覆い、珊瑚が、死んでしまっていきました。石を切り出すのを、止めさせてくれませんか。」
マテオは、助けてもらったお礼に、その願いを引き受けることにした。
マテオは、イザベルに聞いた。「あの島は、なんという島だ?」イザベルは、答えた。「あの島は、ミナ島です。」
さっきまで、マテオは、泳げなかったのに、すいすいと、泳げるようになった。
これも、ルーペの力か?
確かに、島に近づくと、綺麗なエメラルドグリーンだったはずの海が、白く濁るようになってきた。島民は、皆で、懸命に、白い石を切り出していた。
マテオは、首長を呼ぶように、島民に、言った。
首長が、来た。「私は、マテオです。済まぬが、石を切り出すのをやめて欲しい。海が汚れてしまう。」マテオは、言った。首長は、言った。「私は、この島の首長、イアンだ。それは、できぬ。私達は、これで生活しているのだ。」
マテオは、一生懸命説得し、畑仕事を教え、それを
商売と、するように、言った。
すると、首長は、渋々、マテオの言うことをきいた。
マテオは、意気揚々と、人魚の国、アテナへと帰るため、海の中に、入った。
しばらく、泳ぐと、サメのような巨大魚が、牙を向き、マテオに向かってきた。
まずい。このままでは、殺される。マテオは、思わず、ポケットの中のルーペを、取り出し、ガラスを覗き込んだ。すると、ルーペの中に吸い込まれた。
ルーペから、出ると、やはり、牢屋の中にいた。体は、不思議と、濡れていなかった。
看守が、マテオに話しかけてきた。「そろそろ、昼だ。腹は、減ったか?」
また、マテオは、思った。
私は、なぜ、無実の罪で捕まったのだ。
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