黒鍛冶が行く

夏夢唯

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アドリア王国編

7話 領都への旅

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 あっという間に夏が終わり、秋が通り過ぎて冬を迎えると2歳の誕生日がやってきた。
現在は身長98㎝、体重16㎏、2歳児にしては随分体格が良いらしい。
魔物を倒したりしていないのでレベルこそ上がってはいないがHPやMPなども増えていた。
今のステータスはこんな感じだ
【名前】     レオナルド・アストレア
【年齢】               2
【種族】           ヒューマン
【職種】                
【称号】            異世界人
【レベル】              1
【HP】  (体力)   201/201
【MP】  (魔力) 6434/6434
【STR】 (力)        225
【DEX】 (敏捷性)      230
【CON】 (体力)       260
【INT】 (知能)       572
【VIT】 (精神)       620
【LUC】 (運)         80
【状態】       正常
【魔法】       全属性適正
【スキル】      鑑定Lv2 並列思考Lv1
           飛翔Lv2 身体強化Lv2
           探知Lv1 マップLv2
           状態異常耐性Lv5 
           心身異常耐性Lv5
           鍛冶Lv3
【ユニークスキル】  偽装LvMAX
           アイテムボックス∞(状態保持可能)
           回復力強化Lv5 
           ナビゲーター
           マルチタッチスクリーン
           魔法創造
【加護】       始神の加護・主神の加護
           風の精霊王の加護・水の精鋭王の加護
           火の精霊王の加護・土の精霊王の加護

レベル1でこのステータスは完璧なチート状態だ、いちばん低い数値でも普通のヒューマンのLv100程度、魔力に関しては宮廷筆頭魔道士に追いつきそうな数値だ。

(神様たちは僕に何を望んでこれほどの力を与えてくれているのだろう)

そんなことを思いながら僕は馬車に揺られて移動をしている。
今日で移動を始めて9日になるのだが、いい加減飽きてきた。
なぜ移動をしているのかと言うと、マリノ公爵領の屋敷に戻る為に家族と使用人を連れて旅をしているのだ。
お母さんは暖かい時期に公爵領の屋敷に戻りたかったらしいのだが移動がとても大変なので僕が2歳になるまで待っていたらしい。
今回は使用人の他に鍛冶師のバルガス親方とお弟子さん2人も同行している。
なぜ鍛冶師が一緒なのかと言うと、
鍛冶ギルドのギルドマスターが口を滑らしてしまったせいで公爵の屋敷にいるのが知れ渡り、作りたくも無い武器の制作依頼が毎日のように来るようになっていた。
公爵も他の貴族や王族が親方に合わせてくれと言って来るのを断っていたのだが、だんだん断りきれなくなってきていたのだ。
親方は断り続けるのと対応に嫌気がさしていたので、この機会に静かな公爵領の屋敷に引っ越すのだそうだ。
9日も旅をしているのは随分な長旅だと思うかもしれないが、王都と公爵領都は800㎞も離れているのに加え、途中の街に寄りながらの移動なので到着までには16日もかかってしまう。
馬車で急げば7日で移動できるのだが、公爵ともなると移動途中の街々で経済的な支出を街に還元しなければいけない、ノブレッソブリージュ(高貴なものに伴う義務)と言うのだそうだ。
そういう理由で、どうしても移動速度が遅くなってしまうのだそうだ。

 昨日泊まった街はトラム湖のそばにあるオーロという街で夏場は避暑地として人気があるが、寒くなったこの時期は人気がなく宿も閑散としているので総勢23人の公爵一行は大いに歓迎された。
 オーロから次の街まで100㎞以上あるので、今日は領境の峠の手前まで行く予定らしい。
朝早くから移動を始めたが今日は随分冷え込んでいた。
外は寒くても公爵家の馬車には魔導エアコンが付いているので中はとても快適だった。
今夜は宿がないので野営するらしのだが、雪が降るかもしれないと騎士隊の人が言っていた。
峠の麓の野営地に着く頃には薄暮となっていた。
付いてすぐにメイドや騎士隊の人が手分けして野営の準備を始めた。
同行した騎士隊の調理人は準備した簡易キッチンで調理を始め、バルガス親方とお弟子さんで焚き火の竃を作っている間に騎士隊員2人が薪を集めてきたので、親方が火を起こしている。
野営地で魔獣に襲われないのかと思うかもしれないが、野営地を中心に周りに魔獣忌諱の香を焚いているのでこの辺に出現するレベルの魔獣程度なら近寄ってこないのだ。
出来上がった夕食をみんなで食べている間も遠くから何かが吠える声が聞こえていたが、近寄って来ることは無い・・・はずだった。
真夜中、馬車の中をベッドにして寝ていると何やら音がしたので小窓を開けて見るとずんぐりとした白と黒の子犬が馬車の車輪の周りでじゃれていて、窓から顔を出した俺に気がつくと草むらに逃げて行った。

『あれ、魔獣忌諱の香って犬には効かないのかな?雅、どうなの?』

『魔獣忌諱の香は獣にも効果がありますので、犬程度なら近寄ってこれません』

『じゃあ、あれはなんだんだろう?』

『高レベルの魔獣もしくは神獣ではないかと思われますが、幼体だったので判別がつきません』

どうやら雅のデータベースにも載っていない珍しい生き物だったようだ。

(あの犬可愛かったな~、また出てこないかな。)

夜中じゅう小窓から眺めていたが、結局は朝まで現れなかったので夜明け前には疲れて眠ってしまった。
気がつくと馬車はすでに野営地を離れて峠に向かって坂道を登り始めていた。

(残念。結局正体はわからなかったか~
あの後どこに行ったんだろう、探知を使ってマップに表示すればよかったかな)

今頃になって探知スキルを持っていたことを思い出し残念がったが、いつまで後悔してもしょうがないので、探知のレベルアップ目指して練習を始めてみた。
椅子に座って窓の外を見るふりをして表示させたマップを眺めながら探知を使って見ると沢山の光点がマップ上に現れる。
現在の探知範囲である半径50mの中には22個のグリーンの光点と20個の青い点があり、それぞれが公爵一行と馬だということがわかった。
時々グレイ色の点が現れたので確認すると、フィールドラビットや狼などで昨夜の幼体ではなかった。
窓の外は雪が降り始め、ものすごく寒かったので昼食は外で食べる事はせず、前もって調理人が作っていたたサンドイッチを移動する馬車の中で食べて休憩せずに移動し続けた。
雪が降るのは悪いことばかりではなかった。
最小限の休憩しかしなかったので思ったより早く宿泊する街に到着できたのだ。
しかし退屈すぎる毎日だ、できるのは魔力操作の鍛錬と探知の練習、それと道の凸凹が激しくなった時にこっそりやっている馬車の車両部分を少し浮かす事くらいだが並列思考のスキルがあるので同時に魔法を発動したりすることで良い練習になった。
 毎日毎日することもなく景色を眺めるだけで退屈な旅を続けていたが、それも今日が最終日、重たい車両を浮かせたりしていたので飛翔はLv3になり、探知スキルは6日間使いっぱなしだったのでLv3になり半径200m内は探知できるようになりっていた。
探知スキルのレベルが上がったのは昨日とまった街を出発してすぐだったのだが、探知範囲が広くなったことにより気なる光点が時々範囲内に入っては消えを繰り返していた。

(あの時の子犬達だったら良いのにな~)

そう思いながらマップを見ていると今も時々探知範囲内に入ってくるが、まるで探知されたのがわかったかのように、すぐに範囲外に出て行ってしまう。
すでに公爵邸の敷地内に入っていて、屋敷が見え始めているのだが、まだ付いてきているようだ。
初めて見る本邸は屋敷というより城で、その姿はまるでイングランドのカスールハワードのようであった。
南側から入ってゆき1番外の門をくぐるとそこからが53.7㎢の敷地になりる。
ニューヨークのセントラルパークなら15.7個分、トウキョウドームだと1148個分にもなる広大な敷地だ。
屋敷に着くまでには全部で3つの門を通らなくてはならず最初の門から3㎞以上もあった、3つ目の門を通ると綺麗な庭になっており、屋敷へのアプローチを行くとエントランスの正面には大きな噴水のある人口の泉があった。

(やっと着いた、疲れた~)

長旅が終わり疲れはあったが、無事に到着できた安堵感から軽い足取りで一行は屋敷の中に入って行った。
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