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解放と君臨
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指で掬い取った性の名残をペロリと舐め取る姿さえ蠱惑的に過ぎて、気持ち悪いとか汚いとか思い付く余地すらなかった。
『千秋万古の飢えは未だ満たされず、安着には程遠い。
なれど斯様な身体を以てすれば、早々に我が誓願も果たされよう』
悪魔にでも誓願をかけたのか。神を語るも烏滸がましい淫猥の極みのような痴態を繰り広げながらも、確かに彼は、悪魔に魅入られたように美しかった。
『心配は無用。貴様の身体は丁重に扱おう。何せ、
遂に吾が子を宿すことが適う、真に稀少な母胎の持ち主。
無闇に嬲って壊したりはせぬ』
ーーー子を、宿す?
『幾度転生を繰り返そうとも叶うに能わぬ宿願ぞ?
貴様の様に脆弱な子供には、ちと荷が勝ち過ぎていようが……
致し方あるまいよ。何れ慣れよう。
貴様もこの泡沫の戯れを存分に愉しむが好い』
まるで老爺の物言いながら、転生だ宿願だと大仰なことを吐かしている、一体彼は何者なんだ?疑問ばかりが渦巻いて、思考が四散する。何故僕が此処にいて、彼が僕の代わりに動いているのか?彼の目的は?子を宿して如何したいのか?
何ひとつ分らない。想像すらつかない。思い当たる節が欠片も存在しない。
『漸く吾が適合する身体を手に入れたのだ。
女子の振りなどして居るから捜すのに手間取ったわ。
男児なればこそ、我が血族の宿願も果たせよう。
そのための半陰陽。正しく吾が血を継ぐに相応しき受け皿よ』
この中途半端な身体が、正しい、と?
『然なり。貴様らの言葉にすればΩと云うたか』
Ωなら、そこら中に掃いて捨てる程に溢れている。何故僕だ。僕でなければならない理由が何処にある。
『半陰陽のΩである、特異な身体を持つ者にこそ受け継がれるは女王の血なり』
男なのに女王?笑わせるな。
『……言葉の綾も解さぬとは、ほんに未熟な雛鳥よ。
だが悦ぶがいい。
醜い家鴨はその実、類稀なる至高の鳳雛であった。
最早あらゆる障壁は消え去り、貴様の前に在るのは栄光の玉座のみ。
全てのαを従えて君臨する、Ωの明星となる。
吾が貴様を、その玉座に据えてやろう』
全てのαを従える?この僕が?何を、云っている?
αの陰に隠れて、薄暮の中に紛れて、息を潜めながら己の尊厳を奪われずに済む方法を探し続ける憐れな生き物。己の意思とは無関係に強烈に相手を誘う香りを発しながら、拒む権利すら与えられずに隷属させられる。絶対的弱者。それがΩだ。
誰かと愛し愛されて想いを添い遂げながら番うことなど、夢物語に過ぎなかった。それは、僕が一番、知っている。そんな僕が、αの上に立つ?何だそれ……
「……面白そうじゃないか」
我知らず、口角が上がる。
ーーー心の奥の奥のずっと封印していた檻の鍵が、
かちゃりと音を立てて、中から
禍禍しい怖気を振り撒きながら
化け物が這い出してくる幻影が見えたーーー
化け物は、眼前の彼と、同じ顔をしていた。
『千秋万古の飢えは未だ満たされず、安着には程遠い。
なれど斯様な身体を以てすれば、早々に我が誓願も果たされよう』
悪魔にでも誓願をかけたのか。神を語るも烏滸がましい淫猥の極みのような痴態を繰り広げながらも、確かに彼は、悪魔に魅入られたように美しかった。
『心配は無用。貴様の身体は丁重に扱おう。何せ、
遂に吾が子を宿すことが適う、真に稀少な母胎の持ち主。
無闇に嬲って壊したりはせぬ』
ーーー子を、宿す?
『幾度転生を繰り返そうとも叶うに能わぬ宿願ぞ?
貴様の様に脆弱な子供には、ちと荷が勝ち過ぎていようが……
致し方あるまいよ。何れ慣れよう。
貴様もこの泡沫の戯れを存分に愉しむが好い』
まるで老爺の物言いながら、転生だ宿願だと大仰なことを吐かしている、一体彼は何者なんだ?疑問ばかりが渦巻いて、思考が四散する。何故僕が此処にいて、彼が僕の代わりに動いているのか?彼の目的は?子を宿して如何したいのか?
何ひとつ分らない。想像すらつかない。思い当たる節が欠片も存在しない。
『漸く吾が適合する身体を手に入れたのだ。
女子の振りなどして居るから捜すのに手間取ったわ。
男児なればこそ、我が血族の宿願も果たせよう。
そのための半陰陽。正しく吾が血を継ぐに相応しき受け皿よ』
この中途半端な身体が、正しい、と?
『然なり。貴様らの言葉にすればΩと云うたか』
Ωなら、そこら中に掃いて捨てる程に溢れている。何故僕だ。僕でなければならない理由が何処にある。
『半陰陽のΩである、特異な身体を持つ者にこそ受け継がれるは女王の血なり』
男なのに女王?笑わせるな。
『……言葉の綾も解さぬとは、ほんに未熟な雛鳥よ。
だが悦ぶがいい。
醜い家鴨はその実、類稀なる至高の鳳雛であった。
最早あらゆる障壁は消え去り、貴様の前に在るのは栄光の玉座のみ。
全てのαを従えて君臨する、Ωの明星となる。
吾が貴様を、その玉座に据えてやろう』
全てのαを従える?この僕が?何を、云っている?
αの陰に隠れて、薄暮の中に紛れて、息を潜めながら己の尊厳を奪われずに済む方法を探し続ける憐れな生き物。己の意思とは無関係に強烈に相手を誘う香りを発しながら、拒む権利すら与えられずに隷属させられる。絶対的弱者。それがΩだ。
誰かと愛し愛されて想いを添い遂げながら番うことなど、夢物語に過ぎなかった。それは、僕が一番、知っている。そんな僕が、αの上に立つ?何だそれ……
「……面白そうじゃないか」
我知らず、口角が上がる。
ーーー心の奥の奥のずっと封印していた檻の鍵が、
かちゃりと音を立てて、中から
禍禍しい怖気を振り撒きながら
化け物が這い出してくる幻影が見えたーーー
化け物は、眼前の彼と、同じ顔をしていた。
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