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第一章【ダンジョンが出現した現代】
ゴブリンマジシャン
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「ウルフミート……一応、取っておくか」
皮を剥がした肉に【識別】を掛けた俺は、眉をひそめるつつもそう呟いた。
八階へと進んだ俺は、仕留めたアイソレイトウルフ等の荷物を整理するため、八階層の転移陣を使って五階に転移していた。
そこでアイソレイトウルフやバトルチキンを解体し、荷物整理やアイテムの識別をする作業をしていたところだ。
「うーん不思議だ。肉に血は無いのに脂がある。だってのに、皮には脂が欠片も付いてない。あれだけ垂れてたよだれも付いてないし、内臓も無い。んー、便利だなぁ! ハッハッハッ!」
解体したモンスターの状態に疑問を持つ。
キックラビットの時もそうだったが、倒したモンスターはそれぞれがランダムに不自然な状態で残る。
スライムの様に丸々残る場合もあれば、ゴブリンの様に所持品のみを残してマナになるモンスターもいる。
獣型のモンスターも、全体を通して血液等の体液は無く、毛皮や羽根は取りやすくなており、内臓も有ったり無かったりする。
しかし俺は、その現象に疑問を持ちつつも感謝していた。
血や糞尿に汚れる事もなく、悪臭に嘆くこともない。それらの処理に苦労せずに済む。
狩猟の経験が皆無な現代人の俺に取って、それらは不快且つやりたくない分類の物事だ。
それをダンジョン側の処理であろう、マナの噴出による不要な部分を取り除く処理と仮定している現象は、俺に取って喜ばしいものだった。
「さてと、後はバトルチキン……いや、キックラビットの方にしとくか。勿体無いし」
アイソレイトウルフを見て思い付いた作戦を試すべく、キックラビットを細かく解体していく。
事前に兎の解体動画を見ていたので、淀み無くキックラビットを分解することが出来た。
そして細かく切った肉を【ラージポケット】化したポーチにしまうと、転移陣を使って八階へと転移した。
■
八階層。前階層より枯れ葉が減り、木々も乱雑に生えた様相のフィールド。
「結構変わるなぁ」
どちらかと言えば慎重な俺は、思いの外早く変わる階層の内容にため息を吐いた。
何せ目につくもの全てに【識別】を掛けて調べているからだ。
今までの階層でもそうだったので、これからも変わらないだろう。何せそれをすることで良いことが起きると知っているから。
「ん、何か見たことある葉っぱ……【識別】……おお!」
何時もの様に、気になったものに【識別】を発動する。
【ウィンター・ダンジョン・キャロット:冬季限定で生えるダンジョンキャロット。大きな根と葉、赤とみまごう程に強いオレンジが特徴。食可】
表示された【識別】の結果に逸る気持ちを押さえつつ、錆びた剣を突き刺して土を解し、それを引っこ抜いた。
「デッッッカ! 大根か?」
想像より大きな人参に驚く。まるで大根のような大きさに、思わずそれを剣のように掲げる。
「……良いねぇ……お、まだある。もうちょっと採ってくか」
「ギャギャア!」
「んッ?! なん──うぉあっぶねッ!?」
背後から飛来する火の玉を、咄嗟に構えた盾で防ぐ。
代償に盾が燃えるが、すぐに棄てることで装備への引火を防いだ。
「何だいきなりッ!」
地面に突き刺したままの剣の代わりに手に持っていたウィンター・D・キャロットを構えながら、火の玉を飛ばしてきた害敵を睨む。
「グルルルッ!」
「ギギィ~!」
「ああ? ゴブリンと痩せ狼……いや、何か違うな」
大器に牙を剥き唸るのは、ゴブリンに飼われているからか、肉付きの良くなったアイソレイトウルフ──使役された狼。
そんなコーザティブウルフに指示を出すのは、不恰好な杖を持ちボロいローブを着たゴブリン──ゴブリンマジシャン。
二匹のモンスターが、採取中に襲い掛かってきた。
何故か怒った様子のゴブリンマジシャンが攻撃の指示を出す。
その指示を聞き、俺に向かって飛び掛かるコーザティブウルフ。
武器も盾も手に無い俺は、牙を剥き噛みつこうとするコーザティブウルフに対応する術が無い。
(左腕を犠牲に──嫌。人参で殴る──効果は薄い──いや、ある!)
駆け巡る思考の中、切り捨てようとした策を拾い上げる。そして思い付いた作戦を実行するため、右手を引き絞り、がら空きな敵の口に向かって、手に持ったウィンター・D・キャロットを突き出した。
「おらぁ!」
「ウォゴッ!?」
狙い通り、コーザティブウルフの喉にウィンター・D・キャロットが突き刺さる。
突然に捩じ込まれた巨大な異物に、コーザティブウルフはそれを吐き出すために息を吸った。
「ゴッ!? ゴアッ、ガフッ……!」
「気管支か肺に土が入ったか? キツいよな、それ」
想定したとおり、コーザティブウルフは土を吸い込んでしまっていた。
挙げ句、巨大な異物が口と喉を貫いているので、気道も潰されている。放っておいてもそのうちに息絶えるだろう。
しかしそんな暇は無い。コーザティブウルフに構っている間に、ゴブリンマジシャンが魔法を準備していたのだ。
「マズッ!?」
「ギャガァ!」
ゴブリンマジシャンが火の玉を放を放った。
今の俺は非武装。盾も燃やされ、武器も今しがた敵に突き刺したばかり。
故に、この攻撃を防ぐ方法は──
「ごめんね狼くん!」
「ッ!?」
「ギャガ!?」
俺は側で悶えていたコーザティブウルフの顎を掴み、盾にするように持ち上げた。
すると、 俺を狙った火の玉はコーザティブウルフの背に当たる。
「今だッ!」
コーザティブウルフを放り投げ、地面に刺していた剣を引き抜いてゴブリンマジシャンに向かって駆ける。
それを見て、ゴブリンマジシャンは杖に手を添えて何やら呟き始めた。
「ギッグガギギィ~~……!」
「遅い!」
杖が光を放つが既に遅く、剣によって喉を貫かれ、ゴブリンマジシャンはマナの塵と成って消えた。
ドロップアイテムを拾い上げた俺は、ゴブリンマジシャンの使っていた杖を弄びながら考えた。
(魔法……思った以上にヤバかったな。盾は燃えるし、剣じゃ防げない。……どうしたもんか)
ドロップアイテムをバックパックに仕舞い、そろそろ息絶えている頃合いであろうコーザティブウルフを見る。
案の定、コーザティブウルフはその身体からマナを吹き出してドロップアイテムに成っていた。
「……ん~?」
コーザティブウルフであったものを見た俺は、うっすらと感じた違和感に眉をひそめる。
アイソレイトウルフより豊な体毛は、色もくすんでおらず艶やかだ。
「──あ、焦げてないんだ」
毛皮を撫でながら呟く。その言葉通り、ゴブリンマジシャンの放った火の玉が直撃した部分を調べると、若干熱が残っていることと毛先が溶けている程度で、コーザティブウルフに何のダメージも無い事が分かった。
「……ふむ」
俺はカッターナイフを取り出し、コーザティブウルフの解体を始めた。相変わらず体液も内臓も無く、皮も切れ目を入れればズルズルと剥がす事ができる。
そして剥がし終わった毛皮に【識別】を掛けると、魔法を食らってもコーザティブウルフが無事だった理由が解った。
【コーザティブウルフの毛皮:コーザティブウルフから剥ぎ取った毛皮。多少の餌にありつけた為か質が良い。ゴブリンマジシャンに使役されていた為か、魔力耐性が高い】
「魔法耐性! 通りで焦げてない訳だ。……するとあれから? あの火の玉は“火”じゃなく“魔法”なのか」
解決した側から疑念が沸き上がる。
疑念の内容を忘れないうちにスマホのメモに書き込むと、バックパックに肉をしまい、代わりに木の盾を取り出してコーザティブウルフの毛皮を結び付けた。
「うーん、獅子舞みてぇだな」
木の盾のグリップに前肢の部分を結んだだけの盾──毛皮の盾は、妙な既視感を醸し出していた。
実際、盾の裏を下にして平行に持てば、板の上に寝そべる狼が、見てて不安になる程に頭をグワングワンと揺らしている。
ただ獅子舞とは違い、盾として利用すると狼の顔が此方に向き、何もない空っぽの目が持ち主を咎めるかのように見てくるが。
「……やかましい」
毛皮を叩き、妙な雰囲気を払拭した俺は、実際に盾が魔法を相手に使えるか試すためゴブリンマジシャンを探しに先へと進んだ。
皮を剥がした肉に【識別】を掛けた俺は、眉をひそめるつつもそう呟いた。
八階へと進んだ俺は、仕留めたアイソレイトウルフ等の荷物を整理するため、八階層の転移陣を使って五階に転移していた。
そこでアイソレイトウルフやバトルチキンを解体し、荷物整理やアイテムの識別をする作業をしていたところだ。
「うーん不思議だ。肉に血は無いのに脂がある。だってのに、皮には脂が欠片も付いてない。あれだけ垂れてたよだれも付いてないし、内臓も無い。んー、便利だなぁ! ハッハッハッ!」
解体したモンスターの状態に疑問を持つ。
キックラビットの時もそうだったが、倒したモンスターはそれぞれがランダムに不自然な状態で残る。
スライムの様に丸々残る場合もあれば、ゴブリンの様に所持品のみを残してマナになるモンスターもいる。
獣型のモンスターも、全体を通して血液等の体液は無く、毛皮や羽根は取りやすくなており、内臓も有ったり無かったりする。
しかし俺は、その現象に疑問を持ちつつも感謝していた。
血や糞尿に汚れる事もなく、悪臭に嘆くこともない。それらの処理に苦労せずに済む。
狩猟の経験が皆無な現代人の俺に取って、それらは不快且つやりたくない分類の物事だ。
それをダンジョン側の処理であろう、マナの噴出による不要な部分を取り除く処理と仮定している現象は、俺に取って喜ばしいものだった。
「さてと、後はバトルチキン……いや、キックラビットの方にしとくか。勿体無いし」
アイソレイトウルフを見て思い付いた作戦を試すべく、キックラビットを細かく解体していく。
事前に兎の解体動画を見ていたので、淀み無くキックラビットを分解することが出来た。
そして細かく切った肉を【ラージポケット】化したポーチにしまうと、転移陣を使って八階へと転移した。
■
八階層。前階層より枯れ葉が減り、木々も乱雑に生えた様相のフィールド。
「結構変わるなぁ」
どちらかと言えば慎重な俺は、思いの外早く変わる階層の内容にため息を吐いた。
何せ目につくもの全てに【識別】を掛けて調べているからだ。
今までの階層でもそうだったので、これからも変わらないだろう。何せそれをすることで良いことが起きると知っているから。
「ん、何か見たことある葉っぱ……【識別】……おお!」
何時もの様に、気になったものに【識別】を発動する。
【ウィンター・ダンジョン・キャロット:冬季限定で生えるダンジョンキャロット。大きな根と葉、赤とみまごう程に強いオレンジが特徴。食可】
表示された【識別】の結果に逸る気持ちを押さえつつ、錆びた剣を突き刺して土を解し、それを引っこ抜いた。
「デッッッカ! 大根か?」
想像より大きな人参に驚く。まるで大根のような大きさに、思わずそれを剣のように掲げる。
「……良いねぇ……お、まだある。もうちょっと採ってくか」
「ギャギャア!」
「んッ?! なん──うぉあっぶねッ!?」
背後から飛来する火の玉を、咄嗟に構えた盾で防ぐ。
代償に盾が燃えるが、すぐに棄てることで装備への引火を防いだ。
「何だいきなりッ!」
地面に突き刺したままの剣の代わりに手に持っていたウィンター・D・キャロットを構えながら、火の玉を飛ばしてきた害敵を睨む。
「グルルルッ!」
「ギギィ~!」
「ああ? ゴブリンと痩せ狼……いや、何か違うな」
大器に牙を剥き唸るのは、ゴブリンに飼われているからか、肉付きの良くなったアイソレイトウルフ──使役された狼。
そんなコーザティブウルフに指示を出すのは、不恰好な杖を持ちボロいローブを着たゴブリン──ゴブリンマジシャン。
二匹のモンスターが、採取中に襲い掛かってきた。
何故か怒った様子のゴブリンマジシャンが攻撃の指示を出す。
その指示を聞き、俺に向かって飛び掛かるコーザティブウルフ。
武器も盾も手に無い俺は、牙を剥き噛みつこうとするコーザティブウルフに対応する術が無い。
(左腕を犠牲に──嫌。人参で殴る──効果は薄い──いや、ある!)
駆け巡る思考の中、切り捨てようとした策を拾い上げる。そして思い付いた作戦を実行するため、右手を引き絞り、がら空きな敵の口に向かって、手に持ったウィンター・D・キャロットを突き出した。
「おらぁ!」
「ウォゴッ!?」
狙い通り、コーザティブウルフの喉にウィンター・D・キャロットが突き刺さる。
突然に捩じ込まれた巨大な異物に、コーザティブウルフはそれを吐き出すために息を吸った。
「ゴッ!? ゴアッ、ガフッ……!」
「気管支か肺に土が入ったか? キツいよな、それ」
想定したとおり、コーザティブウルフは土を吸い込んでしまっていた。
挙げ句、巨大な異物が口と喉を貫いているので、気道も潰されている。放っておいてもそのうちに息絶えるだろう。
しかしそんな暇は無い。コーザティブウルフに構っている間に、ゴブリンマジシャンが魔法を準備していたのだ。
「マズッ!?」
「ギャガァ!」
ゴブリンマジシャンが火の玉を放を放った。
今の俺は非武装。盾も燃やされ、武器も今しがた敵に突き刺したばかり。
故に、この攻撃を防ぐ方法は──
「ごめんね狼くん!」
「ッ!?」
「ギャガ!?」
俺は側で悶えていたコーザティブウルフの顎を掴み、盾にするように持ち上げた。
すると、 俺を狙った火の玉はコーザティブウルフの背に当たる。
「今だッ!」
コーザティブウルフを放り投げ、地面に刺していた剣を引き抜いてゴブリンマジシャンに向かって駆ける。
それを見て、ゴブリンマジシャンは杖に手を添えて何やら呟き始めた。
「ギッグガギギィ~~……!」
「遅い!」
杖が光を放つが既に遅く、剣によって喉を貫かれ、ゴブリンマジシャンはマナの塵と成って消えた。
ドロップアイテムを拾い上げた俺は、ゴブリンマジシャンの使っていた杖を弄びながら考えた。
(魔法……思った以上にヤバかったな。盾は燃えるし、剣じゃ防げない。……どうしたもんか)
ドロップアイテムをバックパックに仕舞い、そろそろ息絶えている頃合いであろうコーザティブウルフを見る。
案の定、コーザティブウルフはその身体からマナを吹き出してドロップアイテムに成っていた。
「……ん~?」
コーザティブウルフであったものを見た俺は、うっすらと感じた違和感に眉をひそめる。
アイソレイトウルフより豊な体毛は、色もくすんでおらず艶やかだ。
「──あ、焦げてないんだ」
毛皮を撫でながら呟く。その言葉通り、ゴブリンマジシャンの放った火の玉が直撃した部分を調べると、若干熱が残っていることと毛先が溶けている程度で、コーザティブウルフに何のダメージも無い事が分かった。
「……ふむ」
俺はカッターナイフを取り出し、コーザティブウルフの解体を始めた。相変わらず体液も内臓も無く、皮も切れ目を入れればズルズルと剥がす事ができる。
そして剥がし終わった毛皮に【識別】を掛けると、魔法を食らってもコーザティブウルフが無事だった理由が解った。
【コーザティブウルフの毛皮:コーザティブウルフから剥ぎ取った毛皮。多少の餌にありつけた為か質が良い。ゴブリンマジシャンに使役されていた為か、魔力耐性が高い】
「魔法耐性! 通りで焦げてない訳だ。……するとあれから? あの火の玉は“火”じゃなく“魔法”なのか」
解決した側から疑念が沸き上がる。
疑念の内容を忘れないうちにスマホのメモに書き込むと、バックパックに肉をしまい、代わりに木の盾を取り出してコーザティブウルフの毛皮を結び付けた。
「うーん、獅子舞みてぇだな」
木の盾のグリップに前肢の部分を結んだだけの盾──毛皮の盾は、妙な既視感を醸し出していた。
実際、盾の裏を下にして平行に持てば、板の上に寝そべる狼が、見てて不安になる程に頭をグワングワンと揺らしている。
ただ獅子舞とは違い、盾として利用すると狼の顔が此方に向き、何もない空っぽの目が持ち主を咎めるかのように見てくるが。
「……やかましい」
毛皮を叩き、妙な雰囲気を払拭した俺は、実際に盾が魔法を相手に使えるか試すためゴブリンマジシャンを探しに先へと進んだ。
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