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[14]騎士と兵士

-147-:まだ手を出し尽くしていない者を僕はを助けなどしない

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 再びウッズェがミサイルを発射!

 残り弾数12発すべてを発射した。

 大空に広く描かれるミサイルの吐き出す白煙の軌道。

 その全てが、やがて一つの標的ターゲットを目指して飛んでゆく。

「アレが白側の騎士ナイト…」
 ヒューゴはミサイル群に追われる戦闘機を眺めていた。

「くそぅ!とうとうダナが現れてしまったか!こっちは全く身動きが取れないという時に!」
 ダナの登場にクィックフォワードは悔しさを露わにしている。

 内心、助けを求めたいものの、上空のダナはそれ以上のピンチに晒されている。

 何か手を打たないと…。

「ココミ!上空の連中に、こっちに降りてくるよう伝えてくれ」
 突然の申し出に。

「何を考えている?高砂・飛遊午」
 クィックフォワードが訊ねてきた。

「あのミサイルで、この剣の檻を破壊してもらう」
 それは無茶だと、クィックフォワードは呆れて絶句。

「できない事は無いさ。さっきだって、空中で急ブレーキをかけたんだから、この檻の手前で急旋回したら、檻にミサイルが着弾して破壊できるはずなんだ」
 策を説明するも、クィックフォワードはただただ「ミサイルだぞ」不信感を露わにする。

 そうこうしている内に、ガキンッ!またもや包帯の刃が狭まりつつあった。

 再び上空へと目線を向ける。

「あっ」
 思わず声を上げた。

 上空のダナは追尾してくるミサイルたちを、次々と両肩のガトリングポッドで撃ち落としているではないか。

「ココミ!上の連中に、まだ伝えていないのか!?」
 慌てふためき、催促していると。

「聞いていれば、随分と頭の悪い脱出策を叩き出しているのだな。高砂・飛遊午」

「その声は!?」
 驚いた事に、オープン回線で耳に届いたのは、草間・涼馬の声だった。

「敵の発射したミサイルで、その檻を破壊するだと?君は爆炎とか爆風の二次被害を頭に入れていないのか?」

「いや、この檻の硬さを破るためだ。多少の犠牲は覚悟しているつもりだが…」「甘いッ!」
 ヒューゴの発想は無情にも一蹴された。

 その最中にも、リョーマは追ってくるミサイルをすべて撃ち落としてしまった。

 ヒューゴの希望は呆気なく潰えた。

「そうだ!それなら、あそこのアルルカンを倒してくれ。ヤツは今、この包帯を頑丈にするために全力を注いでいるから、防御も回避もできない状態にある」
 アルルカンを指差して訴えかけるも、リョーマは応えず。それならば。

「今なら簡単に撃墜スコアが稼げるぞ」
 鼻先にニンジンをぶら下げてやる。

 でも、リョーマは食いつく事はしなかった。

「まだ手を出し尽くしていない者を僕はを助けなどしない」
 無視している訳でもなく、しかし、無情にも檻に囚われているクィクフォワードの脇をすり抜けていった。

 瞬間!風防キャノピー越しにパイロットの姿が目に映った。

 それは軍隊で使われている物とは程遠い、先端が鋭角なヘルメット。そして両肩はせり出したプロテクターのようなものが備え付けられていた。

(何ちゅう恰好で乗っているんだ?あの男は)
 努力が足りないと説教された事など、すっぱりと頭から消え去っていた。

 ガウォーク姿のダナが地面スレスレに降下してホバリング移動に移行。

 両肩のガンポッドが描く火線はウッズェを捉え続けている。

 しかし。

 とたんに俊敏になったウッズェは、跳躍を繰り返して、ことごとく回避して見せていた。

 先ほどまで頑丈だったウッズェも、ガワを取った姿だと機銃掃射で風穴が空くのだろう。

 余裕の無いコトで…。

 視線を再び剣の檻へと戻す。

 はてさて、コイツをどうしたものか…。

 ヒューゴは、とうとう腕を組んで考え込んでしまった。

「方法なら有るのだ」
 突然のクィックフォワードの声。

「方法?」

「君と私は、どうやら相性が悪いらしい。君の必殺剣も不発に終わっているようだし」

「いや、もう少し時間があれば慣れるさ」
 もう一度チャレンジしようと二天撃の体勢に入る。

「無様を承知で君に申し出よう。ベルタになって、この剣の檻を攻略してくれ」

「な、何を?」
 思いも寄らないクィックフォワードの申し出に唖然&困惑。
 
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