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[26]闇を貪る者
-290-:次はどこを斬り刻んで欲しい?
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不覚にも、オロチは妲己に近接戦距離にまで接近を許してしまった。
「何だい?妲己」
訊ねると同時に、オロチは自身の左腕を斬り落とされている事に気付いた。
「何のつもり!?御陵・御伽!」
神楽・いおりが問い詰めるも、オトギは答えようとしない。
しかも。
「何をやっている!?オトギ!いつの間に妾からコントロールを奪った?」
妲己までもがオトギに訊ねている。
妲己の騎体が、さらにオロチの右脚を突き刺し破壊。
堪らずイオリは効果魔法の損傷回復を発動させた。
それでもなおオトギは手を止める事無く、またもや左腕はおろか、今度は伸ばした右腕さえも斬り落としてしまった。
「どうして!?何故、オートカウンターが発動しない?」
オロチの特殊能力であるオートカウンター、攻撃そのものを体中に配置しているドラゴンヘッドが食らうはずなのだが、それが、まるで機能していない。
共闘アンデスィデだから、敵認証から排除していた!?
原因を探るイオリであったが、あれはあくまでも示し合わせてのものであり、システムで行っていたものではない。
黒側の妲己は最初から敵認証したままだ。
だったら、何故、オートカウンターが発動しない?
「どうして?って。さっき、キミたちがボクに提供してくれたじゃないか。キミたちの一部をさ」
イオリもオロチも、そしてココミも聞いた事のない少女の声を耳にした。
そんな事よりも、この謎の人物の言った“オロチの一部”とは、何なのか?
「まさか!妲己!貴様ぁ、さっき触れたアーマーテイカーで何かしでかしおったなぁ!」
確かに、先程、妲己はシャドーのアーマーテイカーに触れて危機を脱した。
だけど。
「何をほざく!妾は、そのような如何わしい能力など持ち合わせてはおらぬ!」
反論する妲己ではあるが、自身の騎体を止める事ができない。
確かに、カタログスペックには、妲己に敵の能力を奪う能力は記載されていない。
ライクは魔導書を開いて確認した。
「あっ、そうだ!ゴメンね。もっと前に、キミの一部を取り込んでいたんだっけ」
謎の声が思い出したように告げたとたん、妲己の騎体の左肩が紫の煙に包まれ、晴れると、何と!オロチの左肩と同じドラゴンヘッドに変化したではないか。
「もしや!それは“助さん”!?」
オロチは驚愕する。
廃病院から以降、行方不明になっていた助六の部位が、妲己の左肩に現れたから。
「こ、これは!?どういう事ですか?」
この状況、誰に問えば良いのか?ココミはライクに、そして魔導書へと次々と視線を移すも、誰も応えてはくれない。
謎の声の高笑いが木霊する中、妲己の騎体が天に掲げた蛇鉾が紫の煙に包まれてゆく。
やがて紫の煙が晴れてゆく…。
「ふふふ」
不敵に笑う声と共に、妲己の得物が、太陽のオクが得物としていた大鎌へと変化を遂げていた。
「どうなっている!?」
当の妲己が訊ねている。
「死神の大鎌…。ふふふ。これで神楽・いおりの命を刈り取れという訳ね」
大鎌を手にしたオトギは、高揚感を抑え切れずにいた。
薙刀とは随分と使い勝手が異なるが、長柄武器として使うには問題無い。
ブゥゥンッ!
大鎌の一閃が走り、オロチの頭部が斬り落とされてしまった。
盤上戦騎の隠された特性である“破壊衝動の促進”以上に、今のオトギは、オロチを切り刻む度に、身体が熱くなる感覚にとらわれていた。
「オトギ・・止めろ。妾にコントロールを返すのじゃ」
説得するも、オトギはなおもオロチの体を斬り刻んでゆく。今度は両脚を切断した。
もはや説得に耳を貸すどころか、今のオトギはオロチを切り刻む事に快感を覚えていた。
恍惚の眼差しで、獲物としたオロチを見やる。
「どう?イオリ。次はどこを斬り刻んで欲しい?」
気持ちが高まり、声が上ずっている。
誰の目にも間違いなく、今の妲己の騎体のコントロールはオトギに渡っていると理解できる。
「まさか、貴女と直接戦う事になるとはね」
イオリは、またもリペアを発動させて完全回復。4つのドラゴンヘッドを伸ばして、一斉攻撃を仕掛けるも、オトギの槍さばきによって、いとも簡単にすべての頭部は斬り落とされてしまった。
物理的な戦闘能力では、オトギの方がイオリを圧倒していた。
振り下ろされた大鎌を、何とか七支剣で受け止めた。
「調子に乗るのは、ここまでよ!貴女程度の霊力で、そんなに張り切って動いたら、そろそろ活動限界を迎えるんじゃない?」
圧倒されながらも、余裕を崩さないイオリ。
だけど、未だ勢いの衰えないオトギに、次第に焦りを見せ始めた。
「貴女!本当に御陵・御伽なの!?貴女が、こんなに女王を長く持続させて動かせるはずが無い」
オロチの騎体が押されている。
信じられない事に、パワー負けを喫している。
「馬鹿な…」
ディスプレー越しに目に映る妲己が、ドス黒い霊力をまとっている。
渾身の力を振り絞り、妲己を足蹴にして、距離を離す。
そして、間髪入れずに、オロチは背部に折り畳んでいた長距離砲を展開、妲己に向けて発射した。
無標準ではあったが、砲弾は直撃し、妲己は爆炎に包まれた。
すると、爆炎の中から伸びてきた妲己の左肩のドラゴンヘッドが、オロチの首に食らいついた。
「さすがにオートカウンターは発動しないか・・。でも、この伸びる首は十分使えるね」
またもや聞いた事の無い声。
「貴様ぁ!何奴じゃぁッ!名を名乗れぃ!」
コクピット内に潜んでいるだろう侵入者に、妲己はとうとう激高した。
「んー、そろそろ名乗っちゃおうかな。ボクの名前はジョーカー」
謎の少女が自らを名乗った。
「ジョーカーじゃと?」
妲己は初めて耳にするようだったが。
「何!?ジョーカーじゃと!何故、貴様がこちらの世界に残っておるのじゃ!?」
オロチは知っている模様。
「どういう事です?オロチ様」
ココミが訊ねた。
「こやつは前回の王位継承戦で、4つの何処の軍勢にも属さぬワイルドカードじゃ」
前回の王位継承戦は、トランプカードのポーカーゲームをモチーフとしていた。
4つのアルカナをそれぞれの軍勢として率いて、倒して奪った他のカードを組み合わせて“役”を作り上位騎、いわゆる絵札に対抗する力を得る。
役を作るにあたり、足りないカードを、ジョーカーで代用して役を作る。
つまり、前回の王位継承戦に参戦した魔者は52体ではなく、正確にはジョーカーを含めた53体だったのだ。
「ボクはね。魔者は魔者でも、前回の王位継承戦で初めて造られた魔者なんだよ。だから、王位継承戦が終わっても、この世界が僕の生まれた地だったから、留まる事ができたんだ。まあ、生き永らえるのに、数えきれないくらいの人間を襲ったけどね」
人を襲う事に、まったく罪悪感を感じていないことから、ジョーカーは人間から魔者となった“死なざる者ではない。
彼女は、ポーカーゲームを成立させるためだけに生み出された魔者と言える。
つくづく偉大なる支配者という神の神は、問題を次々と引き起こしてくれる。
「さて、イオリ。未だオトギの霊力が尽きない理由を、キミに教えてあげよう」
ジョーカーがイオリの疑問に答えてくれた。
「何だい?妲己」
訊ねると同時に、オロチは自身の左腕を斬り落とされている事に気付いた。
「何のつもり!?御陵・御伽!」
神楽・いおりが問い詰めるも、オトギは答えようとしない。
しかも。
「何をやっている!?オトギ!いつの間に妾からコントロールを奪った?」
妲己までもがオトギに訊ねている。
妲己の騎体が、さらにオロチの右脚を突き刺し破壊。
堪らずイオリは効果魔法の損傷回復を発動させた。
それでもなおオトギは手を止める事無く、またもや左腕はおろか、今度は伸ばした右腕さえも斬り落としてしまった。
「どうして!?何故、オートカウンターが発動しない?」
オロチの特殊能力であるオートカウンター、攻撃そのものを体中に配置しているドラゴンヘッドが食らうはずなのだが、それが、まるで機能していない。
共闘アンデスィデだから、敵認証から排除していた!?
原因を探るイオリであったが、あれはあくまでも示し合わせてのものであり、システムで行っていたものではない。
黒側の妲己は最初から敵認証したままだ。
だったら、何故、オートカウンターが発動しない?
「どうして?って。さっき、キミたちがボクに提供してくれたじゃないか。キミたちの一部をさ」
イオリもオロチも、そしてココミも聞いた事のない少女の声を耳にした。
そんな事よりも、この謎の人物の言った“オロチの一部”とは、何なのか?
「まさか!妲己!貴様ぁ、さっき触れたアーマーテイカーで何かしでかしおったなぁ!」
確かに、先程、妲己はシャドーのアーマーテイカーに触れて危機を脱した。
だけど。
「何をほざく!妾は、そのような如何わしい能力など持ち合わせてはおらぬ!」
反論する妲己ではあるが、自身の騎体を止める事ができない。
確かに、カタログスペックには、妲己に敵の能力を奪う能力は記載されていない。
ライクは魔導書を開いて確認した。
「あっ、そうだ!ゴメンね。もっと前に、キミの一部を取り込んでいたんだっけ」
謎の声が思い出したように告げたとたん、妲己の騎体の左肩が紫の煙に包まれ、晴れると、何と!オロチの左肩と同じドラゴンヘッドに変化したではないか。
「もしや!それは“助さん”!?」
オロチは驚愕する。
廃病院から以降、行方不明になっていた助六の部位が、妲己の左肩に現れたから。
「こ、これは!?どういう事ですか?」
この状況、誰に問えば良いのか?ココミはライクに、そして魔導書へと次々と視線を移すも、誰も応えてはくれない。
謎の声の高笑いが木霊する中、妲己の騎体が天に掲げた蛇鉾が紫の煙に包まれてゆく。
やがて紫の煙が晴れてゆく…。
「ふふふ」
不敵に笑う声と共に、妲己の得物が、太陽のオクが得物としていた大鎌へと変化を遂げていた。
「どうなっている!?」
当の妲己が訊ねている。
「死神の大鎌…。ふふふ。これで神楽・いおりの命を刈り取れという訳ね」
大鎌を手にしたオトギは、高揚感を抑え切れずにいた。
薙刀とは随分と使い勝手が異なるが、長柄武器として使うには問題無い。
ブゥゥンッ!
大鎌の一閃が走り、オロチの頭部が斬り落とされてしまった。
盤上戦騎の隠された特性である“破壊衝動の促進”以上に、今のオトギは、オロチを切り刻む度に、身体が熱くなる感覚にとらわれていた。
「オトギ・・止めろ。妾にコントロールを返すのじゃ」
説得するも、オトギはなおもオロチの体を斬り刻んでゆく。今度は両脚を切断した。
もはや説得に耳を貸すどころか、今のオトギはオロチを切り刻む事に快感を覚えていた。
恍惚の眼差しで、獲物としたオロチを見やる。
「どう?イオリ。次はどこを斬り刻んで欲しい?」
気持ちが高まり、声が上ずっている。
誰の目にも間違いなく、今の妲己の騎体のコントロールはオトギに渡っていると理解できる。
「まさか、貴女と直接戦う事になるとはね」
イオリは、またもリペアを発動させて完全回復。4つのドラゴンヘッドを伸ばして、一斉攻撃を仕掛けるも、オトギの槍さばきによって、いとも簡単にすべての頭部は斬り落とされてしまった。
物理的な戦闘能力では、オトギの方がイオリを圧倒していた。
振り下ろされた大鎌を、何とか七支剣で受け止めた。
「調子に乗るのは、ここまでよ!貴女程度の霊力で、そんなに張り切って動いたら、そろそろ活動限界を迎えるんじゃない?」
圧倒されながらも、余裕を崩さないイオリ。
だけど、未だ勢いの衰えないオトギに、次第に焦りを見せ始めた。
「貴女!本当に御陵・御伽なの!?貴女が、こんなに女王を長く持続させて動かせるはずが無い」
オロチの騎体が押されている。
信じられない事に、パワー負けを喫している。
「馬鹿な…」
ディスプレー越しに目に映る妲己が、ドス黒い霊力をまとっている。
渾身の力を振り絞り、妲己を足蹴にして、距離を離す。
そして、間髪入れずに、オロチは背部に折り畳んでいた長距離砲を展開、妲己に向けて発射した。
無標準ではあったが、砲弾は直撃し、妲己は爆炎に包まれた。
すると、爆炎の中から伸びてきた妲己の左肩のドラゴンヘッドが、オロチの首に食らいついた。
「さすがにオートカウンターは発動しないか・・。でも、この伸びる首は十分使えるね」
またもや聞いた事の無い声。
「貴様ぁ!何奴じゃぁッ!名を名乗れぃ!」
コクピット内に潜んでいるだろう侵入者に、妲己はとうとう激高した。
「んー、そろそろ名乗っちゃおうかな。ボクの名前はジョーカー」
謎の少女が自らを名乗った。
「ジョーカーじゃと?」
妲己は初めて耳にするようだったが。
「何!?ジョーカーじゃと!何故、貴様がこちらの世界に残っておるのじゃ!?」
オロチは知っている模様。
「どういう事です?オロチ様」
ココミが訊ねた。
「こやつは前回の王位継承戦で、4つの何処の軍勢にも属さぬワイルドカードじゃ」
前回の王位継承戦は、トランプカードのポーカーゲームをモチーフとしていた。
4つのアルカナをそれぞれの軍勢として率いて、倒して奪った他のカードを組み合わせて“役”を作り上位騎、いわゆる絵札に対抗する力を得る。
役を作るにあたり、足りないカードを、ジョーカーで代用して役を作る。
つまり、前回の王位継承戦に参戦した魔者は52体ではなく、正確にはジョーカーを含めた53体だったのだ。
「ボクはね。魔者は魔者でも、前回の王位継承戦で初めて造られた魔者なんだよ。だから、王位継承戦が終わっても、この世界が僕の生まれた地だったから、留まる事ができたんだ。まあ、生き永らえるのに、数えきれないくらいの人間を襲ったけどね」
人を襲う事に、まったく罪悪感を感じていないことから、ジョーカーは人間から魔者となった“死なざる者ではない。
彼女は、ポーカーゲームを成立させるためだけに生み出された魔者と言える。
つくづく偉大なる支配者という神の神は、問題を次々と引き起こしてくれる。
「さて、イオリ。未だオトギの霊力が尽きない理由を、キミに教えてあげよう」
ジョーカーがイオリの疑問に答えてくれた。
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