戦うヒーローたちは小料理屋で大忙し！ ～真面目な悪と不真面目な正義のバトル～

第６８話

１人のバイト戦闘が、コインランドリーのエアコンの温度を上げて、すぐに店内を去った。

しばらくして、健と阿蘭は、店内が、やや暑く感じた。

健が「さっきより暑く感じるな。さっき、店員の人がいたけど、もういないから、暑いって言えないな。リモコンもないし、温度調節もできないしな。」

阿蘭は「ここに来る前に、自動販売機で買ったミネラルウォーターがあるから、それでも飲んでおこうよ。はい、健の分。」

阿蘭は健にミネラルウォーターのボトルを渡した。

健は「サンキュー！」と言って、受け取った。

その時だった。一見して、怖そうなヤンキーにいちゃんが店内に入ってきた。そのにいちゃんは、エアコンの温度を上げたのとは別のバイト戦闘員だった。ヤンキー戦闘員だった。

ヤンキー戦闘員は、健と阿蘭に威圧感を与えるために、インパクトのある格好をしていた。髪の毛はアフロヘアーで、少し時代遅れの丸い黒のサングラスをかけて、黒のＴシャツに、上下の迷彩色の上着とパンツ、腰には、ジャラジャラと音のする太いキーチェーンを下げていた。以前、この格好をした時には、長居をした客のサラリーマン風の男性は怖がって、ヤンキー戦闘員を避けて、コインランドリーの店内をすぐに去った。また、ある時は、子供たちが入り込んで遊んでいたが、ヤンキー戦闘員が怖くて、走って逃げた。それで、頭領は、ヤンキー戦闘員の姿は健と阿蘭を怖がらせられると十分な確信があった。

ヤンキー戦闘員は、当然、健と阿蘭を敵視していた。ヤンキー戦闘員は２人と目が合うと「チェッ！」と、あいさつ代わりに言って、サングラス越しに、にらみつけた。

これだけの格好をしていたら、健と阿蘭は、嫌がるだろうと計画した割には、全然、ビビらなかった。２人は何事もなかったようにスマホを見ていた。

ヤンキー戦闘員は２人が自分の怖そうな姿を見たくないので、目を合わさないようにしているのだと思い込んでいた。

ヤンキー戦闘員は２人の近くを歩いたり、ウロウロした。怪しまれるので、空いている洗濯機の中を見たり、ゴミ箱を何気なく覗のぞいて、自分の存在をアピールした。空咳からせきをしたり、わざと腰のキーチェーンをジャラジャラと揺らして音を立てて、ズボンのポケットからティッシュペーパーを取り出し、大きな音で鼻をかんだりして、２人が自分のことを注目するように、いろいろと試みた。しかし、２人は動じるどころか、スマホに夢中だった。

“これしかない！”と、とっさに思いついたヤンキー戦闘員は、イスにつまずいて転倒することにチャレンジした。

“ガターーーン！”とイスが倒れて、ヤンキー戦闘員も一緒に倒れた。

２人は、チラッと見ただけで、無言だった。続けて２人はスマホを見続けていた。ヤンキー戦闘員の必死の芝居も通用しなかった。

“チェッ！薄情なやつらめ！”と腹が立った。“大丈夫ですか？”とか“怪我はないですか？”という心遣いもなく、諦めて、ヤンキー戦闘員は仕方なく立ち上がった。

“なにが正義のヒーローだ！”とヤンキー戦闘員は心の中で思った。