巫女と龍神と鬼と百年の恋

真綾

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 用意された着物に袖を通し、念入りに髪に櫛を通す。手足には用意してもらった鈴をつける。一歩歩くたびにしゃらんしゃらんと、鈴が鳴る。

 白巳は樰翡と共に、社の建物の前で座っていた。風呂敷の中に入っていた紅を塗り私は守り神である樰翡に跪いて、心の中で祈りを捧げる。

 どうかかの神が村をお救いくださいますように・・・。

 私は記憶に残っている流々の舞を披露する。龍神が流れるように動くさまをイメージしたその舞には鈴と、長い布が必要だった。真っ白い布を両手でもち龍が流れるように移動しているのを連想させるように、右に左に動かす。

 しゃんしゃんしゃん。

 手足に着けた鈴が動きに合わせて鳴り響く。神様に捧げるもののため、練習も独りで行っていた。妖達は神に比べたら悪しきモノになってしまうため、私の舞を見てもらうことは無かった。

「雨を」

 樰翡の声が聞こえ人影が龍に変わると同時に、天に向かって昇り始める。

「細波様、舞を途中でやめないでください」

 白巳の声で私は止めようとした足を一歩横にずらす。人型の時とサイズが全く違う樰翡が空間から全ての姿を消し、舞はその後少ししてから終了した。

「白巳様、一体」

 白巳は天を仰いだままだった。

「樰翡様、貴女はやっぱりかの巫女を待ち続けていたんですね」
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