4 / 51
第1章 First contact
第3話 謎の集団
しおりを挟む「お・・・抜けたか」
俺はやっとこの森を抜けた。
だいたい30分ぐらい掛かったか?
この森は思ったより広く、とても素晴らしい森だった。
大自然に触れた感動の余韻に浸りつつ、周りに何かないかと辺りを見渡してみる。
「・・・何もない、か」
入ってきた所からそのまま直線に歩いて来て反対側に出た。だが、見渡しても特に何か有るわけでもなく、最初に居た所と同じ草原が広がっているだけだった。
どうするか、この草原をこのまま直線に歩いて行けば何か見えてくるだろうか?いや、何も無かった時のリスクが高いか。
「どうしますか、"スライムさん"」
この森を歩いている最中に運命の出会いをした謎の生物をに撫でまくりながら考えた。
いつまでもゼリー体や謎の生物と呼ぶのは変だし何か名称を付けたいと思い、自分が持ってる知識の範囲で考えた結果。とりあえずこのゼリー体の事はスライムと呼ぶことになった。実際は違う名前があるかも知れないが、それがわかるまでスライムと呼ぶことにする。
実はこのスライムという単語は知っている。おもちゃとしてもあった気がするが、創作物の物語なんかにスライムやゴブリンなどのキャラクターがいる世界、いわゆるファンタジーな世界の定番としてスライムという架空の存在が出てくる事が多い。
流石の俺でもスライムとかゴブリンとかのファンタジーに良く出てくる定番なものなら知っている。マイナーな奴は流石に解らないが。スライムはそういう知識から名付けてみた。
そして[さん]という敬称を付けてる理由は、単に素晴らしいボディを堪能させてもらったので敬意が表れてしまっただけだ。
このスライムという名前を付けてからスライムさんに話しかけているが、別に俺が寂しくて話しかけているのではない。
実は俺の呼び掛けに対し、返事が無いように見えるが実はきちんと反応があるのだ。
―――プルップルプル
―――プルプルプルリン
このようにプルプルのボディをプルプル振るえさせて反応してくれる。
反応してくれると言うことは俺の声は聞こえてはいるのだと思うが。ただ、プルプルしてるだけの反応にどんな意味が込められてるいるのかはまだ分からない。いずれ分かるようになりたいとは思っている。
動物を飼っている人の中には動物が何を言っているか分かる人がいるという。それにはまだ時間が掛かりそうだが、いつか絶対にスライムさんの気持ちを分かるようになりたいものだ。
とりあえず、今は無理なので―――
「なるほどな、確かに木に登って高い所から見渡せば何か見えるかもしれないな」
と、このように自分で言って自分で答えるという一人芝居を行っている。
一人芝居を終えたあと、本当に何か見えるかも知れないので、試しに木に登ってみる。
片手でスライムさんを抱え、でかい木をジャンプで登っていく。師匠せいでいつの間にかこんな人間離れしていることもできるようになった。枝を足場にして登っていきまずは天辺を目指す。登っている間、抱えてるスライムさんがいつもより少し多めにプルプルしてるが気のせいだろう。
「よっと」
俺は数秒で木を登り終えた。そこから辺りを見渡してみる。
周りには大自然といしか言いようのない景色が広がっている。しかし、特にこれといった建造物や人は見当たらなかった。
(やっぱり何もないのか・・・)
そう思った矢先、遠くの方で動くものを見つけた。
「なんだ?」と思い、目を凝らして見てそれを確認してみる。
「人・・・か?」
距離があるためハッキリとは解らないが、人の様な二足歩行をしてる生物の"集団"のようだ。
「これは行ってみるしかないな」
集団行動をしている二足歩行の生物は人間ぐらいだろう。と、その集団の正体を完全に人だと思い込んでいた俺は色々と情報を得るためにスライムさんを抱えたまま、木から飛び降りてその集団に向かって走り出した。
悟が木をジャンプで登るという人外じみた事ができるのは、それは彼が10年間並々ならぬ努力を強いられた結果によるもの。
彼が今とても人間とは思えない速度で草原を一直線に駆ける事が出来てるいる理由、それは彼はより効率よく、より素早く走るテクニックを彼は強制的に教わり、それを可能なだけの技術と力があるからだ。
彼の師匠、坂下は彼に己の人生で培ったもの全てを叩き込んだ。本来達人を目指すなら回り道や間違った道を進み色々と紆余曲折した結果の果てにようやくたどり着くものだ。だが、悟は既にたどり着いた者から無駄を一切省いた努力を教わり、達人道のゴールを最短ルートで駆け抜けた。それにより10年という短い時間で彼は達人級の力を手に入れたのだ。
悟と謎の集団の距離がドンドン近づいて行く。まだハッキリとは確認できないが謎の集団の方は、高速で近づいてくる存在に気が付いたようだ。高速で近づいてくる物体を発見した集団は驚き、混乱してる者もいれば、警戒して武器を構える者もいる。
謎の集団全体がザワつく。その最中も悟との距離は縮まっていき、悟から集団の正体がだんだん見えてきた。
そしてお互いがハッキリと見える距離で、悟が急停止した。
「・・・あれ?人間じゃ・・・なくね?」
悟が急停止した理由は簡単だ。
人間だと思い込んで張り切って走っていたが実際に近づいて見てみるとはホラー映画にいてもおかしくはない、人間とはかけ離れた"化物の集団"だったのだ。
「「・・・・・・・・・・・」」
急な出来事にお互いが沈黙し、微妙な空気が流れる。
しばらくして、耐えかねた悟が沈黙を破るように歩きだした。
走っていた時より格段にゆっくりとではあるが、距離を縮めていく。
そして距離がある程度近づいた所で―――
「こんにちは」
悟は挨拶をした。元々ダメ元だったが案の定、言葉は通じていないようで特に返事は返って来ることはなく集団がまたザワつきだした。しかし聞こえてはいるようなので、諦めずに何とか意思疎通を図ってみる。
「えー、べつに俺はあなた達に危害を加える気はありません。安心してください」
スライムを抱えていない方の腕を上げて、少しでも敵意が無いことをアピールしながら念のために言葉でも敵意が無いことをアピールした。だがやはり悟が伝えたい事は伝わらなかったのか特に変わった反応は見られなかった。
化け物集団は今のところ混乱している様だが、いつ襲って来てもおかしくはない。何も分からないこの状況で何者かわからない者と敵対するのは是非とも避けたい。
(どうするかな・・・)
こちらの意思が伝わらない。だが、集団で行動しているところを見ると知性は十分にあると思われる。
できれば何とかこちらに害が無いことを伝えたい。
悟は何とか方法が無いかと考えだし、またもやお互いに黙り込んでしまい変な空気になる。
―――プルプルプルルプルンプルプル
考えている最中に先ほどからスライムがいつも以上にプルプルと震えていることに気が付いた。悟はそれを怯えていると判断し、いざというときに何時でも逃げられる用に抱え直した。
(安心してくれ。何があってもスライムさんだけは命に変えても守りぬくからな)
そんな決意をして、この化け物集団に万が一襲われたとしても何時でも逃げられるように"準備"をする。すると―――
―――ゴトン
突然、集団の方から硬く重い物が落ちたような音が発せられた。見ると化け物集団が持っているこん棒のような物が落ちた音だ。恐らくその者達の武器であるそれを次々と手放していく。
訳の分からないまま悟が見ていると次の場面では―――
―――化物の集団が全員、跪づいていた。
何がどうなっているんだ。
なんでこいつらは跪づいているんだ?意味がわからん。
「ヴォオォオ!ヴォヴォッヴォオオォ!!」
本当に意味が分からねぇな・・・
何て言っているんだ?こいつら。
何が何だかわからなすぎて普通に怖いんだが。
「あー、とりあえず皆さん落ち着いてください。とりあえず、立ち上がって貰えますか?」
「ヴォオ!!」
―――バッ!
何でそんなに張り切っているんだよ、立つだけなのに勢いつけすぎだろ。
俺、何かしたか?挨拶と害がないアピールしただけなんだが・・・
というか俺の言葉が通じてる・・・のか?一応、立ってくれという要望には答えてくれたが、向こうが何を言っているか解らないからどうも判断がつかんな。
「え、えーっと・・・ここら辺に俺みたいな人間が居るところを知っていますか?」
とりあえず、気になることを質問してみた。
向こうに俺の言葉が通じてるのかの確認と、人間について聞いてみる。俺は未だに現実には存在しないと思われるびっくり生物しか会っていない。
もう外国とかというより世界そのものが違う所に来てしまった、と思い始めてる。バカげた話だが目の前の生物やスライムさんの事を考えるとその方が高い。そのため是非、人間の有無は確認しておきたい。
そして出来ればこの異世界?に人間は存在していてほしい・・・
「ヴォオヴォ!?ヴォヴォヴォオオオヴォヴォォ!」
集団の内の1体が草原の何も無い方向に指を指して何か言っている。これは、向こうに人間が居るって事を教えてくれてるという解釈で良いんだろうか?
まぁ、次はどこに向かえば良いか分からなかった所だ。次の目的になる情報を貰えたのはとてもありがたい。
たとえ、仮に人間がいなくても何かしらはあるだろう。考えなしに指を指した訳ではなさそうだったからな。
「そうですか、貴重な情報をありがとうございました。では、俺はこれで」
お礼を言い、軽く手を上げてそそくさとその場を立ち去る。これ以上関わるとややこしい事になりそう、とか思っているのでやや早足でその場から離れる。教えてくれた事に対し、お礼をきちんと言ったから俺がこれ以上関わる必要もないだろう。
一時はどうなることかと思ったが特に襲われることもないし、情報も貰えたし普通に良い奴らだった。少し不気味ではあったが。
ん?何だ後ろから足音が聞こえる。まさか・・・いや、でも何故だ?
疑惑を明確にするために、真実を確認するために振り返る。
するとそこにはさっきの集団がついて来ていた。
「ヴォ!」
いや、何でだよ。何で、付いていてくるんだよ。俺は何かしました?
そして何だ、その謎の眼差しは!?
なんかこう、「一生ついていきます!」みたいなキラキラとした目で見てくるのだが・・・
「・・・何でついてきているんだ?」
「ヴォ!ヴォオヴォヴォオォオ!」
「・・・・・」
全然意味が分からん。
う~ん。見た感じとても友好的?で、別についてくるのは嫌ではない、道案内をしてくれるというのは大変有難い。だから嫌ではないのだが、これは面倒くさそうだ。
「はぁ・・・まぁいいか」
諦めたように化物の集団を受け入れる。
付いてくるなら道中に少しでもこいつらの事を知る事ができれば、色々と新たな情報がえられるかも知れない。一応、メリットはある。
そして俺は溜め息を吐きながら人間がいるであろう場所を目指し歩いて、行った。
後ろに化物の集団を引き連れて。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる