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第一章
気づきました
しおりを挟む 私の名前は、三津谷かなめ。高校1年生の夏休みに、自転車で転倒、そのまま坂道を転げ落ち、塀に激突。丸一日、目を覚まさなかったそうだ。
あのあと父と母が病室に飛び込んできて、2人とも涙を流していたから、余程心配をかけてしまっていたのだろう。申し訳ない。
兄の名は、三津谷かたる…だ。高校3年生で、間もなくサッカー部を引退。ポジションはMFで攻守の要を担っていた。生徒会書記も務める秀才で、なんでも卒なくこなしてしまう、優しく爽やかなイケメンだ。…でも好きになった女の子の前では、エロス全開の策士と化す。外堀から攻めていって、蜘蛛の糸にかけるように、身も心も掴んで離さない。
と、なぜ私が兄のことをこんなにも語れるかというと、そこには筆舌し難い理由がある。
「はあ?!転生?!」
そう、私は気づいてしまったのだ。ここは転生後の世界だ。
「あんた、ニ学期初日から何言ってんの?頭打って、おかしくなったんじゃない?」
夏休み明けの朝、ケガの具合を心配をして家まで迎えにきてくれた友人に事の次第を打ち明ければ、あっという間に否定される。私たちは自転車を押しながら話を続ける。
「傷はすっかり良くなったと思ったのに、頭のネジがさらに緩んだか…。」
チラッと私の方を見て、友人が呟く。
何気にひどい。
桜井なみ。中学からの同級生で、駅前のコンビニでバイトをしている少々言葉のきつい友人だ。彼女にも兄が一人いる。
「だってね、うちの兄ちゃんは、私が転生前にしてた18禁乙女ゲームの『黄昏のロマンス』に出てくる『かたる先輩』なんだよ!」
残念そうな目で私を見て、なみがため息を吐いた。
「なに、そのタイトル…だっさ。」
「うるさい、うるさい!」
なみに憐れみの目を向けられ、私は新品の自転車を押す手に力を込め、歩みを早めた。
あのあと父と母が病室に飛び込んできて、2人とも涙を流していたから、余程心配をかけてしまっていたのだろう。申し訳ない。
兄の名は、三津谷かたる…だ。高校3年生で、間もなくサッカー部を引退。ポジションはMFで攻守の要を担っていた。生徒会書記も務める秀才で、なんでも卒なくこなしてしまう、優しく爽やかなイケメンだ。…でも好きになった女の子の前では、エロス全開の策士と化す。外堀から攻めていって、蜘蛛の糸にかけるように、身も心も掴んで離さない。
と、なぜ私が兄のことをこんなにも語れるかというと、そこには筆舌し難い理由がある。
「はあ?!転生?!」
そう、私は気づいてしまったのだ。ここは転生後の世界だ。
「あんた、ニ学期初日から何言ってんの?頭打って、おかしくなったんじゃない?」
夏休み明けの朝、ケガの具合を心配をして家まで迎えにきてくれた友人に事の次第を打ち明ければ、あっという間に否定される。私たちは自転車を押しながら話を続ける。
「傷はすっかり良くなったと思ったのに、頭のネジがさらに緩んだか…。」
チラッと私の方を見て、友人が呟く。
何気にひどい。
桜井なみ。中学からの同級生で、駅前のコンビニでバイトをしている少々言葉のきつい友人だ。彼女にも兄が一人いる。
「だってね、うちの兄ちゃんは、私が転生前にしてた18禁乙女ゲームの『黄昏のロマンス』に出てくる『かたる先輩』なんだよ!」
残念そうな目で私を見て、なみがため息を吐いた。
「なに、そのタイトル…だっさ。」
「うるさい、うるさい!」
なみに憐れみの目を向けられ、私は新品の自転車を押す手に力を込め、歩みを早めた。
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