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第二章
俺様 ③
しおりを挟む兄ちゃんが蓮見くんから私の自転車を受け取る。
「母さんが心配だから見てこいって。何度も電話したんだよ、かなめ。」
鞄の中を確認。本当だ。着信がたくさん入っている。
「ごめん、英語の補習で残ってて。」
必死だったとは言え、メールくらい送れば良かったと反省する。
「君がかなめを送ってくれたの?…えっと、ごめん。」
「蓮見です。」
朗らかに微笑む兄ちゃんと、不敵な笑みを向ける蓮見くん。
いや、不敵な笑みではないんだろうけど、そう見えてしまうのだ、彼が笑うと。さすが俺様キャラ。
「ありがとう。かなめを送ってくれて。」
兄ちゃんが、兄ちゃんらしいことを言う。兄ちゃんにはいつも心配をかけてばかりだ。
「いや、大丈夫です。じゃあな、かなめ。」
「あ、うん。」
私に目配せをすると、蓮見くんは大通りの方に去って行った。スマホを耳に当てていたから、本当にタクシーを呼んでいるのかもしれない。
お金、勿体無いな…悪いことしたな。
離れていく蓮見くんの背中を見て、庶民のモブはどうしてもそんなことばかり考えてしまうのだった。
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