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乗合馬車
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周囲には、未だ少しの野次馬がいる。
僕一人なら風景に溶け込んで簡単に抜け出せるが、メディが一緒なので、その手は使えない。
こういうときはむしろ堂々と行動したほうがいいだろう。
とは言え、旅芸人の一座が場所を借りていた一画からはこっそりと抜け出す。
まぁ敷地から抜け出すまでは、こっそりとやらないとね。
馬小屋のテントは、敷地の端に作られていたので、目立たず抜け出すには丁度よかった。
野次馬も、芝居の舞台が設置されていた大テントを見ているようだ。
マントを羽織ったメディと僕は、広場から抜けると、今度は堂々と街の中心へと向かった。
「街の外に出ないの?」
「んー、あっちの方角から歩いていくと、絶対に怪しまれると思うんで、もっと人が多い場所に紛れようと思って。それと、あまり荷物のない二人連れが街の外に徒歩で出て行くとか、あからさまに怪しいし」
「そっか、そうだよね」
僕の考えに、メディも納得したようだ。
僕は、勇者達と一緒にしばらく旅をしていたので、ある程度世慣れている。
こういう大きめの街には、他の街へと客を運ぶ、乗合馬車があるはずだ。
周囲を見回して、雑貨屋を見つけると、買い物がてら道を尋ねる。
「旅に必要なものを揃えたいんだけど、どの程度揃う?」
「ああ、それなら、冒険者パックはどうだ? 街の外で必要な基礎的な品物がまとめて入っているバッグだ」
商売上手なオヤジだ。
「それを二人分いただこうかな? あと、乗合馬車の乗り場ってどこかわかる? なんせ旅するのは初めてなんで」
「まいど。おやおや、なら下調べは入念に行っておいたほうがいいぞ? 乗合馬車だって、毎日出てる訳じゃないからな」
「本当? うわー、困ったな」
「まぁともかく行ってみ。道順をメモっておくから」
そう言って、雑貨屋のオヤジは親切にも、雑多に積んである紙切れを一枚取って、さらさらとペンで道順を書いて渡してくれた。
二人分の旅の道具セットの料金以上のサービスだ。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
僕が礼を言うと、メディもぺこりと頭を下げる。
ふと、雑貨屋のオヤジがメディを見て僕に忠告した。
「おいおいお連れさん、少し顔色が悪いぞ。大丈夫か?」
「ああ。初めてのお使いの旅なんだ。緊張して眠れなかったらしい」
自分でもよく言うよと思いながら、口からでまかせを言う。
メディの顔色が悪いのは、まだ昨日のケガが癒えてないからだ。
もっと休ませてあげたいが、なんとしても今日の昼頃までにはこの街を出たい。
「お、お恥ずかしながら……」
メディも乗ってくれて、もじもじしながらオヤジにそう告げる。
オヤジはなるほどなぁと言いつつ、旅の無事を祈ってくれた。
「あそこだな」
教わった乗合馬車の乗り場に到着した。
大きめの看板に幌馬車の絵が描かれているので、とてもわかりやすい。
さっそく近づくと、受付に尋ねる。
「あの、今日、乗合馬車は出ますか?」
「あら。運がいいわね。今から出立の馬車があるわよ。ちょっと待っていて。……バジラさん! お客さん!」
受付の女性が呼ぶと、のっそりと熊のような男が現れた。
「おー客か。客は多いほうが俺も儲けがあるから大歓迎だぞ。席はまだ空いているし」
「よろしくお願いします」
「お、お願いします」
どうやら、メディは乗合馬車自体が初めてのようで、物珍しげにキョロキョロと見ている。
事前に打ち合わせた二人旅の設定は、この街から初めてのお使いでほかの街へ行く、ということした。
なので、その様子は、役柄に相応しいとは言えるだろう。
まぁもちろん、メディは演技でやっている訳ではなく、素のままの行動なのだが。
「辺境のバグルスまで行く。それでいいか?」
「ああ、大丈夫だ」
バグルスというのは、国境にある街だろう。
辺境と呼ばれる場所はだいたい国境である。
早くこの国を出たい僕達には丁度いい。
代金を支払い、大きな幌付きの馬車に乗る。
幌付き馬車と言っても、開放型の簡単なやつだ。
乗客はほかに五人。
ぎりぎり座って乗れる人数で助かった。
メディにこれ以上無理はさせられない。
ほかの乗客に頭を下げつつ端に設置されているベンチに腰を下ろす。
「大丈夫か?」
「うん」
少し強がりか、雑貨屋のオヤジに指摘された通り、メディの顔色はよくない。
いざとなったら体を動かず分には僕が補助をすることが出来るが、体そのものを癒やす力はないので、心配だ。
とは言え、背中の状態から考えて、動けるだけ凄い。
やはりそこは、半魔の強さかもしれない。
僕一人なら風景に溶け込んで簡単に抜け出せるが、メディが一緒なので、その手は使えない。
こういうときはむしろ堂々と行動したほうがいいだろう。
とは言え、旅芸人の一座が場所を借りていた一画からはこっそりと抜け出す。
まぁ敷地から抜け出すまでは、こっそりとやらないとね。
馬小屋のテントは、敷地の端に作られていたので、目立たず抜け出すには丁度よかった。
野次馬も、芝居の舞台が設置されていた大テントを見ているようだ。
マントを羽織ったメディと僕は、広場から抜けると、今度は堂々と街の中心へと向かった。
「街の外に出ないの?」
「んー、あっちの方角から歩いていくと、絶対に怪しまれると思うんで、もっと人が多い場所に紛れようと思って。それと、あまり荷物のない二人連れが街の外に徒歩で出て行くとか、あからさまに怪しいし」
「そっか、そうだよね」
僕の考えに、メディも納得したようだ。
僕は、勇者達と一緒にしばらく旅をしていたので、ある程度世慣れている。
こういう大きめの街には、他の街へと客を運ぶ、乗合馬車があるはずだ。
周囲を見回して、雑貨屋を見つけると、買い物がてら道を尋ねる。
「旅に必要なものを揃えたいんだけど、どの程度揃う?」
「ああ、それなら、冒険者パックはどうだ? 街の外で必要な基礎的な品物がまとめて入っているバッグだ」
商売上手なオヤジだ。
「それを二人分いただこうかな? あと、乗合馬車の乗り場ってどこかわかる? なんせ旅するのは初めてなんで」
「まいど。おやおや、なら下調べは入念に行っておいたほうがいいぞ? 乗合馬車だって、毎日出てる訳じゃないからな」
「本当? うわー、困ったな」
「まぁともかく行ってみ。道順をメモっておくから」
そう言って、雑貨屋のオヤジは親切にも、雑多に積んである紙切れを一枚取って、さらさらとペンで道順を書いて渡してくれた。
二人分の旅の道具セットの料金以上のサービスだ。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
僕が礼を言うと、メディもぺこりと頭を下げる。
ふと、雑貨屋のオヤジがメディを見て僕に忠告した。
「おいおいお連れさん、少し顔色が悪いぞ。大丈夫か?」
「ああ。初めてのお使いの旅なんだ。緊張して眠れなかったらしい」
自分でもよく言うよと思いながら、口からでまかせを言う。
メディの顔色が悪いのは、まだ昨日のケガが癒えてないからだ。
もっと休ませてあげたいが、なんとしても今日の昼頃までにはこの街を出たい。
「お、お恥ずかしながら……」
メディも乗ってくれて、もじもじしながらオヤジにそう告げる。
オヤジはなるほどなぁと言いつつ、旅の無事を祈ってくれた。
「あそこだな」
教わった乗合馬車の乗り場に到着した。
大きめの看板に幌馬車の絵が描かれているので、とてもわかりやすい。
さっそく近づくと、受付に尋ねる。
「あの、今日、乗合馬車は出ますか?」
「あら。運がいいわね。今から出立の馬車があるわよ。ちょっと待っていて。……バジラさん! お客さん!」
受付の女性が呼ぶと、のっそりと熊のような男が現れた。
「おー客か。客は多いほうが俺も儲けがあるから大歓迎だぞ。席はまだ空いているし」
「よろしくお願いします」
「お、お願いします」
どうやら、メディは乗合馬車自体が初めてのようで、物珍しげにキョロキョロと見ている。
事前に打ち合わせた二人旅の設定は、この街から初めてのお使いでほかの街へ行く、ということした。
なので、その様子は、役柄に相応しいとは言えるだろう。
まぁもちろん、メディは演技でやっている訳ではなく、素のままの行動なのだが。
「辺境のバグルスまで行く。それでいいか?」
「ああ、大丈夫だ」
バグルスというのは、国境にある街だろう。
辺境と呼ばれる場所はだいたい国境である。
早くこの国を出たい僕達には丁度いい。
代金を支払い、大きな幌付きの馬車に乗る。
幌付き馬車と言っても、開放型の簡単なやつだ。
乗客はほかに五人。
ぎりぎり座って乗れる人数で助かった。
メディにこれ以上無理はさせられない。
ほかの乗客に頭を下げつつ端に設置されているベンチに腰を下ろす。
「大丈夫か?」
「うん」
少し強がりか、雑貨屋のオヤジに指摘された通り、メディの顔色はよくない。
いざとなったら体を動かず分には僕が補助をすることが出来るが、体そのものを癒やす力はないので、心配だ。
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