ゲームが現実と融合した!――そんなことより明日のご飯どうしよう?

蒼衣翼

文字の大きさ
15 / 35

現実と非現実

しおりを挟む
「えっ、それって……」
「クローゼットに入ってた」

 なぜすり鉢を探してクローゼットを開けたのかはともかく、副部長が手にしていたのは凶悪な外観を持つ大鎌だった。コレ持って外歩いたら一発で逮捕だろう。

「それおそらくスラッシュスパイダーのレアドロップだ」
「ということは、リュックに入らなかったからうちのクローゼットに出現したということか」

 副部長はため息をつく。
 いきなり自宅でそんな凶器を発見したらびっくりするのは当然だ。
 アキラはしげしげとその武器を見た。

「確か、それデフォで風属性付いてたはず」
「マジで? ……鑑定。あ、ほんとだ。村上さん使う?」

 副部長は天然を発揮して村上幸子に確認した。
 女子に大鎌。副部長もわかっているなとアキラは思った。
 しかし、残念ながら。

「私格闘家ですよ?」
「だよね」

 幸子に使えるはずがないのだ。
 
「それ特殊武器だけど、カテゴリー的には両手武器扱いだから」

 アキラが無駄知識を披露する。

「両手武器となると、俺、かな?」

 部長がしみじみと大鎌を見た。
 黒騎士に大鎌。サマになりすぎる。

「凶悪な取り合わせだ」
「ロマンを感じます」

 アキラとゆえりの評価である。
 二人共ファンタジーにロマンを感じるタイプだ。

「ふむ、俺としては使うのはやぶさかではないが、それを持って歩くとたちまち職質を受ける可能性が高いな」
「警察機能してるかな?」

 部長の言に幸子がツッコミを入れる。

「政府自体は動いているし、警察にも魔法使える人がいたらそのうち動き出すんじゃないかな?」

 と、アキラ。
 そのアキラの発言に、部長がなんとも言えない顔をした。

「警察と消防は昨夜かなり動いていたんだが、今朝は全く見なかったな。犠牲者が出たから出動が一時見合わせになったのかもしれん」
「犠牲って?」

 部長の言葉にアキラは不安そうに聞いた。

「ほとんどはモンスターに車両を潰されたんだが、なかには頭の茹で上がった魔法使いの攻撃を受けた事件もあったらしい。火事場泥棒というか、人がいなくなったコンビニとかに押し入って食料などを盗んでいた奴がいたらしくてな」
「うわっ、そんなことしている場合じゃないのに」
「いや、逆だよ。そいつおそらく今後のためにやったんだろう」

 部長の話にアキラがドン引きしていると、副部長が淡々と言った。
 全員の視線が副部長に集まる。
 未だ大鎌を持っている副部長は、本来の穏やかな雰囲気が逆に威圧感を与える存在となっていた。

「さっきアキラも言っただろう。今後の流通が不安だと。食料や水が災害時どころじゃなく滞る可能性が高い。その犯人はそう踏んだんだ」

 全員がゴクリと生唾を飲み込んだ。
 まさかモンスターだけでなく、人間も敵になるというのか、無政府状態の世紀末な世界に……みんなの顔がそう言っていた。

「そうだ! もうお昼のニュースの時間じゃない? テレビ、観よ?」

 ゆえりが提案する。

「そうだね」

 副部長も時計を見てうなずいた。
 スコープグラスのなかで副部長が瞬きをすると、広々とした壁の一部が映像を浮かび上がらせる。

「デカ!」
「映画館かよ」

 幸子とアキラが驚きの声を上げた。
 実際、壁にしか見えなかった場所がテレビ画面を映すと、窓のカーテンが自動で引かれ、さながら映画館の様相を呈している。

「別に俺が買った訳じゃないから」

 そっけない副部長の声に、その辺の話題はデリケートらしいとアキラは思った。

『それでは、今回の非常事態に対する政府からの発表を繰り返します』

 どうやら既に政府発表はあったらしい。
 今はその発表を周知するためのリピート放送のようだ。

『自宅にいる方は、お手持ちの情報登録機器の設定画面からプロフィールを選び、ホーム設定をONにしてください。現在避難中で自宅に帰宅出来ていない方は、外に通じる空間のない場所に身を置くようにしましょう。駅や空港は危険です。既にほとんどの場所では退避が完了していますが、これから避難をするという方はお気をつけください。情報端末にアクセスをして、緊急避難場所を確認し、そこに避難するようにしましょう』
「どうやら緊急避難場所がセーフティゾーンという考えはあたっているようだな」

 部長がニュースを聞いて確認するように言う。

「そう言えば駅に避難している人いなかったけど、危険だから退避させたのか」

 アキラがいまさらのように発言した。

「いまさらそれを言うのか」
「駅構内に入ったときにおかしいとか思わなかったの?」

 部長とゆえりのダブルパンチでアキラは「うぐぅ」と、ノックアウトする。
 そんなアキラのスコープグラスから電子音が響く。

「お?」
「ご家族じゃないか?」

 副部長に言われてアキラが発信相手を見ると、確かに父からだった。

「ったく」

 アキラはボヤきながら全員に背を向けて窓のほうを向き、電話をONにしてスコープグラスからインカムを引っ張る。
 電話している様子を見られるのが恥ずかしかったのでみんなから離れたのだ。
 親と距離を置きたいお年頃であった。

「なに?」
『今大丈夫か? 帰るときには父さん迎えに行くから連絡してくれよ』
「いいよ、武器を試したいし」
『お、属性武器出たのか?』

 父の声が弾む。
 ゲーム脳なので、息子がゲットした武器が気になるのだ。

「……うん」

 アキラのテンションが下がる。

『でも、ほら、試し撃ちはうちの近くでもいいだろ? そっちにほかのお家の子もいるんだろうし、一緒に家に送ってあげるから』
「あー」

 そう言われてみると、さすがに女子メンバーを単独で家に返すのはマズイ気がして来たアキラだった。
 いくらゆえりの魔法が強いとは言え、数の多い敵に囲まれたらヤバいし、幸子に至っては攻撃手段がまだない。
 二人共家はこの近くのはずだが、距離が短いから安全ということはないのだ。

「んー、まぁ」
『じゃ、待ってるからな。無茶するなよ』

 そう言って父からの電話は切れた。
 ふうとため息をついて振り向くと、みんながアキラのほうを見ている。

「あー、うちの親父が連絡したら迎えに来るって」
「え? お父さん大丈夫なの?」
「親父聖騎士だから」

 ゆえりの心配にアキラは答える。
 すごいな、親が聖騎士とか無茶苦茶現実味がない言葉だ。そうアキラは思ったのであった。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...