チート願望者は異世界召還の夢を見るか?

扶桑かつみ

文字の大きさ
42 / 528
第一部

042「アンデッド退治(2)」

しおりを挟む
「で、そろそろ真面目な話をしてもらえる?」

「そうだね。でも真面目な話、本当に来てくれて助かった」

 それまでの笑顔は消えるが、真面目顔もイケメンすぎる。良く似た姉妹がいないか聞きたくなるレベルだ。

「この辺りうろついてたから、遣いをくれれば良かったのに」

「緊急で遣いを出す時間すらなくてね」

「そんなに急だったの? で、助かるって事は戦力足りて無い?」

「ああ、足りて無いね。本土から増援を呼んでいるが、間に合いそうにない。神殿自体も、使いが都に向かっている段階だ。それに詳細は我々も情報収集中で、今は最終報告待ちだ」

「私たち、ついさっき道中で死骨に遭遇したわよ」

「森から出ていたかい?」

 そこはオレが首を横に振る。森から出てきてたらヤバいみたいだ。

「そうか、じゃあまだこの辺りは大丈夫だな。
 どうにも、ノール王国戦争後の鎮定と鎮魂が甘かったらしい。あの国の墓や遺棄死体から、かなりの数の亡者が溢れ出したみたいだ。この近在の村もその一派に喰われたんだけど、ここの隣村は森の中の閉じた村なので、一ヶ月近く誰も気づかなかった。
 今その村にも、亡者がかなり集結している。他にも、森など暗い場所にはかなりの数が彷徨って犠牲者を増やしつつあって、あわせて3つの村が亡者に喰われた」

 アンデッドがまるで災害状態だ。
 いや、この場合は本当にアンデッド・ハザードでいいのかな。

「なら、どこかに高位の亡者がいて先導しているのかしら?」

「恐らく、どこかに何かいるだろう。悪霊くらいならいいんだけどね」

「私たちはどうしたらいい?」

「とにかく急の事で人手が足りてない。道案内や見張りなどに、周辺の村人を使わないといけないくらいだ。
 しかも、南のランバルト王国が今度こそ旧ノール王国の南部を併合しようと動いているせいで、国の方は牽制のためそっちにも兵力を割かれている」

 アンデッドに加えて国同士の争いまであるとか、正直やってられない気がする。
 けど、アクセルさんの表情から察するに、それほど変な事でもないようだ。

「戦力を集中して、順番に喰われた村を鎮魂する時間はある?」

「時間的に無理だね。今日は満月だから亡者も活発だ。一箇所を鎮定している間に、他の場所の亡者が移動する可能性の方が高い。今晩中にできるだけ一度に鎮定する方が良いだろう。
 ただ、ボクの領地からも神官を呼んできているが、ルカのような高位の者がいない。出来ればルカに一ヶ所任せたい。溢れてくるヤツらを叩いてくれるだけでいい。……で、ショウは戦力と考えていいのかな?」

 アクセルさんが、オレに期待ありげな視線を向けてくる。
 それに彼女が、軽く眉を上げて面白がるように言う。

「この2週間ほど私が鍛えてあるから大丈夫よ。さっきも、死骨(スケルトン)の小さな群れを一人で蹴散らしてたから」

「ルカのお墨付きなら安心して任せられるよ。よろしくお願いする」

 ハルカさんの冗談まじりの言葉にも、アクセルさんはあくまで真摯に頭を下げる。ちょっと悪い気がするくらい真面目だ。それだけ事態が深刻なんだと感じる。
 彼女も同じように感じたらしく、少しバツの悪顔をすると話題を変える。

「それで、一ヶ所あたりの数は?」

「個体ごとの脅威度合いを考えなければ、溢れてくる数は100体程度。多いと150~200体くらいになるかもしれない。
 もとの村の規模で多少変化するが、連中が拠点にしているそれぞれの廃村からあふれた分はかなり叩いたので、極端に多くはない筈だ」

「150~200か……。分かったわ。私とショウ君で一ヶ所鎮魂しましょう」

「助かる。恩に着るよ」

「残りは?」

 いちおうオレも参加しているので、それっぽい事を聞いておく。
 というか、他に余裕があるなら、こっちにも少しは人を回してほしいという気持ちを込めた言葉だった。2人で150体の相手とか、あり得ない数にしか思えない。

「ボクと直属で一ヶ所を。別働隊でもう一ヶ所。別働隊の方は、少し離れているので既に行動を開始している。あと、二人に鎮定してもらう廃村を封鎖させる予定だった隊を予備隊に変更して、周囲の警戒とこぼれた分の鎮定を行うつもりだ。
 ただボクと一部の騎士と兵士以外は、あまり戦いには慣れていない。連れてきた神官も鎮魂と治癒のためで戦闘には巻き込めない。魔法が使える魔導騎士もボク一人だ。当然、魔法使いもいない。
 それでだけど、ボク達が二人を補助しやすいように、ルカ達はこの近くの村を頼む。予備隊も援護に入りやすい配置にするつもりだ」

「了解です。けど、ギリギリってことですね」

「申し訳ないがその通りだ。ルカとショウが来てくれて本当に良かった。神々へ感謝してもし足りないよ」

「あんまりアテにしないで下さいよ」

「大丈夫、ショウなら出来るさ。ボクが保証する」

 初対面のイケメンに、オレの強さを保証されてしまった。それほどハルカさんを信頼しているという事なのだろう。オレの面食らったような顔に、彼女も面白げな表情を浮かべている。

 けど、それで話は決まった。

 ちょうど偵察に出ていた兵士たちも戻ってきたので、その後主要な人を交えての詰めの作戦会議をすると、すぐに行動に移った。
 時間はもう夕闇が迫っていたが、アンデッドは昼間は廃屋や木々の影など日陰にばらけて隠れていて探すだけで一苦労なので、まとめて叩くのなら宵の口辺りが一番らしい。
 オレと彼女にとって急すぎる話だけど、今夜が勝負だ。

(今日は、寝る暇あるかな……)

 なかなか沈まない北極圏の大陽を見ながら思ったのはそんな事だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」 世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。 ”人類”と”魔族” 生存圏を争って日夜争いを続けている。 しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。 トレジャーハンターその名はラルフ。 夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。 そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く 欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、 世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...