チート願望者は異世界召還の夢を見るか?

扶桑かつみ

文字の大きさ
167 / 528
第二部

167「怪物飛行船との戦い(1)」

しおりを挟む
「これで背中に着地できたら格好良かったんだけどなあ」

 オレがそうぼやく場所は、ヴァイスの爪に包まれたわずかな隙間だ。
 高い運動能力にまかせてタイミング良く飛び上がり、ヴァイスに見事にキャッチしてもらった形だ。流石猛禽類。
 しかしキャッチというより、獲物として捕まった感じで、胴体をガッシリ掴まれている。

「だ、大丈夫? ご免ね、ヴァイスに任せたらそんな事になっちゃって」

 玲奈が首もとから申し訳なさそうな表情で覗き込んでくる。
 当のヴァイスは楽しげにひと鳴きしている。

「結果オーライだ。あの化け物から逃げられたからな。それよりヴァイス、オレも首もとに行けないか?」

「えっ? 分かった?」

 ヴァイスの言葉を言ったのであろう玲奈の声と同時に小さく一鳴きすると、オレはヴァイスの爪から解放される。
 それって空に放り出されたって事だろ、と思う間もなく、気がつくとヴァイスの背中にドサッと落ちていた。

 反対向きなので、ヴァイスが急降下一回転で拾い直してくれたみたいだ。どうにも空中での出来事はまだ把握し辛い。
 そして姿勢を戻して首もとの玲奈の後ろまでいくと、地上の騒ぎがさらに大きくなっている情景が飛び込んできた。

「し、ショウ君、あの、ば、化け物が石の飛行船を!」

「ゲッ、節操のないヤツだな!」

 オレたちの眼下で、化け物が近くに停泊していた浮遊石を使った小型の飛行船に襲いかかり、魔力の奔流で包み込んでしまっていた。
 そして少しすると、飛行船が勝手に動き始める。
 しかし今まで見た普通の飛行船の飛び方ではなかった。

 動きが急激だし変な動きをしている。
 だいたい、移動力となる飛行生物抜きで動いている時点で異常だけど、どうやら自らの魔力の奔流の一部を推進力にしているらしかった。

「クロ、何か分かるか?」

「ハッ。浮遊石に自らの魔力を注ぎ込み強引に操作しています」

 うん。クロはなかなかに便利だ。
 オレの足りないオツムを補ってくれるだけでも助かる。
 実体化して超強かったら、もうオレは不要じゃないだろうかと思うほどだ。

「船の中の人は?」

「確認できません。なお、あれだけの魔力に飲まれた者は、一般人であれば魔力酔いで意識を失います。しかも長時間だと体に変調をきたし、命に関わるでしょう。ですが、稀に魔力持ちに覚醒、変化する場合もございます」

「そこまで聞いてないけど、ありがとう。魔力を断つにはどうすればいい?」

「先ほどの体の本体が身につけていた、魔石を中心とした魔導器を破壊もしくは停止させる事が必要です」

「停止は可能か?」

「制御する本体を探して強制停止させるか、命令する必要があります」

「じゃあ、あれは破壊するしか手がないな」

「現状では、それが最良かと」

「えっ、逃げないの?」

 オレとクロのやり取りに玲奈が振り向く。目には驚きと恐れが見える。

「オレに用があったヤツの残留思念とかで動いている筈だから逃げられないだろうし、無関係じゃないから逃げる訳にもいかないだろうな」

「そ、そうだね。……私に何かできるかな?」

 玲奈が不安そうな表情ながらも、何かがしたいと言いたげに問いかけてくる。
 しかし、ボクっ娘のように激しい戦闘をさせるのは重荷過ぎるだろう。

「オレをあの船に落としてくれ。クロ、戦えるか?」

「我が主より日々魔力の供給を受けております。さらに先ほどの吸収もあり、魔力は相応に充填できました。十分にご助力できるかと」

「じゃ、サポートよろしく。オレが降り立ったら、命令で人の姿になって戦ってくれ」

「畏まりました」

 玲奈の方はオレの言葉を聞くと静かになっていたが、どうやらヴァイスと話し合っていたみたいだ。

「ヴァイスにお願いしたら大丈夫だって。それとヴァイスから伝言、ボクの違う力もみせてやるって」

「そりゃ楽しみだ。期待してるぞヴァイス!」

 オレに応えるようにヴァイスが一声鋭く鳴く。ご機嫌な雰囲気を感じるし、どこかボクっ娘ぽい気がする。
 それに気のせいか、玲奈もヴァイスに影響されてボクっ娘と少し重なってきているように見える。

 (実はボクっ娘の実態が、ヴァイスの人格って事ないよなー)などと埒も無い事を思っていると、ヴァイスの飛行が一気に速く鋭くなる。

 化け物となったもと因縁野郎その1に乗っ取られた船は、不安定な動きをしつつもこっちを目指している。
 化け物は船の前の辺りにいて、依然として魔力を吹き出している。
 そこから感じる視線ともいえる気配から、オレたちが目標なのは変わってないようだ。

 とはいえ、高速飛行時の巨鷲に追いつくのは、動きからしても無理だ。逃げるのは容易だけど、落とさないといけないだろう。
 取り付いたらどう対処しようかと考えを巡らせていると、レナの思いの外鋭い声が耳に響く。

「ショウ君、私とヴァイスにしっかりしがみついて。それと姿勢をできるだけ低くしてって、ヴァイスが」

「分かった」

 答えるとともにレナの腰にガッシリと腕を絡め、足に込める力を少し強くする。
 華奢なレナの体に腕を巻きつけた状態だけど、玲奈は恥ずかしがったりしていない以上、こっちが変な気持ちになるわけにもいかない。

 ボクっ娘なら茶化す言葉の一つもありそうだけど、こっちからはそれも止めた方が良いだろう。
 ボクっ娘の体の柔らかさや温かさを感じつつ暢気にそんな事を思っているが、周囲の情景はどんどん速くなっている。
 ヴァイスが凄い勢いで加速しているのだ。

 一旦かなりの高度を取った上で一気に急降下したヴァイスの速度は、以前の空中戦で見せた竜騎兵(ドラグーン)への攻撃に似ている。
 しかしヴァイスの周囲を覆う魔力の膜のようなもの、特に前面に覆う膜のようなものはかなりの輝きを持っている。

 レナの体からも大量の魔力が供給されているのも、魔力の放出と供給の光で分かる。
 チラリと後ろを見ると、魔力の航跡のようなものが長く伸びている。

 そしてヴァイスの速度はますます上昇し、交差する瞬間に「ドンっ!」という大きな音と共に強い衝撃波が発生した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」 世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。 ”人類”と”魔族” 生存圏を争って日夜争いを続けている。 しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。 トレジャーハンターその名はラルフ。 夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。 そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く 欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、 世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...